【インタビュー】『メリー・ポピンズ リターンズ』エミリー・ブラント「今回は、私たちなりの“次章のメリー・ポピンズ”になっています」

2019年1月30日 / 10:00

 ディズニーが55年の時を経て、名作を現代によみがえらせた『メリー・ポピンズ リターンズ』が2月1日から公開される。本作でミステリアスな魔法使いメリー・ポピンズを演じたエミリー・ブラントが来日し、インタビューに応えた。彼女が語る映画製作の舞台裏とは…。

メリー・ポピンズを演じたエミリー・ブラント 【写真=堤博之】

-約半世紀ぶりに製作された名作の続編ですが、ご自身にとって前作の『メリー・ポピンズ』(64)はどういう存在でしたか。また、演じる上でプレッシャーはありましたか。

 前作は6、7歳のときに初めて見ましたが、とてもファンタスティックで、まるで魔法にかかったようなうれしさを感じました。同時に、安心感も得ました。それは多分、メリー・ポピンズにはしつけに厳しい面があり、混沌とした状況の中に彼女が秩序をもたらしたからだと思います。「うまくいかなくても、彼女が正してくれるんだ」と思ってホッとしたのを覚えています。
 今回演じるに当たって、もちろん最初は怖さや不安がありました。何と言っても前作は、作品自体も、ジュリー・アンドリュースのパフォーマンスもアイコンですから。でも、メリー・ポピンズは、とても演じがいのあるキャラクターなので、きっと楽しんで演じることができるだろう、という喜びの方が勝りました。

-表情やしぐさなどで、前作のジュリー・アンドリュースを参考にしたものはありますか。

 今回、役を引き受けてから、改めて前作を見直すことはしませんでした。それよりも、原作を読み直してみました。すると、原作と、前作で描かれたメリー・ポピンズの人物像が少し違うことに気付きました。原作の彼女は、よりエキセントリックで、失礼な物言いで、厳しさとユーモアを併せ持っていて、いい意味で“未知の存在”でした。そうした部分を参考にして、今回のメリー・ポピンズ像を作り上げていきました。ですから、今回は、私たちなりの、“次章のメリー・ポピンズ”になったわけです。ジュリーのメリー・ポピンズは不滅の存在で、まねをするなどおこがましいと思ったので、あえてそうしました。

-では、今回メリー・ポピンズを演じる上で、軸になったものは?

 メリー・ポピンズが持っている両面性、ということを強く意識しました。彼女は一見、厳しいところもあり、気難しくて、失礼な物言いをしたりもしますが、その反面、自分の見掛けを気にして鏡を見たりするシーンがあるように、とても人間らしさを感じさせるキャラクターでもあります。彼女は空を飛ぶこともできるけれど、しっかりと地に足が付いています。マジカルでありながら現実的な部分もある。そうした両面性を見つけて、演じることを心掛けました。ロブ・マーシャル監督とも「彼女の人間性が垣間見える瞬間が大切だと思う」という話をしました。彼女は二次元的なスーパーヒーローではなく、“超人”なので、人間的なレイヤー(層)を見つけることが大切だと思いました。

-アニメーションとの共演シーンはどのように撮ったのでしょうか。

 今回、マーシャル監督にとって、手書きの2Dアニメーションを使うということは不可欠な要素でした。それは前作のスピリットに対するノスタルジーの喚起と、前作にオマージュを捧げるために必要だったのです。私が「いいなあ」と思ったのは、前作に関わった、引退したアニメーターたちが呼び戻されて、今のスタッフにアドバイスをしていた場面です。私たち演じる側は、全てグリーンバックで演技をしました。一度目はペンギン役の小柄なダンサーたちと一緒に、次はテニスボールと私たち、最後は私たちだけと、同じシーンを3回撮影しました。それをアニメーションと合成したわけです。撮影には2週間前後かかりましたが、そのかいはあったと思います。

-リン=マニュエル・ミランダ、ベン・ウィショー、メリル・ストリープら、共演者の印象は? 個人的には、ディック=バン・ダイクのパフォーマンスに一番驚きましたが。

 もちろん、撮影現場でもディックのパフォーマンスには、みんなが驚きましたよ!(笑)。リン=マニュエルと共演できたことは本当に良かったと思います。彼は、自然に希望を感じさせてくれるような、ポジティブなスピリットや、はつらつさを感じさせるエネルギーを持っています。一緒に仕事をしていてもとても楽しい人です。メリルとは何と3度目の共演でした。私が女優としてのキャリアを積む中で、いつも相談に乗ってくれる存在ですし、とても聡明で楽しい人でもあります。今回の共演もとても楽しかったです。
 そして、ディックですが、「ドアがぶっ飛ぶほど」の衝撃でした。本当に素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました。彼と同じ空気を吸えただけでも幸運だと思いました。彼は『メリー・ポピンズ』という作品の魂を象徴する存在です。彼は92歳ですが、いまだに童心を持っているし、はつらつさや生命力を感じさせてくれます。彼がデスクの上でタップダンスを始めたときに「この人ほど童心を体現できる人はいない」と改めて思い、とても感動しました。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【Kカルチャーの視点】「ユミの細胞たち」の原作者、ウェブトゥーン作家イ・ドンゴン

インタビュー2025年11月17日

 韓国文化の“今”を再構築し続けるKカルチャー。今回は、デジタル空間で物語を紡ぐウェブトゥーンの世界に焦点を当てる。平凡な会社員ユミの頭の中で繰り広げられる細胞の物語――。2015年に連載を開始した「ユミの細胞たち」は、全512話で32億ビ … 続きを読む

尾上眞秀「お母さんやおばあちゃんが喜んでくれました」寺島しのぶの長男が舘ひろしとの共演で映画初出演『港のひかり』【インタビュー】

映画2025年11月14日

 日本海沿岸の小さな漁師町を舞台に、元ヤクザの漁師・三浦と目の見えない少年・幸太という、年の離れた孤独な2人の絆を描くヒューマンドラマ『港のひかり』が、11月14日から全国公開中だ。  主演に舘ひろしを迎え、『正体』(24)の俊英・藤井道人 … 続きを読む

『物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家の物語』(7)神々がすむ土地を語る

2025年11月14日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。 ▼玉田永教と神道講釈  銭湯の湯け … 続きを読む

ハリウッド・リメイク決定!インド発ノンストップ・アクション!「日本の皆さんにも楽しんでいただけるはず」ニキル・ナゲシュ・バート監督『KILL 超覚醒』【インタビュー】

映画2025年11月13日

 40人の武装強盗団が、ニューデリー行きの特急寝台列車を襲撃! 刀を手に乗客から金品を奪う強盗団のリーダー、ファニ(ラガヴ・ジュヤル)は、大富豪タークルとその娘トゥリカ(ターニャ・マニクタラ)を人質に取り、身代金奪取をもくろむ。だがその列車 … 続きを読む

上白石萌歌「小さなお子さまから大人の方まで幅広く届いてほしいと思います」『トリツカレ男』【インタビュー】

映画2025年11月11日

 何かに夢中になると他のことが目に入らなくなってしまうジュゼッペ(声:佐野晶哉)は、街の人々から「トリツカレ男」と呼ばれている。ある日、ジュゼッペは、公園で風船売りをしているペチカに一目ぼれし、夢中になるが…。作家・いしいしんじの同名小説を … 続きを読む

Willfriends

page top