【インタビュー】映画『影踏み』山崎まさよし “俳優”と見られることに「腹をくくった」 尾野真千子 “薄幸役”に自信「見せてやろうじゃない!」

2019年11月13日 / 15:58

 「半落ち」「64-ロクヨン-」などの横山秀夫の同名小説を実写映画化した、孤高の泥棒が事件を解き明かす異色の犯罪ミステリー『影踏み』で、プロの窃盗犯として生きる真壁修一役で主演を務めた山崎まさよしと、修一と恋仲の久子役で共演した尾野真千子。本作で初タッグを組んだ2人に、互いの印象や撮影時のエピソードのほか、山崎には役者を続ける理由を、尾野にははまり役ともいえる薄幸女性を演じる上での思いなどを語ってもらった。

 真壁は、住人が寝静まった民家で盗みを働く「ノビ師」と呼ばれるすご腕の窃盗犯だが、ある夜、侵入した家で就寝中の夫に火を放とうとする妻を止めた矢先、仕組まれたようにやってきた刑事に逮捕されてしまう。2年後、出所した真壁は、久子の制止を振り切り、自身を「修兄ィ」と慕う若者・啓二(北村匠海)と共に、あの夜の隠された真実に迫っていく…。

山崎まさよし(左 ヘアメイク:三原結花(M-FLAGS)/スタイリスト:宮崎まどか)と尾野真千子

-山崎さんは篠原哲雄監督の『月とキャベツ』以来14年ぶりの長編映画主演ですが、オファーを受けたときのお気持ちは?

山崎 『月とキャベツ』と同じ監督・スタッフなので断る理由がなく、二つ返事で引き受けました。逆に、このスタッフが集まって別の人を主演に据えていたら、「なんで俺やないねん!」ってなりますよね(笑)。

-そもそも、山崎さんが役者業を続けている理由は何でしょうか。

山崎 ウィキペディアで自分の名前を引いたら「ミュージシャン」「俳優」って書いてあるんです。10数年前は、数えるぐらいの作品しかやっていないし、「俳優」は取った方がええんちゃうかなって思っていたんです。でも、デビューから四半世紀にわたって芸能界で生きてきて、自分の見られ方に腹をくくった方がええんちゃうかなってなったんですよ。それに加えて、今回は条件がそろっていて、断る理由もなかったので引き受けました。

-芝居に対する魅力も感じていますか。

山崎 それは経験があまりないので分からないです。ただ、芝居がうまくいって、監督からOKをもらったら、「やった! 今のよかったんか?」とうれしくなります(笑)。

-今回はアウトローだけれども、人間味のある真壁を丁寧に演じられていましたが、どのように役と向き合い、役作りをされましたか。

山崎 例えば、刑事や検察官、医者や弁護士といった役を僕が演じてもリアリティーがないけど、泥棒を「自分の腕一本で生きてきた職人気質の男」と捉えるのであれば、ミュージシャンである自分でも演じられる気がしました。役作りは、演技のスキルがないのに作り込み過ぎるのは怖いので、あえてしませんでしたが、真壁を突き動かす情念や過去に対する葛藤については考えていました。

-篠原監督からはどのような演出を受けましたか。

山崎 「どうしますか?」と聞いても、逆に「山ちゃん、どうしたい?」と言われることの繰り返しでしたね。結局自分で考えて出しても、「それはないな」って言われたり、編集でカットされたり…。みんながどうしていいか分からなくなるときってあるんですよ。でも、これが映画なんだと思ってやるしかなかったです。

-尾野さん演じる久子は、保育士の仕事を続けながら、ノビ師の修一を愛し続ける女性ですが、出演を決めた理由は何でしょうか。

尾野 脚本に引かれたことはもちろんですが、「山崎まさよしさんと芝居ができるって面白いやん!」と思ったのが決め手でした。

-実際に共演されていかがでしたか。

尾野 ミュージシャンだからなのか、普通の役者とは違いました。お芝居がストレートで、作られていない正直さがあって好きです。すてきな感性にズキュンと来ました(笑)。

-久子のように薄幸の女性を演じることが多いですが、尾野さん自身は関西ノリで明るい性格ですよね。このような女性を演じるときはどのような心持ちなのでしょうか。

尾野 自分と真逆の女性役はやりやすいです。やりがいもあり、「見せてやろうじゃない!」という気持ちになるので、性悪女や人を殺す役は楽しんでやっています。逆に、自分に似ている女性を演じる方がなぜかしっくりこないので、コメディーとかは苦手です。

-役作りは事前にされる方ですか? それとも現場の空気を感じながら感覚で作っていく方ですか。

尾野 感覚です。だって山崎まさよしという人がどんな人か分からないから、役を作っていってもひっくり返されると思うんです。なので、普段からなるべく作らず、現場で「そういう感じでやられるんですね」と相手を見ながら構築していきます。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

高橋一生、平山秀幸監督「アクションはもちろん、人間ドラマとしてもちゃんと娯楽性を持っている作品に仕上がっていると思います」「連続ドラマW 1972 渚の螢火」【インタビュー】

ドラマ2025年10月20日

 1972年、本土復帰を間近に控えた沖縄で、100万ドルの米ドル札を積んだ現金輸送車が襲われ行方を絶った。琉球警察は本土復帰特別対策室を編成。班長には、警視庁派遣から沖縄に戻って来た真栄田太一が任命される。班員は、同級生でありながら真栄田を … 続きを読む

オダギリジョー「麻生さんの魅力を最大限引き出そうと」麻生久美子「監督のオダギリさんは『キャラ変?』と思うほど(笑)」『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』【インタビュー】

映画2025年10月17日

 伝説の警察犬を父に持つオリバーとそのハンドラーを務める鑑識課警察犬係の青葉一平(池松壮亮)のコンビ。だが、なぜか一平だけにはオリバーがだらしない着ぐるみのおじさん(オダギリジョー)に見えており…。  この奇想天外な設定と豪華キャストが繰り … 続きを読む

【映画コラム】初恋の切なさを描いた『秒速5センチメートル』と『ストロベリームーン 余命半年の恋』

映画2025年10月17日

『秒速5センチメートル』(10月10日公開)  1991年、春。東京の小学校で出会った遠野貴樹(上田悠斗)と転校生の篠原明里(白山乃愛)は、互いの孤独を癒やすかのように心を通わせていくが、卒業と同時に明里は栃木に引っ越してしまう。  中学1 … 続きを読む

大谷亮平「お芝居の原点に触れた気がした」北斎の娘の生きざまを描く映画の現場で過ごした貴重な時間『おーい、応為』【インタビュー】

映画2025年10月16日

 世界的に有名な天才浮世絵師・葛飾北斎。その北斎と長年生活を共にし、自らも絵師“葛飾応為”として名をはせた娘・お栄の生きざまを描いた『おーい、応為』が10月17日から全国公開となる。劇中、北斎(永瀬正敏)の弟子の絵師“魚屋北渓”として知られ … 続きを読む

黒崎煌代 遠藤憲一「新しいエネルギーが花開く寸前の作品だと思います」『見はらし世代』【インタビュー】

映画2025年10月15日

 再開発が進む東京・渋谷を舞台に、母の死と残された父と息子の関係性を描いた『見はらし世代』が10月10日から全国公開された。団塚唯我のオリジナル脚本による長編デビュー作となる本作で、主人公の蓮を演じた黒崎煌代と父の初を演じた遠藤憲一に話を聞 … 続きを読む

Willfriends

page top