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【インタビュー】「FORTUNE」吉岡里帆、久しぶりの舞台で見せる“大人な役”に「自分の嫌なところもしっかりと見せることで役が生きてくる」

 森田剛が主演する舞台「FORTUNE」が2020年1月13日から上演される。本作は悪魔に魂を売った男の顛末(てんまつ)を描いた「ファウスト」を、現代のロンドンに舞台を置き換えた作品。英国を代表する劇作家サイモン・スティーブンスの最新作として世界に先駆けて日本で初演される。本作で、悪魔と契約を結び、闇へ落ちていく主人公・フォーチュンが思いを寄せる、若くして結婚している映画プロデューサーのマギーを演じる吉岡里帆に、作品に懸ける思いを聞いた。

マギー役の吉岡里帆 ヘアメイク:Mifune (SIGNO)/スタイリスト:Eriko Suzuki

-本作への出演が決まったときの、率直な思いは?

  舞台に出演すること自体が久しぶりですし、演出家のサイモンさんが日本で初めて上演される作品ということで、新鮮なことが重なっていて、すごく幸せに感じました。マギーは私にとって、挑戦的な役でもあります。この作品は、人生を描いた重みのある物語でもあるので、サイモンさんの演出でどう面白く昇華していくのだろうと、今は楽しみな気持ちでいます。

-戯曲を読んで、本作のどのようなところに魅力を感じましたか。

 「ファウスト」は、宗教的で哲学的なところにフイーチャーした作品だと思いますが、「FORTUNE」は、もう少し軽やかな印象がある作品に仕上がっていると思います。現代の私たちにとって、より身近な人間の業(ごう)を感じていただけると思うので、見に来てくださったお客さまたちが、自分の人生経験と照らし合わせながら見られる、距離感の近い作品になるのかなと思いました。

-吉岡さんが演じるマギーという女性については、どのようなイメージを持ちましたか。

 マギーは真っすぐで、知的で、ある種、清廉潔白なイメージです。美しく、真っすぐで、愛情深い女性である反面、人間らしさも描かれています。戯曲を読んで、私はそこに面白さを感じたので、落ちていくさま、人に引きずられていくさまをお見せできるよう、この作品に挑みたいと思います。

-マギーという役は、吉岡さんがこれまで演じてきた役を考えると、かなり大人なイメージの役になると思います。現在、どのように演じたいと考えていますか。

 大人な役を演じられるのはうれしく思っています。背伸びして見えないように、自分の中に落とし込まないといけないという緊張感もあります。マギーの愛を真っすぐに信じているところや、心が折れそうになっても、何とかその人と向き合おうとする気持ちは、共感する部分でもあるので、そういったところから手繰り寄せてマギーを作っていきたいと思います。自分の嫌なところもしっかりと見せることでマギーという役が生きてくると思うので、きれいにやろうとせず、自分の中に渦巻いているエネルギーを舞台上でしっかりとお見せできたらと、今の段階では思っています。

-吉岡さんにとっては、本作は久しぶりの舞台出演になりますね。

 そうですね。たくさんの方を前にしたパフォーマンスというものに不慣れなので、そこがまず、一つ目の壁かなと思っています。時間をかけて鍛錬していって、お客さまに伝わるように頑張りたいと思います。

-初めて舞台を見るお客さんもいると思いますが、本作のどこに注目して見てもらいたいですか。

 初めて舞台を見る方にとっては、とてもすてきな出会いになると思います。私は今回、この台本を読んでいて、物語に引き込まれていく感覚がありました。心が動くような言葉が並んでいて、主人公のフォーチュンという男性の、弱くて切なくて、駄目な部分が分かっているのに、なぜか憎めない人柄にも引き込まれます。まだ、稽古が始まっていないので、私自身もどんな演出になっていくかは分かりませんが、サイモンさんは本当に楽しい作品を作られる方だと聞いています。ストーリーだけを聞くと難しく感じるかもしれませんが、感性に訴えかけるような作品になると思うので、ぜひ楽しみにしていただきたいなと思います。

-「フォーチュンに引き込まれる」と感じたということですが、マギーから見たフォーチュンの魅力はどこにあると思いますか。

 フォーチュンは、夢や欲望に忠実で、そこに真っすぐにエネルギーを放出できる人で、知的な一面があり、芸術を愛している。そういった点がマギーとも通じ合える部分だったんだと思います。物語が進んでいくにつれ、マギーは母性的な思いを持つようになるのか、私の力でなんとかするという独り善がりな思いを抱くのか、まだ何とも言えませんが、「フォーチュンを愛している自分を愛している」という見方もできるのかなと思っています。

-フォーチュンを演じる森田さんの印象は?

 ポスター撮影で初めてお会いしたとき、フラットで自然体に接してくださって、優しい方だと感じました。そんな方がフォーチュンを演じるというのは、グッとくるところですよね。私は、森田さんには軽やかなイメージを持っていたんです。でも、舞台ではずっしりと重くて、圧倒的な演技をされるといううわさをあちこちで聞いていますので、今回、共演できることを楽しみにしています。

(取材・文・撮影/嶋田真己)

 PARCO PRODUCE 2020「FORTUNE」は2020年1月13日~2月2日、都内・東京芸術劇場プレイハウスほか、長野県松本市、大阪市、北九州市で上演。
公式サイト http://www.parco-play.com/

 

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