X


【インタビュー】「メリリー・ウィー・ロール・アロング」笹本玲奈 「過去の自分を見つめ直し、そこからまた進もうと思うことができる」

 英国最高峰のオリビエ賞を受賞した、斬新かつスタイリッシュな新演出版で送るミュージカル「メリリー・ウィー・ロール・アロング」が、5月17日から上演される。本作は、ウエストエンドを代表する女優マリア・フリードマンが2014年に初演出として手掛けた作品。ブロードウェーのバックステージを舞台に、かつて“親友だった”3人の人物の人生を「逆再生」で描く。本作で、メアリーを演じる笹本玲奈に、本作の魅力や公演への意気込みを聞いた。

メアリー役の笹本玲奈

-本作への出演が決まったときの心境は?

 お話を頂いたときに一緒に脚本を頂いたので、すぐに読ませてもらい、切ないお話だと感じました。物語がどんどん過去にさかのぼっていくのですが、それによってより現在置かれているそれぞれのキャラクターの切なさや抱えている問題が色濃く印象に残る作品だな、と。それから、ミュージカルではありますが、お芝居の要素も強く、演じがいがありそうだとも思いました。もちろん、楽曲も素晴らしく、キャッチーな曲が多くて、歌いがいもありそうだと思い、ぜひやりたいとお返事しました。

-物語が逆再生していくということは、演じる年齢も幅広いのですか。

 はい、20歳から40歳の20年間を演じます。(取材当時)まだどのように表現するのか分かりませんが、きっと見た目も大きく変化すると思います。脚本では、物語の冒頭(メアリーが中年女性のとき)は、メアリーは太っていて、アルコール依存症になっているという設定です。一つの作品の中で、そこまで変化があることも、一人の女性の20年間を演じることも、なかなかないことなので、演じるのが楽しみです。

-脚本を読んだ段階では、メアリーという女性にどんな印象を持っていますか。

 「普通の女性」だと思いました。私は目の前のことに夢中になってしまうのですが、メアリーは過去をすごく大切にしていて、過去の友情を今も続けていきたいという思いが強い。現実的な考えも持っていて、ある意味、すごく人間っぽさのある人です。この作品は、(平方元基が演じる)フランクとメアリー、(ウエンツ瑛士が演じる)チャーリーという3人の人物を中心に描かれていますが、それぞれ全く違った性格でありながら人間くささがあるので、どの人物にも共感しやすいと思います。

-笹本さん自身も共感するところはありましたか。

 メアリーはもちろんですが、フランクにも、チャーリーにも共感できるポイントがありました。フランクのすごく野心的な部分、チャーリーの着実に生きようとする真面目なところも、私にはすごく共感できる部分でした。

-スティーブン・ソンドハイムによる楽曲も魅力の一つです。彼は、笹本さんが出演していた「ウエスト・サイド・ストーリー」の作詞も手掛けていますね。

 そうなんです。ソンドハイムには作曲家というイメージが強いので、「ウエスト・サイド・ストーリー」の作詞をされていることは、自分が出演するまで知りませんでした。ご縁があるなと思います。ソンドハイムの楽曲の作品に出演するのは、今回が初めてなのですが、彼の楽曲は難曲というイメージがあります。音階がメジャーとマイナーを行ったり来たりしたり、変拍子だったりと、歌いこなすのに時間がかかる印象が強くて、難しい曲ばかりだと思っていました。ですが、今回の曲は、もちろん「ソンドハイム調」だなと感じるところはありますが、でも、キャッチーで、1度聞いたら覚えてしまうほど耳なじみのいい曲ばかりです。楽曲的にも、お客さまに楽しんでいただけると思います。

-今回、演出は女優のマリア・フリードマンが担当します。

 彼女はこの作品を、ソンドハイムと一緒に作った方なのですが、メアリーを演じてもいました。女優として活躍されたので、女優の大先輩として、得られるものがたくさんあるんじゃないかなと楽しみです。女優をされていた演出家の方とご一緒したことがないので、どういった形で演出されるのか、期待しています。メアリー役にも、きっとすごく思い入れを持っていらっしゃると思うので、お稽古が始まったらたくさんお話をさせていただきたいと思っています。

