「島での幸せな生活と過酷な体験は、皆さんが知る“西郷隆盛”に変わっていくために必要な期間」鈴木亮平(西郷吉之助)2【「西郷どん」インタビュー】

2018年5月13日 / 12:00

 敬愛する主君・島津斉彬(渡辺謙)の死とともに窮地に陥った吉之助は、ついに故郷・薩摩から遠く離れた島へ送られることとなった。どん底に落ちた吉之助は、今後、奄美大島、沖永良部島と二度の島流しに遭いながらも、運命の女性・愛加那(=とぅま)との出会いなどを経て、大きく成長していく。果たして、その先に待ち受けるものとは? 主演の鈴木亮平が、第18回以降の見どころ、斉彬に対する思いなどを語ってくれた。

西郷吉之助役の鈴木亮平

-島流しに遭ったときの吉之助の心境はどんなものだったのでしょうか。

 絶望と自己嫌悪です。自分1人だけが生き残ってしまったという自己嫌悪の思いは、とてつもなく大きい。殿(=斉彬)もいない、自分は何も成し遂げられなかった、全部失敗した。そんなことから最初、気持ちは死に向かっています。吉之助さん自身も「自分は土の中の死んだ骨だ」と言っていますが、まさに死人です。

-そんな吉之助を演じてみた感想は?

 全く別のドラマのような気分です。つらさも感じないぐらい感情がゼロの状態で、島の自然の美しさや、人の優しさに気付くことなく、現地の風習を見下している。出された料理に手もつけず、ひっくり返してしまうのですが、そんなことは今までの吉之助さんからは考えられません。でも、そういうことが自然にできてしまう。自分の中に生まれてくるものが、今までの吉之助さんとは全く違ったので驚きました。

-そこから立ち直っていくきっかけになるのが、愛加那との出会いでしょうか。

 愛加那さんと出会い、自分が「民のために」と思ってやってきたことが、島の人たちからの搾取の上で成り立っていたことに気付かされます。吉之助さんは、“自分のため”という理由では再生できません。人のために、この状況を何とかしたいと思った時に再生していく。そのきっかけを与えてくれたのが、愛加那さんでした。そこが大きなポイントになっていると思います。

-民のために尽くそうとしてきた吉之助は、愛加那から「私たちは民のうちに入っていなかった」と言われます。この言葉は吉之助に大きな影響を与えそうですね。

 そうですね。僕が一番好きなせりふですが、まさに衝撃です。ずっと「民のために」と思って働いてきた吉之助さんは、そういう搾取の構図があることを知らなかった自分を責める。そこで「こんなことがあってはならない」と思ったことをきっかけに、目の前のことだけでなく、それが間接的にどんな影響を与えるかということを、大きな視点で考えるようになったのだと思います。

-愛加那役の二階堂ふみさんと共演した感想は?

 すごいです。感受性の塊という印象ですが、それだけでなく、客観的な視点からいろいろなアイデアも出しつつ、真面目にお芝居と向き合う。その姿勢に本当に驚かされます。年齢は僕よりもかなり下ですが、引っ張っていただいているような感覚もあり、その方が正解な気がしています。二階堂さんの感性やお芝居に染まることが、吉之助さんが島に染まっていく過程にリンクすると思うので。

-吉之助の生涯において、島での生活はどんな意味を持つのでしょうか。

 皆さんが知っている、ぶれない、頼もしい、大人の“西郷隆盛”に変わっていくために必要な期間が、二つの島での幸せな生活と過酷な体験だったのではないかと。今の吉之助さんを見ていると、頼りなくて失敗ばかりなので、「本当に西郷隆盛?」と感じるかもしれませんが、島での生活がその大きな転換点になると思います。

-それに合わせて、鈴木さんのお芝居も変わってきそうですね。

 全然違うお芝居になっていると思います。「殿のために」と頑張っていた時代とは違って、いい意味でどんどん力が抜けていきますし、愛加那さんと結婚して子どもも生まれ、守るものを持ったことで強くなる。吉之助さんの成長をはっきりと感じていただけるのではないかと思います。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

原田琥之佑「この映画は、何でもあるけど、何にもないみたいなところが一番の魅力だと思います」『海辺へ行く道』【インタビュー】

映画2025年8月26日

 海辺の街に暮らす14歳の美術部員と仲間たちに起きたちょっと不思議なひと夏の出来事を小豆島でのロケで描く、横浜聡子監督の『海辺へ行く道』が8月29日から全国公開される。本作で主人公の高校生・奏介を演じた原田琥之佑に話を聞いた。 -最初に脚本 … 続きを読む

上田竜也&橋本良亮、舞台初共演を通して「絆はより強固になる」 音楽劇「謎解きはディナーのあとで」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年8月26日

 シリーズ累計500万部を突破する、東川篤哉による大ヒット小説「謎解きはディナーのあとで」が、舞台オリジナルストーリーで音楽劇として上演される。原作は、毒舌執事とお嬢様刑事が繰り広げる軽快なやりとりと本格的な謎解きが話題となり、2011年に … 続きを読む

青山貴洋監督「問診シーンが最大の課題に」日曜劇場『19番目のカルテ』【インタビュー】

ドラマ2025年8月25日

 体の不調を感じていても、何科を受診すべきか分からない…。そんな悩みを抱える人は少なくない。そうした現代の医療課題に向き合う存在が「総合診療医」だ。日曜劇場「19番目のカルテ」(TBS系)は、まさにその最前線で患者と向き合う医師たちの姿を描 … 続きを読む

中園ミホ 連続テレビ小説「あんぱん」は「やなせたかしさんが書かせてくださった」執筆を終えた脚本家が物語を振り返る【インタビュー】

ドラマ2025年8月22日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「あんぱん」。『アンパンマン』を生み出したやなせたかしと妻・暢の夫婦をモデルにした柳井のぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)夫婦の戦前から戦後に至る波乱万丈の物語は、いよいよクライマックスが近づいてきた。このタ … 続きを読む

森田剛「戦争と背中合わせの世界であるということは今も変わらない」 19世紀を代表する未完の戯曲に挑む パルコ・プロデュース 2025「ヴォイツェック」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年8月22日

 森田剛が主演する舞台、パルコ・プロデュース 2025「ヴォイツェック」が9月23日に開幕する。本作は、ドイツの劇作家ゲオルク・ビューヒナーが遺した未完の戯曲を、2017年にジャック・ソーンが翻案した作品を日本で初めて上演。冷戦下の1981 … 続きを読む

Willfriends

page top