【インタビュー】映画『2分の1の魔法』志尊淳 兄役の城田優は「何かあったときも一番に相談ができる、頼りになる存在」

2020年8月20日 / 06:45

 魔法が消えかけた世界を舞台に、亡くなった父親にもう一度会いたいと願う兄弟が、魔法によって半分だけ復活した父を完全によみがえらせるために奮闘する姿を描く『2分の1の魔法』が、8月21日から公開される。主人公の内気な少年イアンの日本語版声優を担当した志尊淳に、初めてディズニー&ピクサー作品に参加した感想や、普段から兄弟のような関係という、兄バーリー役の城田優について聞いた。

主人公イアンの日本語版声優を担当した志尊淳

-初めてのディズニー&ピクサーへの参加でしたが、決まったときの気持ちを教えてください。

 決まったときは「まさかディズニーに携わることができるとは」という驚きと喜びが強かったです。

-プレッシャーなどはありましたか。

 プレッシャーよりも、作品を見て、この素晴らしさを日本語でしっかりと届けたい、伝えたいという思いがあったので、イアンの感情をそのまま届けるということに専念しました。実際に演じてみて、声で表現するというテクニカルな部分では苦労するところもありましたが、収録は楽しくできました。

-日本語版声優が発表されたときに、城田さんが「本当の弟のように思っているのでうれしい」とコメントしていましたが、普段から仲がいいのでしょうか。

 取材などで「本当の兄弟のような関係」と言うと、うそっぽく聞こえてしまいますが、僕と優くんの場合は本当なんです。プライベートでも一番会っているし、事務所の先輩とは思えないような言葉遣いで話しています(笑)。ただ、けんかはしません。言い合いはしますけど(笑)。

-それは、何か共通点があって、そこまで仲良くなったのでしょうか。

 同じ事務所だから、仕事の環境が似ているんです。だから、仕事の相談もプライベートで何かあったときも一番に相談ができる。頼りになる存在です。

-一緒にいることで、似てきた部分などはありますか。

 根本にある考えや、ロジカルな部分はもともと似ていましたが、やっぱりずっと一緒にいると、それ以外の部分も似てくるみたいで、事務所の人から「城田みたいになってきたな」とよく言われます(笑)。

-どちらかが合わせているわけではないんですね。

 僕の意見を、優くんに寄せているわけではないんです。だから2人で何か話しているときも、「僕は違うと思う」と、ちゃんと自分の考えを伝えられるので、すごく不思議な関係です。

-お二人には、バーリーとイアンと似ている部分はありますか。

 劇中の2人と僕たちは本当に似ています。優くんがふざけていて、僕が止めるみたいな。どっちが年上なのか分からないです(笑)。最初に映像を見たときも、優くんの声は入っていないのに、バーリーが優くんにしか見えなくて、収録中も優くんと会話をしているような気持ちでした。

-収録前に、城田さんからアドバイスなどはありましたか。

 ありませんでした。ただ、終わった後に「淳ちゃん(イアンの声に)すごく合っていたよ」と連絡をもらいました。優くんは身内に厳しいので、普段、僕が出演している舞台などを見てくれたときは、駄目出しがあるんですけど、今回はすごく褒めてくれました。

-作品の魅力はどんなところですか。

 この作品の好きな部分は、見る側に考える余地を与えてくれるところです。見たあとでいろいろな捉え方ができるように作られているところが好きです。

-イアンの年齢にちなんで、16歳のときの印象的な出来事を教えてください。

 ちょうどデビューが16歳なんです。誕生日の数日後に「ミュージカル・テニスの王子様」のオーディションに合格した、というのを聞いたので、その瞬間に人生が変わりました。

-そのときは、ワクワクと不安のどちらが大きかったですか。

 不安が100パーセントでした。実は、舞台が終わったら辞めようと思っていたんです。養成所にいたときに「オーディションを受けてきて」と言われて、訳も分からずに受けて、ありがたいことに受かることができて。ただの高校生が、急に「2500人の前で舞台をします」と言われても、うまくいくわけもなく、怒られてばかりでした。でも、そこから学ぶことはすごく多かったし、お客さんの前で披露することは最高に幸せでしたが、もうこれで満足だなと思っていて、千秋楽でやっとホッとできました。(公演中は)不安で寝られないし、SNSや手紙で悪口を書かれたり、そういう経験は今まで全くなく、免疫もなかったので、舞台に立ったときの高揚感は、他の物では味わえないとは思いましたが、次につなげよう、という考えは一切ありませんでした。

-イアンとバーリーの成長も本作の見どころの一つですが、志尊さんには自分を成長させてくれた存在はいますか。

 家族です。高校生のときに、一人で生きていこうと思って、2年間ぐらい一人で生活していたんですけど、実際に離れてみて、家族の尊さや大切さを感じました。今も家族が基準というか、母親が基準です。何か大切な決断をするときはまず家族の顔を思い浮かべます。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】映画は原作を超えたか 沖縄の現代史を背景に描いた力作『宝島』/純文学風ミステリーの趣『遠い山なみの光』

映画2025年9月18日

『宝島』(9月19日公開)  1952年、米軍統治下の沖縄。米軍基地を襲撃して物資を奪い、困窮する住民たちに分け与える「戦果アギヤー」と呼ばれる若者たちがいた。  村の英雄でリーダー格のオン(永山瑛太)と弟のレイ(窪田正孝)、彼らの幼なじみ … 続きを読む

【Kカルチャーの視点】レジェンドたちの「朝鮮の旅」たどった写真家の藤本巧さん

2025年9月18日

 朝鮮の文化を近代日本に紹介した民藝運動家の柳宗悦や陶芸家の河井寛次郎。彼らが1930年代に見た朝鮮の風景に憧れ、1970年に韓国の農村を訪れたのが写真家の藤本巧さんだ。以来50年以上にわたり、韓国の人々と文化をフィルムに刻み続けてきた。 … 続きを読む

エマニュエル・クールコル監督「社会的な環境や文化的な背景が違っても、音楽を通して通じ合える領域があるのです」『ファンファーレ!ふたつの音』【インタビュー】

映画2025年9月18日

 世界的なスター指揮者のティボ(バンジャマン・ラべルネ)は、突然白血病を宣告され、ドナーを探す中で、生き別れた弟のジミー(ピエール・ロタン)の存在を知り、彼の隠れた音楽的な才能にも気付く。兄弟でありながらも異なる運命を歩んできた2人。ティボ … 続きを読む

前田旺志郎「世の中に関心を持つ大切さに気付いた」窪塚愛流「止まっていた時間が動き出した」初共演の2人が福島原発事故を題材にした映画で感じたこと『こんな事があった』【インタビュー】

映画2025年9月16日

 東日本大震災から10年後の福島を舞台に、原発事故で引き裂かれた家族と青春を奪われた若者たちの姿を描いた『こんな事があった』が9月13日から全国順次公開中だ。監督・脚本は、『追悼のざわめき』(88)などで日本のみならず世界の映画ファンから支 … 続きを読む

グイ・ルンメイ、真利子哲也監督「お互いが思い合うからこそすれ違う。でもそこには愛があるという家族の形を描きたかった」『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』【インタビュー】

映画2025年9月12日

 ニューヨーク・ブルックリンで暮らすアジア人夫婦を主人公に、息子の誘拐事件をきっかけに夫婦の秘密が浮き彫りとなり家族が崩壊していく姿を、全編NYロケで描いた『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』が、9月12日から全国公開され … 続きを読む

Willfriends

page top