【インタビュー】『バンブルビー』トラビス・ナイト監督 「10歳の自分が『見たい』と思ったものが、30年後にできました」

2019年3月18日 / 10:00

 『トランスフォーマー』シリーズの起源にさかのぼった『バンブルビー』が3月22日から公開される。1980年代を舞台に、心に傷を抱えた少女チャーリー(ヘイリー・スタインフェルド)と、地球外生命体バンブルビーとの関係に焦点を当てた本作のトラビス・ナイト監督が来日し、インタビューに応じた。

トラビス・ナイト監督

-日本を舞台にした『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』(16)に続いて、本作も日本が発祥のものです。これは偶然でしょうか。また、監督にとって日本はどういう存在なのでしょうか。

 「偶然はない」と言った人がいます。私の家族はみんな日本から影響を受けています。父は若い頃日本に来て、その時の経験がNIKEの創業に結びつきました。私も父と一緒に、8歳のときに初めて日本に来て、世界観が変わりました。建築物、音楽、食べ物、漫画…それまで見てきたものと全てが違っていました。その時、漫画を何冊か買ってアメリカに帰ったのですが、その中に「子連れ狼」があって、それが『KUBO~』につながりました。トランスフォーマーも日本生まれですが、それらは偶然ではないと思います。私はいろいろな意味で日本とつながっていると感じていますし、日本を愛しています。そうした思いが結果としてつながったのではないかと思っています。

-今回のキャラクターのイメージは、アニメシリーズに似ていると思いました。それはご自分が子どもの頃に見ていたイメージを大切にしたからでしょうか。

 今回は“始まりの物語”ということで、時代を80年代に設定したことは理にかなっていると思いました。ここ10年の『トランスフォーマー』シリーズの監督はマイケル・ベイだったので、彼の感性や感覚が生かされていました。また、これまでトランスフォーマーのファーストジェネレーションは大画面では描かれていなかったので、もし私が監督をやるとしたら、アニメ番組が持っていた感覚や、シンプルなデザインのものを大画面で見せたいと思いました。つまり、10歳のトラビス・ナイトが「見たい」と思ったものが、30年後にできたということです。

-本作のプロデューサーの一人でもあるスティーブン・スピルバーグは、『レディプレイヤー1』(18)のときに、「80年代はイノセントで楽観的な時代だった」と語っていました。そうしたテイストが本作にもあったと思いますが。

 私は80年代に子ども時代を過ごしたので、映画的に最も影響を受けたのがスピルバーグの映画で、感動して泣いた初めての映画は『E.T.』(82)でした。主人公の少年とE.T.との関係性がとても美しく描かれた映画だと思いました。スピルバーグが設立したアンブリンの映画には総じてそうした美しさがあったし、見る者を泣かせて笑わせて、そしてあっと驚かせるという性質がありました。もちろん冒険も描かれていましたが、その中心には必ずハートがあるというのがアンブリンの映画だったと思います。私はそれらに影響され、インスピレーションを受けて育ちました。『トランスフォーマー』シリーズには、アクション面のベイとハート面のスピルバーグという2人の父親がいます。今回は、その両方を織り交ぜながら、そこに私のタッチを入れたいと考えました。

-今回、ベイやスピルバーグから何かアドバイスはありましたか。

 スピルバーグは、私は彼が作った映画からたくさんのインスピレーションを受けているので、それだけがアドバイスです(笑)。マイケル・ベイからはとても意味深い話を聞きました。彼が若い頃に、製作者のジェリー・ブラッカイマーから「プレッシャーを感じていると思うけど、この映画は君のものだ。この映画を守りなさい。周りの人からいろいろなことを言われ、それに影響されたり、流されたりしがちだけど、君以外にこの映画を守れる人はいないのだから」と言われたそうです。とてもシンプルな考え方ですが、私もいろいろなピンチに陥ったときに、その言葉を思い出して奮起しました。

-80年代カルチャーのお気に入りは? また、今回は80年代のヒット曲が効果的に使われていましたが、何かこだわりはありましたか。

 80年代の映画、テレビ、コミック、音楽の全てが、今の自分の一部を形成したと思います。音楽には、言葉にはできないけれど、それを通して何かを語ったり、気持ちを伝えることができるという効力があります。今回はダリオ・マリアネッリが作曲したものと、当時のヒット曲を使いましたが、キャラクターの気持ちを代弁したり、作品のテーマも的確に伝えるなど、とてもいい効果を発揮してくれました。例えば、チャーリーが一生懸命にフォルクスワーゲンを直そうとする場面は、なかなかフィットする曲が見付からなかったのですが、スティーブ・ウィンウッドの「ハイヤー・ラヴ」を使ったら、あのシーンが生き生きとしたものになりました。私自身はザ・スミスが大好きです(笑)。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

井内悠陽「自分を貫くことは大切。でも、時には柔軟性も必要」 映画『爆上戦隊ブンブンジャー』で映画初主演を飾る20歳の新星【インタビュー】

映画2024年7月27日

 7月26日から公開中の『爆上戦隊ブンブンジャー 劇場BOON! プロミス・ザ・サーキット』は、テレビ朝日系で大人気放送中のスーパー戦隊シリーズ第48作「爆上戦隊ブンブンジャー」初の劇場版だ。本作でブンブンジャーのリーダー、ブンレッド/範道 … 続きを読む

田中真弓「70歳、新人のつもりで頑張っています」憧れだった朝ドラレギュラー出演 連続テレビ小説「虎に翼」【インタビュー】

ドラマ2024年7月26日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「虎に翼」。新潟地家裁三条支部に赴任し、娘・優未(竹澤咲子)と2人だけの暮らしに苦労する主人公・佐田寅子(伊藤沙莉)を助けるため、かつて花江(森田望智)の家で女中として働き、第7週で故郷の新潟に帰った稲が … 続きを読む

真彩希帆、憧れの「モーツァルト!」でコンスタンツェ役 「この作品を見に来て良かったと感じていただきたい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年7月26日

 「才能が宿るのは肉体なのか?魂なのか?」という深遠なテーマをベースに、その高い音楽性と重層的な作劇で“人間モーツァルト”の35年の生涯に迫る、ミュージカル「モーツァルト!」が、8月19日から帝国劇場にて上演される。2002年の日本初演以来 … 続きを読む

【週末映画コラム】歴史の「if」を描いた2本『もしも徳川家康が総理大臣になったら』/『お隣さんはヒトラー?』

映画2024年7月26日

『もしも徳川家康が総理大臣になったら』(7月26日公開)  新型コロナウィルスがまん延した2020年。首相官邸でクラスターが発生し、総理大臣が急死した。かつてない危機に直面した政府は、最後の手段として、歴史上の偉人たちをAIホログラムで復活 … 続きを読む

鈴木梨央「特撮映画の魅力を実感しました」子役時代から活躍してきた若手俳優が、ファンタジー映画に主演『カミノフデ ~怪獣たちのいる島~』【インタビュー】

映画2024年7月25日

 高校生の時宮朱莉は、謎の男・穂積(斎藤工)と出会い、特殊美術造形家だった亡き祖父・時宮健三(佐野史郎)が制作を望んだ映画『神の筆』の世界に入り込んでしまう。怪獣ヤマタノオロチによって、その世界が危機にひんしていることを知った朱莉は、同級生 … 続きを読む

Willfriends

page top