「2人の主人公・金栗四三と田畑政治をつなぐ重要な役。皆さんにきちんとついていきたい」仲野太賀(小松勝)【「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」インタビュー】

2019年8月25日 / 20:50

 ロサンゼルスオリンピックでの日本選手団の活躍に刺激を受け、故郷・熊本で再び走り出した金栗四三(中村勘九郎)。その前に現れたのが、四三に憧れる青年・小松勝だ。共に九州一周の旅に出た2人は以後、師弟関係を結び、激動の昭和を歩んでいくこととなる。物語後半のキーマンとなる小松を演じるのは、「八重の桜」(13)などの大河ドラマに出演し、現在も数々の作品で活躍する若手俳優の仲野太賀。熱望していた本作出演の裏話、小松役に懸ける意気込みなどを聞いた。

小松勝役の仲野太賀

-出演が決まったときのお気持ちは?

 メチャクチャうれしかったです。実は、制作発表があったときから出演したくて、個人的に「いだてん」の関係者という関係者に、手当たり次第に会いに行っていたんです。直接的に「出たい!」とは言わず、「どんな物語か」、「どんな役があるのか」、「撮影はいつか」と聞いて回って、「楽しみにしています!」と(笑)。でも、ことごとく「詳しいことは言えない」、「すごいことになる」と含みのある話をされるばかりで…。そのうち、「どうやら思いが届きそうだ」という気配が漂ってきたので、事務所の方と「スケジュールを空けておきましょう。絶対に来るので」と話し合っていたら、本当に話が来て…。だから、本当にうれしかったです。

-そこまで出演を熱望した理由は?

 僕はもともと、宮藤官九郎(脚本家)さんの作品が大好きで、そのチームで大河ドラマをやる。しかも題材はオリンピック。絶対に面白いに決まっている。「これは大変なことになる。絶対に出なきゃ」という気持ちでした。

-小松勝役の印象は?

 「いだてん」には、金栗四三と田畑政治(阿部サダヲ)という2人の主人公がいて、さらに落語のパートもあります。小松勝は、それらをつなぐキーになる、とても重要な役。ここまでスタッフ、キャストが必死に紡いできた物語をひとつにつなぐわけですから、「下手なことはできない」と思いました。

-小松勝と金栗四三の師弟関係を、どんなふうに見ていますか。

 小松にとって金栗先生は尊敬すべき憧れの存在です。ただ、そんな人の指導を受けたからといって、浮かれているわけでもありません。もちろん、最初はそういう気持ちもありますが、鍛えられていく中で、同じランナーとして、「金栗先生に負けたくない」という気持ちが芽生えてくる。一緒に走るシーンでも、先生が先を行っていたら、必死に走って追い越す、そうすると、また先生が追い越して…という感じで。そういう「追いつ、追われつ」みたいなせめぎ合いを楽しむのが、小松と金栗先生の師弟の形なのかなと。その中で、かつての金栗先生を思わせる部分が出せたら…と思っています。

-小松の走り方はどのように生まれたのでしょうか。

 走り方はとても大事なので、マラソン指導担当の金哲彦さんがフォームを考えてくれました。金栗さんのフォームを基に、歩幅やピッチ、上体の使い方を研究し、時代に合わせて進化しつつ、2人の師弟感が出るような感じになっています。

-金栗さんと一緒に走る場面も多いようですね。

 金栗先生と一緒に走る場面は何度も登場しますが、周囲の街の風景や情勢はその都度変わっていきます。例えば、オリンピックが近づくとにぎやかになったり、戦争が近づくにつれ、兵隊の数が増えたり…。でも、街の風景が変わっても、金栗先生と小松の中にあるものは変わらない。ただひたすらオリンピックを目指す、金メダルを取る。そこは揺るぎません。戦争の気配も感じてはいますが、それまで積み上げてきたものがあるから、「絶対オリンピックに行く!」と信じる気持ちの方が強い。僕としては、そこをうまく表現したいと思っています。

-金栗四三役の中村勘九郎さんと共演した感想は?

 勘九郎さんがスタッフと家族のように接する姿を見ていたら、「これが大河ドラマに主演する人なんだ」と実感しました。勘九郎さんが現場に入るだけで、空気がふわっと明るくなるんです。その存在感がとてもすてきで…。自分が一番大変なはずなのに、僕のような役者に対してもフラットに接してくださって、とても優しい方ですし。カッコいいな…と。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】実話を基に映画化した2作『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』『栄光のバックホーム』

映画2025年11月29日

『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』(12月5日公開)  太平洋戦争末期の昭和19年。21歳の日本兵・田丸均(声:板垣李光人)は、南国の美しい島・パラオのペリリュー島にいた。漫画家志望の田丸はその才能を買われ、亡くなった仲間の最期の雄姿を遺族 … 続きを読む

氷川きよし、復帰後初の座長公演に挑む「どの世代の方が見ても『そうだよね』と思っていただけるような舞台を作っていきたい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年11月29日

 氷川きよしが座長を務める「氷川きよし特別公演」が2026年1月31日に明治座で開幕する。本作は、氷川のヒット曲「白雲の城」をモチーフにした芝居と、劇場ならではの特別構成でお届けするコンサートの豪華2本立てで贈る公演。2022年の座長公演で … 続きを読む

岸井ゆきの「夫婦の“切実さ”が描かれている」宮沢氷魚「すごくやりがいがありました」すれ違っていく夫婦役で初共演『佐藤さんと佐藤さん』【インタビュー】

映画2025年11月28日

 大学で出会った佐藤サチと佐藤タモツはたちまち意気投合し、一緒に暮らし始める。ところが卒業後、弁護⼠を⽬指すタモツは司法試験に失敗。独学を続けるタモツに寄り添うため、サチも司法試験に挑むが、数年後、合格したのはサチだった。結婚、出産を経て弁 … 続きを読む

28歳で亡くなった阪神タイガースの元選手の実話を映画化! 松谷鷹也「横田慎太郎さんのことを知っていただきたい」前田拳太郎「誰かの背中を押す作品になるはず」『栄光のバックホーム』【インタビュー】

映画2025年11月28日

 プロ野球、阪神タイガースの将来を担う選手として期待されながらも、21歳で脳腫瘍を発症して引退、その後も病気と闘いながら講演会活動などを続け、2023年に28歳で亡くなった横田慎太郎の生きざまを描いた『栄光のバックホーム』が、11月28日か … 続きを読む

吉高由里子「忘れかけていたことをいきなり思い出させてくれる」 念願の蓬莱竜太と初タッグ パルコ・プロデュース2025「シャイニングな女たち」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年11月28日

 吉高由里子が2022年の「クランク・イン!」以来、3年ぶりに舞台主演を果たす。吉高が挑むのは、日常に潜む人間の葛藤や矛盾を丁寧にすくい取り、鋭い視点の中にユーモアを織り交ぜる作風で共感を呼んできた蓬莱竜太が描く新作舞台、パルコ・プロデュー … 続きを読む

Willfriends

page top