【インタビュー】舞台「リムジン」向井理&倉持裕が初タッグで送る、笑いにあふれたサスペンス「悩みながら演じることに意味がある」

2020年3月19日 / 12:00
 
 向井理が主演する舞台、M&Oplaysプロデュース「リムジン」が5月23日から上演される。本作は、2011年から続く「鎌塚氏シリーズ」や「ライクドロシー」「虹とマーブル」「磁場」など多彩な作品を生み出してきた倉持裕が作・演出を務めるサスペンス。主人公の男が自己保身のためについた一つのうそが、次のうそを呼び、逃げ場のないところまで追い詰められていくさまをブラックな笑いを交えて描く。初めてタッグを組む向井と倉持に、本作に懸ける思いを聞いた。
 

向井理(左)と作・演出の倉持裕 ヘアメイク:晋一朗(IKEDAYA TOKYO)/スタイリスト:外山由香里

-本作は、向井さんからのアプローチで出演が決まったと聞いています。向井さんは、倉持作品のどんなところに引かれて一緒にやりたいと思ったのですか。

向井 僕が姉のように慕っている片桐はいりさんが「倉持くん、いいよ」とおっしゃっていたので、倉持さんの作品を見に行かせていただいたんです。その作品が素晴らしく、すごく丁寧に作られている印象があったので、それで、ぜひ一緒にやらせていただきたいと思いました。はいりさんの意見だから、というわけではないのですが、演劇人として長く活躍されている、はいりさんがおっしゃっていたということもきっかけの一つになりました。
 
倉持 僕は「向井くんが興味を示しているよ」といううわさを聞いたんですよ(笑)。それで、真偽を確かめようと思って、(向井と)食事をして、そこで、どんなお芝居をしようか、というお話をいろいろとさせていただいて、今回につながりました。
 

-ラブコールを受けて、向井さんに当てて書かれたのが本作ですか。

倉持 僕の中でやりたいと考えていた話が幾つかあったので、下敷きはもともとあったのですが、向井くんに合うだろうと思ったのが本作でした。今回の話は、小さなうそを隠すためにまたうそをついて、雪だるま式に罪が膨らんでいくというストーリーなのですが、それを夫婦という設定でやりたいと思ったんです。
 

-向井さんには夫役が似合いそうだと感じたということですか。

倉持 そうですね。向井くんはご覧の通り、スマートな容姿で、洗練された空気がある人。タイトルを「リムジン」としたのも、優雅にスーッと走っていそうな人生を送っている主人公の男のイメージに掛けて付けたのですが、向井くんには外見的にそんな印象がある。そんな男が内心ではハラハラしている姿が面白いと思ったし、夫婦共々のっぴきならない状況になるというのはドラマッチックになるんじゃないかと思ったので、夫婦という設定が出てきました。
 

-向井さんからは倉持さんに何かリクエストはしましたか。

向井 僕がリクエストするなんておこがましいので、ただ一緒にやらせていただきたい、と。それから、歌わないってことですね(笑)。
 
倉持 開口一番、それは言われました。「僕は歌いません」って(笑)。でも、今回は歌わないので、大丈夫だと思います。
 

-倉持さんから見た向井さんの役者さんとしての印象は?

倉持 派手な役も地味な役もできるという印象があります。すごく格好いいのに、なぜか平凡な男が成立するんです。「まさかこんな人は現実にはいないよ」と感じてしまう俳優さんもいますが、向井くんはそれを感じさせない。そうかと思うと、劇団☆新感線(「髑髏城の七人」Season風での蘭兵衞)で演じたような妖艶な役もできるので、すごい。
 

-向井さんは、ご自身ではどんなカラーがあると思っていますか。

向井 台本を頂いて、その通りにやることしかできないので、自分ではあまり分かりませんし、これが得意だと自信満々にやっているわけではないです(笑)。でも、舞台は難しい、とは思っています。昨年、出演した舞台(「美しく青く」)はせりふが極端に少なかったので、表情だけで伝えなければいけなかったのですが、映像であれば、分かりやすく抜いてもらえる表情を、舞台ではどう表現したらいいのかとすごく悩みました。ほかの作品でもそうですが、舞台では、特に余裕があるわけではなく、毎回、どうしようと悩みながら稽古をして、答えが出ないまま本番が始まることも多いので、不安の中でやっています(苦笑)。
 

