【インタビュー】映画『2分の1の魔法』ダン・スキャンロン監督&コーリー・レイ、プロデューサー「この映画は、家族や自分たちの周囲にいる人とのつながりについて描いています」

2020年8月19日 / 06:48

 魔法が忘れられてしまった世界を舞台に、亡くなった父親にもう一度会いたいと願う兄弟が、魔法によって半分だけ復活した父を完全によみがえらせるために奮闘する姿を描く、ディズニー・ピクサーアニメの最新作『2分の1の魔法』が8月21日から公開される。ダン・スキャンロン監督とプロデューサーのコーリー・レイに話を聞いた。

ダン・スキャンロン監督(左)とプロデューサーのコーリー・レイ

-『トイ・ストーリー4』(19)のジョシュ・クーリー監督が「今、ピクサーで開発中の映画はシリーズものではなく、全てがオリジナル」と言っていましたが、この映画はそのうちの1本でしょうか。

スキャンロン そうです。この映画は間違いなく、パイプラインの中のオリジナル映画の1本です。この後にもたくさんの映画が公開されます。とてもユニークで、オリジナリティーにあふれた映画を作るピクサーにとって、今はとてもエキサイティングな時。僕らはとても興奮しています。

-この映画は、監督のお父さんへの思いを反映していると聞きましたが、『リメンバー・ミー』(17)同様、生者と死者との関係や、家族の絆がテーマになっていました。今、なぜこうしたテーマの映画が続けて作られるのでしょうか。個人的には、この映画を見て、『フィールド・オブ・ドリームス』(89)という映画を思い出しました。

スキャンロン 死について描いた映画は、同時に生についても語っていると思います。それらは、誰かの人生を祝福すること、人生にはどんな目的があるのかという疑問や、生きている間に人は人の心にどのように触れるのか、といったことを描いています。ですから、見る人に、とても美しい影響を与える作品に成り得ると思います。そして、なぜピクサーがこういうテーマに引かれるのかという理由は、僕らがいつも、映画を通して大きな課題を掘り下げたいと思っているからです。生と死は間違いなく大きな課題で、多くのことを含んでいますし、それは普遍的な課題だと思います。

-この映画に登場するのは、エルフという不思議なキャラクターですが、なぜ普通の人間ではなく、あのような見た目のキャラクターを主人公にしたのでしょうか。

レイ 私たちには、魔法が存在する世界を作り出す必要があったので、ファンタジーの世界を舞台にしようと決めました。そうなると、それに合うキャラクターを考えなければなりません。また、現代の世界や設定に、みんなが知っているファンタジーの要素にあふれたキャラクターを入れ込むのは、とても楽しいだろうとも思いました。そこでエルフを思い付きました。彼らは、先のとがった耳をしているけれど、人間のようにも見えます。エルフなら感情表現ができて、観客の共感を呼ぶこともできると思いました。

-原題の「オンワード」には「前進」という意味があり、主人公の兄弟の名字は「ライトフット」です。この二つの単語に込めた意味を教えてください。

スキャンロン 「オンワード」は、あなたがおっしゃるように「前進する」ということです。この映画は、人生の悲劇から立ち直って、前進することを描いています。大人になることについて描いた映画なのです。それから、僕は「オンワード」という言葉自体が好きです。それは、アドベンチャーやジャーニーのような意味にも取れるからです。この映画は、間違いなく冒険映画です。また、発見についての映画でもあります。だからタイトルの「オンワード」には、前進し、大人になり、成長する、というポジティブなアイデアが詰まっています。

 それから、「ライトフット」には何の意味もありません(笑)。ただ、ファンタジーの名前みたいに聞こえるからそうした、というだけです。その理由として「実は深い考えがあって…」と言えたらいいのですが、本当にありません。何か意味のある、違う名前にしようかとも思いましたが、その時点では、すでに僕らは「ライトフット」という名前が気に入っていたので、そのままにしました。

-本作のアニメーションについて、色や形を工夫するなど、何か新たに試したことはありますか。

スキャンロン デザインやアニメーションのスタイルに関しては、アニメーターたちが作業をしながら楽しいと感じるものにしたいと思いました。例えば、超リアリスティックであったり、解剖学的であったり、自然主義的であったり…というようななものではなく、ユニークなものにしたかったのです。そして作品全体やデザインに、ユーモアが感じられるものにしたかった。それは僕らにとってとても重要なことでした。

 この映画は、とても感動的だけど、コメディーの要素もたくさん詰まっています。そして、「人生はコメディーだ」という言葉のように、この映画を、楽しくておかしなものにしたかったのです。また、これまでは、コメディー的な要素のあるファンタジー映画はあまりありませんでしたし、多くのファンタジー映画に登場したケンタウロスやユニコーンのようなクリーチャーを見ると、彼らはとてもシリアスに、とても優雅に美しく描かれています。なので、この映画では あえてそうした要素を入れずに、もっと自由に楽しみたいと思ったのです。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

板垣李光人「最初から、戦争を考えて見るのではなく、実際に見て感じたことを広めていっていただければ、それが一番うれしいです」『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』【インタビュー】

映画2025年12月5日

 戦争がもたらす狂気を圧倒的なリアリティーで描き、第46回日本漫画家協会優秀賞を受賞した武田一義の戦争漫画をアニメーション映画化した『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』が12月5日から全国公開された。太平洋戦争末期、激戦が繰り広げられたペリリ … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(8)百年ぶりの復活へ 四代目が掲げた三つの大願

舞台・ミュージカル2025年12月4日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。    2016年に四代目・玉田玉秀 … 続きを読む

多部未華子「学びの多い現場でした」DV被害者役に挑んだヒューマンミステリー「連続ドラマW シャドウワーク」【インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

 WOWOWで毎週(日)午後10時より放送・配信中の「連続ドラマW シャドウワーク」は、佐野広実の同名小説を原作にしたヒューマンミステリー。  主婦の紀子は、長年にわたる夫の暴力によって自己喪失し、すべて自分が悪いと考えるようになっていた。 … 続きを読む

森下佳子「写楽複数人説は、最初から決めていました」脚本家が明かす制作秘話【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、まもなくクライマックスを迎える。これまで、いくどとなく視聴者を驚かせてきたが、第4 … 続きを読む

富田望生「とにかく第一に愛を忘れないこと」 村上春樹の人気小説が世界初の舞台化【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年11月30日

 今期も三谷幸喜の「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」に出演するなどドラマや映画で注目を集め、舞台やさまざまなジャンルでも活躍する富田望生。その富田が、2026年1月10日から上演する舞台「世界の終りとハードボイルド・ワンダ … 続きを読む

Willfriends

page top