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「第38回の台本を読んだときは、つらくて泣いてしまいました」柏木由紀(西郷園)【「西郷どん」インタビュー】

 新政府軍と旧幕府勢力が激突した戊辰戦争。その戦いは、西郷吉之助(鈴木亮平)の故郷・薩摩で暮らす女性たちとも無縁ではない。その1人が、西郷家の次男・吉二郎(渡部豪太)の妻・園だ。戊辰戦争で命を落とした吉二郎の遺志を継ぎ、西郷家を支えていくこととなる。演じるのは、鹿児島県出身で人気アイドルグループAKB48のメンバーとして活躍する柏木由紀。夫・吉二郎との悲しい別れを経験した第38回の舞台裏、西郷園という役に込めた思いなどを聞いた。

西郷園役の柏木由紀

-第38回は園の夫・吉二郎が亡くなる悲しいエピソードでした。台本を読んだときの感想は?

 その場面がくることは、撮影中も頭の片隅にありましたが、実際に台本を読んだら、とてもつらくて泣いてしまいました。しかも、台本を頂いたのは撮影の1カ月ぐらい前だったのですが、毎日寝る前に繰り返し読んでいたら、朝晩つらい気持ちになってしまって…。他のお仕事をしていても、そのことがずっと頭から離れず、大変でした。とはいえ、そんな中にも、薩摩隼人らしく「戦(いくさ)働きがしたい」という吉二郎さんのカッコよさを感じて、園はこの人と一緒になることができて幸せだったろうなと、改めて思いました。

-実際に演じてみていかかでしたか。

 台本を読んでいるときは、正直、気持ちが追いつかず、「戦に出たいという旦那さんの背中を、こんなふうに押せるものかな?」と思っていました。だけど、撮影のときに吉二郎さんの顔を見て、「自分も戦に行きたい」という思いを知ったら、「この人が勇気を出して初めてやりたいと言ったことを応援できるのは、自分しかいない」という気持ちが自然と湧いてきました。なので、亡くなったときも、「自分が送り出してしまった」という後悔よりも、「よく頑張りました。お疲れさまでした」という感情があふれてきました。

-改めて、故郷・鹿児島に縁のある作品で大河ドラマ初出演を飾った感想は?

 放送が始まる前から、地元がものすごく盛り上がっていることを知っていて、私も第1回から放送を見ていたんです。そんな作品に出演できるとは思ってもいなかったので、お話を頂いたときはとても驚きましたが、やっぱりうれしかったです。西郷園という役も、昔から母や周りの人たちを見て感じていた“薩摩おごじょ”らしい理想の女性だなという印象を受けました。

-理想の女性ということで、園に共感する部分も多いのでしょうか。

 多いです。嫁いできた以上は西郷家の役に立ちたいという気持ちを持って演じていますが、私自身もみんなを引っ張っていくより、他の人を応援したり、手伝ったりする方が性格的に合っています。だから、演じていて無理をしている感じがしません。

-テレビで見ていた西郷家の中に入ってみた感想は?

 最初にセットに入ったときは「ああ…西郷家だ…!」と、感極まるものがありました(笑)。他の皆さんは既に1年ぐらい撮影されている中に加わるので、とても緊張していたのですが、皆さんが明るく入りやすい雰囲気を作ってくださったおかげで、自然となじむことができました。今はとても楽しく撮影させていただいています。

-他の出演者の方からアドバイスをもらうこともあるのでしょうか。

 クランクインしてすぐ、鈴木(亮平)さんが「何か分からないことや気になることがあったら、遠慮せずに何でも言ってください」とおっしゃってくださったのが心強く、今も支えになっています。お芝居に関しても、戊辰戦争の回では「こういう気持ちを持つと、もっと自然にこのシーンに入り込めるよ」と、園目線のアドバイスを頂きました。そういうふうに、常に共演者のことまで目を配っていらっしゃる鈴木さんには、尊敬の念しかありません。

-吉二郎役の渡部豪太さんとは、どんなふうに夫婦の空気感を作って行きましたか。

 普段は全く緊張しない方なのですが、今回は初日を迎える前日、ものすごく緊張してほとんど寝られなかったんです。オーディションなんかよりずっと、人生で一番緊張しました(笑)。だから、初日のことはほとんど記憶にないぐらいで…。最初はそんな状態が続いたのですが、渡部さんが声を掛けてくださったおかげで、私も「全然寝ていないんです」みたいなことを打ち明けることができて、ずいぶん楽になりました。

-そこから徐々にという感じでしょうか。

 具体的に「こうしよう」と話をしたわけではありませんが、撮影の空き時間に2人でたあいもないことを話している中から…という感じです。本番でも、具体的なせりふがない場面ではアドリブで会話することが多いのですが、そのときも、渡部さんが「園」と声を掛けてくださったり、子どもを見ているときに目を合わせたり…。そういうちょっとしたことの一つ一つが夫婦としての距離感につながっています。そういう意味では、いろいろと渡部さんにリードしていただきました。

-お話を伺っていると、柏木さんが現場になじんでいく様子が、西郷家にお嫁に来た園と重なって見えます。撮影を続ける中で、吉二郎亡き後、西郷家を背負っていく心構えは生まれてきましたか。

 確かに、来客も多いし、子どももどんどん増えていくので、気が付けばいつの間にか迎え入れることが多くなっています(笑)。そんな中でも、特に大きいのは子どもの存在です。子どもの面倒を見ているうちに、勝手にたくましくなって、西郷家を支えたいという気持ちが自然と強くなってきました。

-西郷家にはこれから信吾(錦戸亮)の妻・清(上白石萌音)なども加わってきますね。

そうですね。お嫁に来る気持ちはよく分かるので、私が皆さんにしていただいたように、新しく来る人になじみやすくしてあげられたらいいなと思っています。

-これから明治編を迎えるに当たって、園の見どころを。

 吉二郎さんが一緒にいたときの園は、かなり控え目で、吉二郎さんに同意するだけ、みたいなことが多かったのですが、吉二郎さんが亡くなった後は、どんどん頼もしく、たくましくなっていきます。子どもたちがさらに増え、大きくなっていくに連れ、西郷家をしっかり支える園を見ていただけるようになると思うので、楽しみにしていてください。

(取材・文/井上健一)

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