-最近では、いわゆる「駄目な男」を演じて高い評価を得ていますが、それについてはいかがですか。

向井 悩みながら演じることに意味があるんじゃないかなとは思っています。得意なことで結果を出して、得意なことばかりをやり続けると、見ている方たちは面白くないんだと思います。安心して演じられる役というのは、稽古量も見えてしまい、入り込むことができない。でも、どうにか取り繕おうとして、違和感を感じながらも正解を見つけようともがきながら演じている姿は、見ている方にとっても、いい意味での違和感があるんじゃないかな、と。安心できないまま演じるのは、役者にとってつらいことですが、役者がつらくないと、見ている方も面白くないので、舞台は毎回、挑戦のつもりでやっています。
 

-映像の仕事もたくさんある中で、舞台にコンスタントに出られている動機はそこですか。

向井 そうです。映像と演劇で表現をそれほど変えているつもりはありませんが、映像の場合は、どこか分かりやすさを求められるところがあると思いますし、無意識に演じてしまっていることもあるので、それらを演劇に出ることでリセットするという感覚です。演劇は芝居の原点だと思うので、そういう意味でもやり続けたいと思っています。もちろん、演劇が好きだからという理由もあるのですが、僕にとっては修行に近いです。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

堤真一、三宅唱監督「実はこういうことも奇跡なんじゃないのということを感じさせてくれる映画だと思います」『旅と日々』【インタビュー】

映画2025年11月6日

 三宅唱監督が脚本も手掛け、つげ義春の短編漫画『海辺の叙景』と『ほんやら洞のべんさん』を原作に撮り上げた『旅と日々』が11月7日(金)から全国公開される。創作に行き詰まった脚本家の李(シム・ウンギョン)が旅先での出会いをきっかけに人生と向き … 続きを読む

【映画コラム】俳優同士の演技合戦が見ものの3作『爆弾』『盤上の向日葵』『てっぺんの向こうにあなたがいる』

映画2025年11月1日

『爆弾』(10月31日公開)  酔った勢いで自販機を壊し店員にも暴行を働き、警察に連行された正体不明の中年男(佐藤二朗)。自らを「スズキタゴサク」と名乗る彼は、霊感が働くとうそぶいて都内に仕掛けられた爆弾の存在を予告する。  やがてその言葉 … 続きを読む

福本莉⼦「図書館で勉強を教え合うシーンが好き」 なにわ男⼦・⾼橋恭平「僕もあざとかわいいことをしてみたかった」 WOWOW連ドラ「ストロボ・エッジ」【インタビュー】

ドラマ2025年10月31日

 福本莉⼦と⾼橋恭平(なにわ男⼦)がW主演するドラマW-30「ストロボ・エッジ  Season1」が31日午後11時から、WOWOWで放送・配信がスタートする。本作は、咲坂伊緒氏の⼤ヒット⻘春恋愛漫画を初の連続ドラマ化。主人公の2人を軸に、 … 続きを読む

吉沢亮「英語のせりふに苦戦中です(笑)」主人公夫婦と関係を深める英語教師・錦織友一役で出演 連続テレビ小説「ばけばけ」【インタビュー】

ドラマ2025年10月31日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「ばけばけ」。明治初期、松江の没落士族の娘・小泉セツと著書『怪談』で知られるラフカディオ・ハーン(=小泉八雲)夫妻をモデルに、怪談を愛する夫婦、松野トキ(髙石あかり)とレフカダ・ヘブン(トミー・バストウ) … 続きを読む

阿部サダヲ&松たか子、「本気でののしり合って、バトルをしないといけない」離婚調停中の夫婦役で再び共演 大パルコ人⑤オカタイロックオペラ「雨の傍聴席、おんなは裸足・・・」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年10月31日

 宮藤官九郎が作・演出を手掛ける「大パルコ人」シリーズの第5弾となるオカタイロックオペラ「雨の傍聴席、おんなは裸足・・・」が11月6日から上演される。本作は、「親バカ」をテーマに、離婚を決意しているミュージカル俳優と演歌歌手の夫婦が、親権を … 続きを読む

Willfriends

page top