【インタビュー】『アラジン』作曲アラン・メンケン「今回の僕のベイビーは『スピーチレス』です」

2019年5月30日 / 10:00

 「千夜一夜物語」の「アラジンと魔法のランプ」を原案に、自分の居場所を探す貧しい青年アラジンと、自由に憧れる王女ジャスミン、そしてランプの魔人ジー二―の運命を描いて大ヒットを記録したディズニーのアニメーション映画『アラジン』が新たに実写映画化され、6月7日から全国公開となる。アカデミー歌曲賞に輝いた「ホール・ニュー・ワールド」、陽気な「フレンド・ライク・ミー」などおなじみの曲が新たなアレンジで登場する。本作の他にも数々の名曲を作曲したアラン・メンケンに話を聞いた。

作曲家のアラン・メンケン

-アニメ版(92)から舞台版を経て、27年ぶりの実写での映画化です。前回で完成させた音楽を、今回はどのように考えてアレンジしたのでしょうか。

 オリジナルのアニメ版とは変化をつけて差別化をしたいと考えました。アニメ、舞台、実写と、それぞれにメディアが違いますが、実写版では監督が王様です。最初にガイ・リッチーが監督をすると聞いたときには「ガイ・リッチーがミュージカルを? どんな感じになるのだろう」と思いました。「魔法のじゅうたんを銃で撃ち落としたりするの…」というのは冗談ですが(笑)、今回の製作の過程でいろいろなことを発見しました。とてもワクワクしましたが、作業は大変だったし、曲のアレンジに関しては試行錯誤を繰り返しました。「うまくいくのかな」と不安を感じたこともありましたが、結果的にはうまくいきました。今回の僕の主な命題はジャスミンのための新たな曲を作ることでした。「もうスピーチレスではない。口はつぐまない」という彼女の声が、現代的な意味を持って観客に届くようにしなければなりませんでしたが、想像以上にいいものができたと思い、今はホッとしています。

-では、そのガイ・リッチー監督の演出をどう思いましたか。

 見ての通り「終わり良ければ全て良し」という感じです。これだけCGやVFXが使われると「これは一体どうなるんだろう」と思う瞬間もありましたが、ガイにはちゃんと完成形が見えていたのでしょう。何より見終わったときに「とても面白い」と思いました。実は、ガイは「観客に爆発的なサプライズを与えたいので、最初に手りゅう弾を投げたい」と言い出したんです。僕は「手りゅう弾ってどういう意味だろう」と考えてしまいました(笑)。でも、ある意味、新曲の「スピーチレス」を“音楽的な手榴弾”だと捉えることもできますし…。ガイとしては作品全体のアレンジを現代風にしたいという思いがあったようです。多分、彼はもともとミュージカルのファンではなかったと思います。でも、この映画を作ることで、彼も僕も進化しました。その結果がこの映画に表れていると思います。

-新曲「スピーチレス」はジャスミン役のナオミ・スコットの歌声をイメージしながら作ったのでしょうか。

 僕は俳優をイメージして曲を書いたことは一度もありません。もちろんその人が歌いやすいようにキーは選びますが、考えるのはキャラクターとストーリーについてです。僕は自分のことを、家を設計する建築家だと思っていますが、その家を買ってくれる人がクライアントだとは思っていません。その家(映画音楽)にはいろんな人が住みますが、その家の設計は自分が行うという考えを持っています。

-「王は男でなくともよい」「女性にとって結婚が最良の方法ではない」と歌う「スピーチレス」は、オリジナルのアニメ版から27年後の、女性の生き方の変化が象徴されていると思いました。そうしたことを踏まえながら曲を作ったのでしょうか。

 もちろんです。この曲は女性のためのエンパワーメント(力、元気、励まし)を象徴する曲にしたいと初めから思っていました。もちろん、曲作りはいろいろなことを考えながらしますが、映画の中の曲は、ストーリーにはまらなければならないし、物語をサポートするようなものでなくてはなりません。「スピーチレス」は、まず一つの楽曲として書き下ろしました。初めは映画の最後で使うつもりでしたが、それでは遅過ぎる。また冒頭で使うのも早過ぎると思いました。なので、劇中では前半と後半で半分に分けて使っています。そうすると映画のスコア(総譜)全体を支えてくれることに気付きました。最も心配していたのは、有機的にそこに曲があるように感じてもらえるか、ということでしたが、うまくいきました。今回の僕のベイビーは「スピーチレス」です。

-「うまくいった」と感じたのはレコーディングの時点でしょうか。

 完成試写のときです。そこまでの製作過程では、映画のシーンが入ったものを見ていなかったので、シーンと曲がうまくマッチしているのかが分かりませんでした。なので「ちょっと異質かな。アレンジがポップ過ぎるかな」と心配していました。ただ、大切なのは観客の反応です。映画はまだ公開前なので、いくら僕が「うまくいった」と思っても、観客がどう思うかが分かるまでは心配です。でも試写を見た各国の人たちの感想を聞いて少し安心しました。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

パク・ジョンミン「一人二役は想像以上に大変でした」韓国のヒットメーカーが「ガス人間」に続いて送り出すサスペンス・ミステリーで熱演『顔 -かお-』【インタビュー】

映画2026年8月28日

 日本でも話題を集めた『新感染 ファイナル・エクスプレス』(16)やエグゼクティブプロデューサー&脚本を務めたNetflix「ガス人間」も大ヒットした韓国のヒットメーカー、ヨン・サンホ。その最新監督作『顔 -かお-』が8月28日から全国公開 … 続きを読む

【映画コラム】「生き残る」とは何か『ラスト・サバイバー』『シェルター』が描く極限の人間ドラマ

映画2026年8月28日

『ラスト・サバイバー』(8月28日公開)  謎のパンデミックによって人類の大半が死滅し、生き残った者たちが奪い合い、殺し合う荒廃した世界。  パイロットのヒッグ(ジェイコブ・エロルディ)は、元軍人のバングリー(ジョシュ・ブローリン)と共同戦 … 続きを読む

安田章大「僕が演じられたのは、のんちゃんのおかげ」のん「安田さんとの出会いは衝撃でした」自閉スペクトラム症の兄とその妹役で初共演『平行と垂直』【インタビュー】

映画2026年8月28日

 自閉スペクトラム症(ASD)の大貴は、清掃の仕事に就き、周囲のサポートを受けながら自立した生活を送っている。一方、妹の希は、心理カウンセラーとして働きながら大貴を支えて暮らしていた。長い間、変わることなく続いてきた兄妹の日常は、希の結婚話 … 続きを読む

井桁弘恵、幼少期のバレエの経験が今の「度胸」に 「バレエの魅力をもっと伝えたい」「SWAN -Ballet cross Reading-」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年8月28日

 ドラマ「そこから先は地獄」(日本テレビ)で主演を務め、映画『教場 Requiem』など数々の映画やドラマに出演、「おしゃれクリップ」(日本テレビ)ではMCも務める井桁弘恵。9月4日から上演される「SWAN -Ballet cross Re … 続きを読む

早瀬憩「撮影中は朝子と一心同体で生きた感覚がありました」感動のヒューマンサスペンスで入魂の演技『私はあなたを知らない、』【インタビュー】

映画2026年8月27日

 新垣結衣と共演した『違国日記』(24)で鮮烈な印象を残し、今年は「サバ缶、宇宙へ行く」、『モブ子の恋』など、続々と出演作が放送・公開される注目の若手俳優・早瀬憩。その最新出演作『私はあなたを知らない、』が、8月28日から全国公開される。 … 続きを読む

page top