「勘九郎さんとはずっと一緒にやってきた仲なので、兄弟を演じられることがうれしい」中村獅童(金栗実次)【「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」インタビュー】

2019年2月24日 / 20:50

-実次は後に四三の妻となるスヤと一緒の場面も多いですが、演じる綾瀬はるかさんの印象は?

 先日、綾瀬さんと話をしていたら「獅童さんとの共演が一番多いかも」と言っていました。確かに、NHKでは「精霊の守り人」(16~17)や、「八重の桜」(13)、さらにさかのぼると『ICHI』(08)という映画でもご一緒させていただいています。キャリアを重ねて、どんどんいい女優になっていますが、いい意味で女優らしくない。「昔からこのままだったんだろうな…」と思わせる、あの清潔感とピュアな雰囲気はなかなか出せるものではありません。

-第3回で、四三を乗せた汽車をスヤが自転車で追い駆ける場面も話題になりました。

 運動神経がものすごくいいですよね。昔の自転車なので乗りにくい上に、ブレーキの効きも良くない。そんな自転車で、リハーサルを含めて何度もあのスピードで汽車と並走するわけですから。しかも、あの汽車は撮影用に走らせたわけではなく、実際に1日1往復だけ運行しているもの。だから、本番は一発で決めなければいけない。それをきちんと決められる運動神経と役者魂は、本当に素晴らしいと思います。

-宮藤官九郎さんの脚本の魅力は?

 一番はテンポの良さではないでしょうか。台本を読んでいると、ポン、ポン、ポンとテンポよく読める。だから、芝居をするときもテンポには気を付けています。物語は四三のパートがあったり、落語のパートがあったり、視点がいろいろと移っていきますが、それがきちんと伏線としてつながっている。台本を読んでいても、「ここでこうつながるのか」と驚く部分がたくさんあります。長い歴史を持つ大河ドラマの中では斬新な手法ですが、それも一つの挑戦。そういった作品に巡り合えるのは、僕にとっても喜びです。

-実次を演じる上で心掛けていることは?

 基本的には、最初に台本を読んだときに感じた気持ちを大切にしています。台本自体がとても面白く、感動的な場面でもどこか笑える作りになっている。ですから、変にウケを狙うようなことはせず、台本に忠実に演じる。それが一番です。例えば、第3回の東京に旅立つ四三を見送るシーンでは、いろいろな方に鼻水がすごい、と言われましたが、あれも狙ったものではないんです。あの場面で湧き上がる感情を大切に演じたらああなっただけで。自分でもあんなに鼻水を流して泣くとは思っていませんでした。そもそも、狙ってあんなに鼻水は出せませんし…(笑)。まさに一期一会のお芝居です。

(取材・文/井上健一)

浅草を歩く四三(中村勘九郎・左)と実次(中村獅童)

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