吉岡里帆×あいみょん、仲良しコンビが生んだ映画『音タコ』ヒロイン“ふうか”を語る

2018年10月11日 / 18:00

 『俺俺』や『時効警察』シリーズで知られる三木聡が監督・脚本を手掛けた新作映画『音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』が、10月12日より公開される。主役の“シン”を阿部サダヲが、ヒロインの“ふうか”を吉岡里帆が演じているほか、千葉雄大、麻生久美子、小峠英二(バイきんぐ)、ふせえり、田中哲司、松尾スズキら、個性豊かな俳優陣が揃った話題作だ。

 加えて、音楽面をサポートするアーティスト陣もかなりアツい。シンが歌う主題歌「人類滅亡の歓び」は、作曲をHYDE(L’Arc~en~Ciel)、作詞をいしわたり淳治が務め、ふうかが歌う主題歌「体の芯からまだ燃えているんだ」は、作詞・作曲をあいみょんが担当。さらには、PABLO、KenKen、SATOKO(FUZZY CONTROL)、THIS IS JAPAN、never young beach、橋本絵莉子、富澤タク(グループ魂/Number the.)、KATARU(ニューロティカ)、NABO(ニューロティカ)、清水麻八子、八十八ヶ所巡礼ら、ジャンルも世代も色とりどりなミュージシャンが参加していることもあり、映画ファンのみならず音楽リスナーたちからも注目を集めている。

 物語は、世界的ロックスターであるシンの秘密をふうかが知ってしまったところから加速する。その秘密とは、シンの破格の歌声が“声帯ドーピング”によるものであり、彼の喉は “声帯ドーピング”のやりすぎでもはや崩壊寸前である、ということ。そんなシンの最後の歌声を巡り、謎の組織から追われる二人の逃避行を描く本作は、何よりタイトルがド直球で示している通り、“歌”に焦点を当てたハイテンション・コメディだ。“声が小さすぎる”ストリート・ミュージシャンのふうかは、何事にも自信が持てず、その声量のなさが原因で組んでいたバンドをクビになってしまうのが作中冒頭の出来事。

 「やらない理由を見つけてはグジグジ文句を言って、そのくせ憎めないマイペースさがある。ふにゃふにゃしていて、芯のない子で、それこそタコみたいな。シンと出会うまで、夢も持っているようで持っていない。ふうかって、三木監督から見る“若い世代”の例えの一つらしいです。意思がない感じ。」(吉岡)

 「声が小さいのに路上ライブできるってことは、メンタルの強さはあるんですよ。それは私と真逆だった。私は声は出るけど、路上ライブは全然やってこなかったタイプ。」(あいみょん)

 端的に言えば、本作はふうかの成長物語である。シンという自身と対極にいるような人物と出会い、いずれもクセが強く、それぞれ強靭な芯を備えたキャラクターたちに振り回され、彼女の日常は一転する。その過程で、徐々に泥臭く、逞しく、ヴォーカリストとして、ひいては人として花開いていくふうかの姿が痛快で、最終的には胸にジーンと熱いものがこみ上げてくるのだ。

 「三木監督も“話として辻褄が合わなくてもいい。やりたいことだけをやる”みたいなスタンスで、意味がないって周りに思われていることでも自分を信じて表現すること、自分らしくいることをすごく大事にされてました。」(吉岡)

 物語のクライマックスを演出するのは、吉岡が力強く歌い上げる主題歌「体の芯からまだ燃えているんだ」。あいみょんが映画に関する最低限の情報と、三木監督から直接伝えられた想いを自分なりに解釈し、書き上げた楽曲だ。編曲と演奏は、東京のライブハウス・シーンで存在感を放つ4ピース、THIS IS JAPANが務めた。

 「三木監督とは2回、直接打ち合わせしました。1回目の時に“こういう映画になるので、最後に締めてもらえるような楽曲を作ってほしい”って言ってくださって、同時にざっくり内容とキャストさんを聞いて、その後すぐに詞とメロディを思いつきました。なので、その次の打ち合わせにギターを持って行って、監督の目の前で1サビぐらいまで歌ったんです。そしたら“お、いいんじゃないかな”って言ってくださった。楽曲書き下ろしの時はいつもそうなんですけど、台本を読み込んだりするより、監督のお話を直接聞いたほうが曲は作りやすいんです。今回もその作業が重要だったと思います。三木監督は音楽がめっちゃ好きで、むしろその話ばかりしてました。“こういう曲にしてほしい”みたいな直接的な話はなくとも、監督の中の曲のイメージは伝わってきたし、自分としても作りやすかったですね。」(あいみょん)

 「あいみょんが書いてくれて本当によかったなぁって思います。あいみょんって、いろんな人たちとリンクできるような、いろんな顔を持った女の子たちを曲で表現してると思うんです。今回は三木監督が書いた“ふうか”っていう女の子の言いたいこととか、考えていることを歌に乗せてくれた。監督も“あいみょんの曲があったから一本筋が通った”ってずーっとおっしゃってました。本当にその通りだと思うし、とにかく感謝してます。」(吉岡)

