【インタビュー】「ルーヴル美術館展 肖像芸術-人は人をどう表現してきたか」高橋一生「想像の可動域は常に広く取っておきたい」

2018年6月22日 / 18:42

-具体的には?

 表現された結果のもの、例えば絵画にしても、無形の僕らの芝居においても、(作者としては)「伝わっただろうか」とか「分かってもらえただろうか」といった不安な気持ちがあるものです。けれど改めて「どう捉えてもらっても構わない」という感覚になりました。さらに「期待しなくなった」というか…。そうしないと、きっと自分の「初期衝動」ではないものを出してしまう可能性が出てくるし、間違って伝わってしまっても困ってしまう。「初期衝動」で出たものの方が人に伝わりやすいと思うんです。(人の)意見は大事ですけれど、いろんな意見を聞いているうちに自分ではないものや、本題ではないものが出てきてしまうことは、とても苦しいことだと思っているので。それこそ「モナ・リザ」とか「美しきナーニ」を見て、作者は「どういう思いだったんだろう?」と考えたりもしますが、鑑賞する側としても、自分から出す側(役者)としても、共有を前提としなくなりました。

-役者として感じる部分はたくさんあったようですね。

 はい。想像の可動域みたいなものを常に広く取っておきたいとは思いました。自分が表出するときも、受け取るときも、答えを一つに絞らないようにしたいです。しばらくたってから気づくこともあると思いますので。

-今回は「顔」にフォーカスしたものが多く展示されていますが、表現活動において参考になったこと、これから挑戦してみたいことはありますか。

 「顔」にフォーカスを当てると、逆説的なこともできると思うんです。例えば、ものすごく怒っている顔をしているのに、実は喜んでいる…という表現がきっとどこかにある。そういった逆説的な表現も、自分の中に生かせるんじゃないかと思いました。ものすごく説明的に見えて、実は何も説明していないとか…。そういった、見てくださる方にも面白がってもらえるものを自分で作り出していきたいです。いい意味で期待を裏切っていくスタイルもあると思います。

(取材・文・写真/山中京子)

アントワーヌ=ジャン・グロ作「アルコレ橋のボナパルト(1796年11月17日)」の前に立った高橋一生

「ルーヴル美術館展 肖像芸術-人は人をどう表現してきたか」

【東京展】会期 2018年 5月30日(水)~9月3日(月)
場所 国立新美術館 企画展示室 1E(東京・六本木)
東京展展覧会HP http://www.ntv.co.jp/louvre2018

【大阪展】会期 9月22日(土)~2019年1月14日(月・祝)
場所 大阪市立美術館
大阪展展覧会HP  http://www.ytv.co.jp/louvre2018/

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

ファーストサマーウイカ「それぞれの立場で“親と子”という普遍的なテーマについて、感じたり語り合ったりしていただけたらうれしいです」日曜劇場「19番目のカルテ」【インタビュー】

ドラマ2025年8月17日

-主演の松本潤さんとお芝居で対峙(たいじ)してみての印象を教えてください。  松本さんは、演じられている徳重先生と共通して、とても包容力のある方だと感じます。現場でもオフでも、相手を受け止めて認めた上で、的確かつ愛を持ってアプローチされるの … 続きを読む

橋本愛 演じる“おていさん”と蔦重の夫婦は「“阿吽の呼吸”に辿り着く」【大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」インタビュー】

ドラマ2025年8月16日

-そんな魅力的な蔦重を演じる横浜流星さんの座長ぶりはいかがでしょうか。  横浜さんは、蔦重さんをどう演じるか、常に誠実に真面目に考えていらっしゃいます。そういう空気がスタッフやキャストにも伝播し、しっかり取り組もうという空気感が現場全体に生 … 続きを読む

山里亮太「長年の“したたかさ”が生きました(笑)」 三宅健太「山里さんには悔しさすら覚えます(笑)」STUDIO4℃の最新アニメ『ChaO』に声の出演【インタビュー】

映画2025年8月15日

-ネプトゥーヌス国王役の三宅さんはいかがでしょうか。人魚という設定の上に、娘と接するときと、それ以外では雰囲気がだいぶ違いますが。 三宅 ネプトゥーヌス国王は、「屈強で、威厳があり、でも娘に甘い」。最初にその3つのファクターを大事に、と伺い … 続きを読む

ウィリアム・ユーバンク監督「基本的には娯楽作品として楽しかったり、スリリングだったり、怖かったりというところを目指しました」『ランド・オブ・バッド』【インタビュー】

映画2025年8月14日

-リアム・ヘムズワースとラッセル・クロウを演出してみていかがでした。  2人とも自分が演じるキャラクターを見いだすための努力を惜しまず、そのキャラクターの中にある真実や誠実さを見つけてくれます。さらにそのキャラクターにエンタメ性や楽しさも持 … 続きを読む

【物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家ストーリー】(1)“たまたま”が導いた講談の道

舞台・ミュージカル2025年8月14日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。 ▼みなさん、こんにちは  日本の伝 … 続きを読む

Willfriends

page top