【インタビュー】『響 -HIBIKI-』月川翔監督「平手友梨奈さんと2人で話し合い、響のキャラクターを突き詰めていきました」

2019年3月3日 / 10:00

-その結果生まれた平手さんのお芝居はいかがでしたか。

 映画の撮影では、カメラ位置などの都合で同じ場面を何度も撮りますが、普通は同じ芝居を繰り返すうちに新鮮さが失われていきます。でも彼女は、何回やっても鮮度が変わらない。まるで時間を巻き戻しているかのようでした。だから、北川さんや小栗さんのような安定した役者さんを相手にした場合は、彼女も寸分違わず同じ芝居をする。反対に、毎回芝居が変わる相手の場合はその都度、それに合わせたリアクションを返す。それがまるで、その瞬間を本当に生きているかのように自然なんです。「役を生きる」とは、まさにこのことだな…と。

-それは、俳優としての平手さんのポテンシャルが高かったということでしょうか。

 以前、あるベテラン俳優の方がインタビューで「主役を演じることがあったら何もするな。周りがやってくれるから」と話しているのを聞いたことがあります。まさに今回の平手さんはこれだなと。余計なことはせず、ただ響としてそこに存在する。あとは周りがやってくれる。意識してそうしたのかは分かりませんが…。その意味では、陰の立役者は響の担当編集者・花井ふみを演じた北川さんだったと思います。

-その理由は?

 北川さんはナチュラルな芝居もできる方ですが、今回は大きく受ける芝居をして、響を立ててくれました。プロレスラーが技を大きく受けて、相手を強く見せるのに似ています。しかも北川さんは、自分がオールアップして、現場に来る必要がなくなった後も様子を見にきてくれたんです。まるで、作家の世話をする編集者の役そのままに「この子は自分が面倒を見るんだ」と言わんばかりで。そのせいか、平手さんは北川さんのことをとても慕っていて、今も連絡を取り合っているようです。

-そうやって作り上げたこの映画は、月川監督にとってどんなものでしたか。

 ひょっとしたら僕も、この映画の登場人物のように、響に生き方を救われたのかもしれません。これまで、お客さんやプロデューサーが求めるものと自分のやりたいことの間で、折り合いをつけて映画を撮ってきました。独り善がりにならず、お客さんの求めるものをきちんと見せる。それが自分の持ち味だと思っています。でも今回は、『響 -HIBIKI-』という作品がどうあるべきかということだけに集中して作ることができました。そんな感覚は、誰に頼まれるでもなく映画を作っていた自主製作の頃以来です。こういう作り方を忘れてはいけなかったな…と。それに気付くことができたのは、この作品と響のキャラクター、そして平手友梨奈という女優と向き合ったおかげだと思っています。

(取材・文/井上健一)

(C)2018 映画「響 HIBIKI」製作委員会 (C)柳本光晴/小学館

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

北香那「ラーメンを7杯くらい食べたことも」天野はな「香那ちゃんのバレエシーンは見どころ」 「ラーメン」と「クラシック・バレエ」が題材のコメディーで共演 NHK夜ドラ「替え玉ブラヴォー!」完成会見

ドラマ2025年12月19日

 12月19日、東京都内のNHKで、1月5日からスタートする夜ドラ「替え玉ブラヴォー!」の完成会見が行われ、主人公・千本佳里奈(ちもと かりな) 役の北香那、佳里奈の親友・二木優美(ふたぎ ゆみ) 役の天野はながドラマの見どころを語ってくれ … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(9)浅間神社で語る「厄よけの桃」

舞台・ミュージカル2025年12月18日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。  前回は、玉田家再興にあたり「三つ … 続きを読む

石井杏奈「人肌恋しい冬の季節にすごく見たくなる映画になっています」『楓』【インタビュー】

映画2025年12月17日

-実際に福士さんと共演してみていかがでしたか。  とてもすてきな方で、待ち時間にちょっとお話できたんですけど、すごく温厚な方でした。お芝居に関してはすごく真面目でストイックで、「このせりふはこうやって言ってみるのもありかも」というような優し … 続きを読む

染谷将太 天才絵師・歌麿役は「今までにない感情が湧きあがってきた」 1年間を振り返る【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年12月15日

-ご自宅でも絵の練習をされたそうですね。  台本が来るたびに絵を担当するチームとの打ち合わせがあり、練習用の絵が並んだ計算ドリルのようなプリントを数十枚いただくので、それを自宅に持ち帰り、宿題のように繰り返し描いて練習していました。 -歌麿 … 続きを読む

「べらぼう」ついに完結! 蔦重、治済の最期はいかに生まれたか?「横浜流星さんは、肉体的にも作り込んで」演出家が明かす最終回の舞台裏【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年12月14日

-治済役が大きな話題となった生田さんについて、撮影を通じて感じた俳優としての魅力を教えてください。  生田さんで印象に残っているのが、何事にも動じないことです。常に泰然自若として、変なクセを出さない。ある意味、視聴者に想像させるようなキャラ … 続きを読む

Willfriends

page top