 疾走感ある8ビートと骨太バンド・アンサンブルに埋もれることなく、透き通った歌声を伸びやかに発する吉岡。一度聴いただけで耳から離れなくなる抒情的なメロディ・ラインには、昭和歌謡からの影響も公言するあいみょんのセンスが光っている。

 「第一声目の腹から叫んでる感じがすごくかっこよかったし、(デモ音源に入っているあいみょんの仮ヴォーカルが)イイ声だなぁって思ったのが第一印象でした。パッションを感じる声というか。パッションって本当に大事だと思っていて、想いが入っていれば入っているほど良い音楽だと感じるんです。私は聴いていてバックボーンが見えた時にその曲を大好きになることが多いんですけど、この曲はまさにそんな感じ。聴いてすぐに“あ、好き!”みたいな。それに後半の歌詞が、自分が台本を読みながら思っていたこととすごく合致していて嬉しかったです。あいみょんの歌ってるデモ音源は毎日聴いていたし、今でも元気がなくなった時に聴きます(笑)。」(吉岡)

 同時に、かなり苦労したという歌入れについてはこう語る。

 「あまり言いたくないんですけど、レッスンの時から“声が出ない”って絶望してたんです。地声が結構低いので、高い音が出なくて。とりあえず仮レコしようって言われた時は本当にイヤでした(笑)。最初のレコーディングの時も、歌うことの難しさを改めて実感しましたね。とにかく緊張しました。アフレコとかはしたことあるんですけど、全然別次元で。」(吉岡)

 「音域がすごく高いところだったんですよ。作った私でもギリなくらい。監督からは“(吉岡に)無理をさせたいから”と言われていたので。最初に里帆ちゃんの音域はこのくらいですっていうデータもいただいたんですけど、 “正直あれは無視していい”って言われて、“相当高いと思うんですけど大丈夫ですかね”って聞いても、“いや、無理させるから大丈夫”って。」(あいみょん)

 プライベートでも親交があるという吉岡とあいみょん。取材中も頻繁に顔を見合わせ、仲睦まじそうに笑い合っていた。そしてお互いの印象について語る様子は、どこか誇らしげ。

 「あいみょんって人は嘘がない人です。思った時に思ったことを話すし、ライブのMCでも、ちゃんと自分で感じたことを自分の言葉で表現してる。音楽を作る人たちって皆さんそうだと思うんですけど、自分の言葉をちゃんと持っていて、それがたくさんの人たちにしっかり届いてる。“私のほうがもっと早くからあいみょんの良さに気づいてたし”とかちょっと思ったりするんですけど(笑)。でも、いろんな人があいみょんの曲を聴いてるのを見るとすごく嬉しくなります。自分の好きな人が褒められるのって嬉しくないですか?“めっちゃ素敵な彼氏じゃん”って言われる感じとちょっと似てる。“あいみょんイイよね”って言われると“イイでしょ?”みたいな。私が胸を張るようなことではないんだけど(笑)。」(吉岡)

 「私も里帆ちゃんをテレビで見たりすると、“見た?吉岡里帆。まぁ私、曲書いたんですけどね?”みたいな(笑)。自分のほうが一歩近いんだぞってアピールをする。でも、テレビとかで見る姿はやっぱりかっこいいですね。落ち着いてるし。声も素敵だなって思います。耳に入ってきてめちゃくちゃ心地よい声の持ち主ですよね。だから、歌声も聴けて嬉しかったですし、これだけとは言わず、今後も女優として音楽と絡んでいってほしい。今回の曲はギターも難しかっただろうし、歌も大変だったと思うので、ふうかを演じるのが里帆ちゃんでよかったです。」(あいみょん)

 お互いの活動をリスペクトし合っている二人だからこそ、単なるコラボに留まらない相乗効果が生まれたのかもしれない。今をときめくミュージシャンと女優がそれぞれの感性を注ぎ込んだ“ふうか”という女の子は、表現の結晶体とも言うべき稀有なキャラクターとなったのだ。

 「こういうこともできるんだなって自信にはなりました。楽曲提供は何度かしてきたけど、自分ではない誰かに歌ってもらうことは初めてだったし。」(あいみょん)

 「ギターも歌も初めてだったので、自分の得意なステージで戦うこと以外の挑戦の仕方を学んだというか。みんな初めは挑戦者なんだって思ったし、新しいことに果敢に挑戦していく気持ちが大事だなって勉強になりました。」(吉岡)

 映画『音量を上げろタコ! なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』は10月12日より全国ロードショー。

Interview by Takuto Ueda

◎公開情報
映画『音量を上げろタコ! なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!』
2018年10月12日(金)より全国公開
監督・脚本:三木聡
出演:阿部サダヲ、吉岡里帆、千葉雄大、麻生久美子、小峠英二(バイきんぐ)、片山友希、中村優子、池津祥子、森下能幸、岩松了、ふせえり、田中哲司、松尾スズキ
主題歌:SIN+EX MACHiNA「人類滅亡の歓び」(作詞:いしわたり淳治 作曲:HYDE) / ふうか「体の芯からまだ燃えているんだ」(作詞・作曲:あいみょん)

(C)2018「音量を上げろタコ!」製作委員会


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