-ところで、この1年は舞台業界にとって大変な年でした。笹本さんは、改めて今、振り返ってどんなことを思いますか。

 やはり、新型コロナのことが頭に浮かびます。未だブロードウェーは再開できていません。日本では、早々にエンターテインメントが再開しましたが、私自身も、舞台が中止になるという経験をして、自分の人生や今後のことを考える機会が多かったように思います。ただ、家族との時間も増え、話す機会も多かったので、お芝居ができないことはつらかったですが、自分の置かれている状況や本当にやりたかったことを改めて考えるいい時間だったと思います。

-2021年は、どのような1年にしたいですか。

 ミュージカル「マリー・アントワネット」から始まり、「メリリー」があり、そしてその次の作品も、私にとっては新しい挑戦が続く年になります。この年齢になると、自分の引き出しから出していこうとしがちなのですが、そうではなく、今でも新しいことを吸収して、新しい自分を見付けたいという気持ちがあるので、引き続き、「発見」ができる年になればと思います。こんな自分がいたんだ、自分からこういう感情が出てくるんだと、自分にびっくりしたいです。

-改めて作品への意気込みを。

 脚本を読み、突き進んでいくことも大事だけれども、一度、立ち止まって自分を見つめ直すことも必要だと感じました。過去の自分を見つめ直し、そこからまた進もうと思うことができる作品になると思います。それから、すてきな楽曲が本当にたくさんあって、華やかな音楽が多いので、聞きごたえもあります。すばらしいキャストがそろっているので、ぜひミュージカルファンの方は見て頂きたいです。

(取材・文/嶋田真己)

ブロードウェーミュージカル「メリリー・ウィー・ロール・アロング」

 ブロードウェーミュージカル「メリリー・ウィー・ロール・アロング」は5月17日〜31日、都内・新国立劇場 中劇場で上演。
公式サイト https://horipro-stage.jp/stage/merrily2021/

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

玉置玲央「柄本佑くんのおかげで、幸せな気持ちで道兼の最期を迎えられました」強烈な印象を残した藤原道兼役【「光る君へ」インタビュー】

ドラマ2024年5月5日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。5月5日放送の第十八回で、主人公まひろ/紫式部(吉高由里子)にとっては母の仇に当たる藤原道長(柄本佑)の兄・藤原道兼が壮絶な最期を迎えた。衝撃の第一回から物語の原動力のひとつとなり、視聴者に強烈 … 続きを読む

「光る君へ」第十七回「うつろい」朝廷内の権力闘争の傍らで描かれるまひろの成長【大河ドラマコラム】

ドラマ2024年5月4日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。4月28日に放送された第十七回「うつろい」では、藤原道長(柄本佑)の兄である関白・藤原道隆(井浦新)の最期が描かれた。病で死期を悟った道隆が、嫡男・伊周(三浦翔平)の将来を案じて一条天皇(塩野瑛 … 続きを読む

妻夫木聡「家族のために生きているんだなと思う」 渡辺謙「日々の瞬間の積み重ねが人生になっていく」 北川悦吏子脚本ドラマ「生きとし生けるもの」【インタビュー】

ドラマ2024年5月3日

 妻夫木聡と渡辺謙が主演するテレビ東京開局60周年特別企画ドラマスペシャル「生きとし生けるもの」が5月6日に放送される。北川悦吏子氏が脚本を担当した本作は、人生に悩む医者と余命宣告された患者の2人が「人は何のために生き、何を残すのか」という … 続きを読む

城田優、日本から世界へ「日本っていいなと誇らしく思えるショーを作り上げたい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年5月3日

 城田優がプロデュースするエンターテインメントショー「TOKYO~the city of music and love~」が5月14日から開幕する。本公演は、東京の魅力をショーという形で世界に発信するために立ち上がったプロジェクト。城田が実 … 続きを読む

【週末映画コラム】台湾関連のラブストーリーを2本『青春18×2 君へと続く道』/『赤い糸 輪廻のひみつ』

映画2024年5月3日

『青春18×2 君へと続く道』(5月3日公開)  18年前の台湾。高校3年生のジミー(シュー・グァンハン)は、アルバイト先のカラオケ店で4歳年上の日本人バックパッカーのアミ(清原果耶)と出会い、天真らんまんでだがどこかミステリアスな彼女に恋 … 続きを読む