【インタビュー】「泣くロミオと怒るジュリエット」柄本時生、まさかのジュリエット役に「せりふを一生懸命言うということに尽きる」

2020年1月10日 / 12:00

 演出家・鄭義信が、シェークスピアの名作『ロミオとジュリエット』を大胆に翻案し、戦後の混乱期を生きる人々の純愛群像劇に仕上げた「泣くロミオと怒(いか)るジュリエット」が2月8日から上演される。舞台は戦後の港町、全編関西弁、キャストは全員男性と、誰もが思い描く通常のラブストーリーとは一線を画した物語として展開する本作で、ジュリエットを演じる柄本時生に自身の役柄について、そして作品に懸ける意気込みを聞いた。

ジュリエット役の柄本時生

-ジュリエット役と聞いたときは驚いたのではないですか。

 2度聞きしました。「え?」って(笑)。僕は頂いたお仕事は基本的には断らないようにしていますが、「1回考える」って初めて言ったように思います。どうなるのか全く分からないので、どうすればいいのかな、と。でも、考えるのが嫌いじゃないので、やってみてもいいかなと思い、受けさせていただきました。

-脚本を読んだ感想は?

 (演出の)義信さんがジュリエットという役を僕に寄せて描いてくれているな、という印象を持ちました。「器量がよくない」って書いてあったりして(笑)。もちろん、本筋からは外れてはいませんが、それでも、僕のこともしっかりと考えてくれた脚本だと思います。

-ジュリエット役を演じるに当たって、どのようなアプローチを考えていますか。

 義信さんが、僕が演じることを考えて書いてくださったので、あまり考えずに演じればいいのかなと思っています。多分、ジュリエットに見えるためにはどうすればいいんだろうという悩みは、義信さんが脚本の中で解消してくれている気がします。なので、僕は結局、せりふを一生懸命言うということに尽きるんじゃないかと、今は思っています。

-ジュリエットであっても「女性役」という意識ではなく、あくまでも「ロミオの相手役」ということですか。

 そうかもしれません。感覚的なものではありますが。

-「女性役」という意識ではないとのことですが、ちなみに、柄本さんが考える女性らしさとは?

 僕は、やくざ映画が好きでよく見るのですが、そういった作品に出ている女性に、女性らしさを感じることが多いです。やくざ映画では、女性は男性のことをひたすら待っているんですよ。男は「行ってくるぜ」って言って出ていって、結局、死んでしまったりするんですが、それでも女性は待っている。そういう姿に女性を感じます。

-そうすると、やくざ映画の世界のような恋愛が理想なのでしょうか。

 いや、それはまた別です(笑)。考え方が違ってもいいので、時間軸が合う女性が好きです。特に連絡をしなくても、この時間になれば帰ってくるだろうなと思っていると、本当にその時間に帰ってくる、というような。そういった時間に対する感覚が似ている女性が理想です。

-相手役となる、ロミオ役のジャニーズWESTの桐山照史さんの印象は?

 今回、初共演で、まだ3回ほどしかお会いできていないのですが、とてもいい方です。一緒に作品を作れることを楽しみにしています。

-恋愛の相手役が男性だと、役作りも変わってきますか。

 いや、変わらないです。たとえ、相手が女性だったとしても、本気で恋愛をするわけではないので。

-今回、せりふは全て関西弁だそうですね。

 僕は、東京生まれ、東京育ちなので、どうすればいいのか今から悩んでいます(苦笑)。映画では関西弁の役を演じたことがあったのですが、とにかく大変で…。16テイクぐらいやり直すこともありました(笑)。今回は、共演者に関西の方も多いので、助けていただこうと思っています。実は、ジュリエット役ということよりも、関西弁の方が不安なんです(笑)。

-では、柄本さんは、普段、役作りはどのようにされるんですか。

 皆さん、小説を読むときに、登場人物の口調や声を自然と想像しながら読むと思うのですが、僕はまさにそれを脚本でやっています。脚本を読むときに、頭の中でそれぞれのキャラクターが会話を繰り広げているイメージを作って、それをそのまま演じてみるんです。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

板垣李光人「最初から、戦争を考えて見るのではなく、実際に見て感じたことを広めていっていただければ、それが一番うれしいです」『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』【インタビュー】

映画2025年12月5日

 戦争がもたらす狂気を圧倒的なリアリティーで描き、第46回日本漫画家協会優秀賞を受賞した武田一義の戦争漫画をアニメーション映画化した『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』が12月5日から全国公開された。太平洋戦争末期、激戦が繰り広げられたペリリ … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(8)百年ぶりの復活へ 四代目が掲げた三つの大願

舞台・ミュージカル2025年12月4日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。    2016年に四代目・玉田玉秀 … 続きを読む

多部未華子「学びの多い現場でした」DV被害者役に挑んだヒューマンミステリー「連続ドラマW シャドウワーク」【インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

 WOWOWで毎週(日)午後10時より放送・配信中の「連続ドラマW シャドウワーク」は、佐野広実の同名小説を原作にしたヒューマンミステリー。  主婦の紀子は、長年にわたる夫の暴力によって自己喪失し、すべて自分が悪いと考えるようになっていた。 … 続きを読む

森下佳子「写楽複数人説は、最初から決めていました」脚本家が明かす制作秘話【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年12月1日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、まもなくクライマックスを迎える。これまで、いくどとなく視聴者を驚かせてきたが、第4 … 続きを読む

富田望生「とにかく第一に愛を忘れないこと」 村上春樹の人気小説が世界初の舞台化【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年11月30日

 今期も三谷幸喜の「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」に出演するなどドラマや映画で注目を集め、舞台やさまざまなジャンルでも活躍する富田望生。その富田が、2026年1月10日から上演する舞台「世界の終りとハードボイルド・ワンダ … 続きを読む

Willfriends

page top