【インタビュー】ミュージカル「PARTY」 “未来に向けた新たな挑戦”で鈴木瑛美子&加藤和樹&伊礼彼方の歌声が響く

2021年5月11日 / 08:00

 ホリプロが日本から世界に向けたオリジナルミュージカルの創作を目指して始動した「ミュージカル・クリエイター・プロジェクト」。数多くの応募の中から、脚本部門の作品が選出され、その脚本を使って新作ミュージカルのパイロット版「PARTY」が制作された。通常は公開されることのないリーディング・ワークショップを配信するという形で発表された本作は、ブロードウェーの作曲家、ジェイソン・ハラウンドの楽曲とともに、あるパーティーでのひとときが描かれる。ユリ役の鈴木瑛美子、ドクトル役の加藤和樹、オーランド役の伊礼彼方に、収録時のエピソードやコロナ禍での舞台業界について思いを聞いた。

ミュージカル「PARTY」レコーディング風景 (左から)伊礼彼方、加藤和樹、鈴木瑛美子

-ワークショップを公開するという非常に新しい試みですね。今回のプロジェクトを最初に聞いたときにはどう感じましたか。

加藤 日本ではこういった取り組みはなかなかないことですし、われわれもお客さんも新鮮だったんじゃないかと思います。僕たちも撮影前に何度も合わせたわけではないので、ワクワク感もありました。

伊礼 外国ではこういう企画はよくあるらしいのですが、日本では、僕たちは、台本をもらって、オファーをもらって、プレーヤーとして参加するだけなので、作品のベース作りの時点から参加させてもらえるのは貴重な経験でした。こうして一緒に作品を作っていく経験をすると作品への思いも強くなりますし、すごくすてきな試みだったなと思います。

鈴木 こういう時期に新しい企画を立ち上げ、新たに見てもらえる機会を作っていただけたことはすごくすてきなことだと思います。この企画に参加できて、うれしかったです。

-今回の脚本は「ミュージカル・クリエイター・プロジェクト」で選ばれたものですが、作品自体の魅力はどこに感じましたか。

加藤 最終的にはとても心が温まるストーリーで、誰にでも共感し得る親近感が湧く作品だと思います。それから、映像を見ていただければ分かると思いますが、とにかく楽曲が素晴らしい。自分も楽しく歌いながら撮影できました。楽曲と脚本がすごくマッチしていると思います。

伊礼 僕自身は新しいものを作ろう、新しいクリエイターを生み出そうというこの実験的な活動自体に心を打たれました。もちろん、本当に脚本も面白いですし、楽曲も素晴らしいです。それは、みんながノリノリで歌っている姿を見ていただければ伝わるんじゃないかと思います。そして、何といっても、鈴木さんの歌が最高でした。今回初めて共演させていただいたんですが、声の存在感が突出している。素晴らしい声の持ち主だと感動しました。

鈴木 ありがとうございます! 私は、この作品は現代に寄り添った作品だと感じました。さまざまな立場の人が出てくるので、いろいろな角度から見られる作品ですし、たくさんの方に共感したり、感動したりしていただけるんじゃないかと思います。初めて脚本を読んだとき、私自身も悩みを抱えていた時期だったので、感動してウルウルしてしまいました。

-コロナ禍において“逆風のときこそ新しい挑戦を!”というテーマで始まった今回の企画ですが、新型コロナの影響が続く中での舞台業界に対する皆さんの思いを聞かせてください。

鈴木 私は今まで出演したミュージカルが、全て千秋楽を迎えられなかったんです。新型コロナの影響で、途中で公演中止になってしまったりして…。なので、すごく悔しい思いもありましたが、今回、こうした企画に呼んでいただいて、これから新しいことができるかもしれないとすごく将来性を感じました。新型コロナに対して、憎んでいたり恨んでいたりと負の感情も大きかったのですが、この作品に出演させていただいたことで、明るく前向きな気持ちになれました。

加藤 僕自身も出演予定の作品が公演中止になったり、自身のライブが延期になってしまったりといろいろありました。もちろん最初は、どう対処すればいいのか分からず、結果的に公演中止にするという判断しかできなかったと思います。ですが、今はいろいろなことが分かってきて、われわれの中でもどうしたらできるのかみんなで模索してこの1年をやってきました。もちろん、どんなに対策をしてもかかってしまうこともあると思います。ですが、全部を中止するのではなく、再開できるように対処法を十分に考えることができているので、確実に前に進んでいるとは思います。僕たち役者やクリエーター、スタッフが手を取り合えばこれだけのことができるんだということを、われわれの底力を見せられた時期になったのではないかと思います。

伊礼 新型コロナがあったからこそ明らかになった問題や、これまでずっとふたをしてきたことに目を向ける機会になったと思います。今回の企画も、ホリプロさんという大手企業がチャレンジしたことが素晴らしい。コロナがいつ終息するか分からない今、好き嫌いはあれど、配信などのさまざまな形で作品を伝える手段ができたことは業界としてもいいきっかけになったのではないでしょうか。そして、だからこそ、人々が集まれるようになり、生の声や熱量を届けたときに、心がより満たされていくと思います。そういう意味でも、舞台は今後も生き続けるのだろうと思います。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】時空を超えた愛の行方は『楓』『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』『星と月は天の穴』

映画2025年12月20日

『楓』(12月19日公開)  須永恵と恋人の木下亜子は、共通の趣味である天文の本や望遠鏡に囲まれながら幸せな日々を送っていた。しかし実は本当の恵は1カ月前にニュージーランドで事故死しており、現在亜子と一緒にいるのは、恵のふりをした双子の兄・ … 続きを読む

北香那「ラーメンを7杯くらい食べたことも」天野はな「香那ちゃんのバレエシーンは見どころ」 「ラーメン」と「クラシック・バレエ」が題材のコメディーで共演 NHK夜ドラ「替え玉ブラヴォー!」完成会見

ドラマ2025年12月19日

 12月19日、東京都内のNHKで、1月5日からスタートする夜ドラ「替え玉ブラヴォー!」の完成会見が行われ、主人公・千本佳里奈(ちもと かりな) 役の北香那、佳里奈の親友・二木優美(ふたぎ ゆみ) 役の天野はながドラマの見どころを語ってくれ … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(9)浅間神社で語る「厄よけの桃」

舞台・ミュージカル2025年12月18日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。  前回は、玉田家再興にあたり「三つ … 続きを読む

石井杏奈「人肌恋しい冬の季節にすごく見たくなる映画になっています」『楓』【インタビュー】

映画2025年12月17日

 須永恵(福士蒼汰)と恋人の木下亜子(福原遥)は、共通の趣味である天文の本や望遠鏡に囲まれながら幸せな日々を送っていた。しかし実は本当の恵は1カ月前にニュージーランドで事故死しており、現在、亜子と一緒にいるのは、恵のふりをした双子の兄・涼だ … 続きを読む

染谷将太 天才絵師・歌麿役は「今までにない感情が湧きあがってきた」 1年間を振り返る【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年12月15日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語も、残すは12月14日放送の最終回「蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)」の … 続きを読む

Willfriends

page top