【インタビュー】『レディ・プレイヤー1』スティーブン・スピルバーグ監督「皆さんを、空想と希望のある世界にいざないたかった」

2018年4月19日 / 11:11

-長い間映画を撮り続けている原動力は?

 いい質問ですが、自問するのは少し怖い気がします。もし答えがあったら、監督をするのを辞めてしまうかもしれません(笑)。本当に肉体が続く限り監督をしたいと思っています。私はとにかくストーリーを語ることが好きなのです。小さい頃、3人の妹に毎晩怖い話をしました。彼女たちが怖がって「きゃー」と言いながらベッドに入ると、それを聞いた父に「また怖い話をしたな。怖い話ではなく、いい話をしなさい」と怒られました。今、自分の子どもが7人いますが、四つある寝室を回って、それぞれ違う話をします。そんなふうに、私は常にストーリーを語っていたいのです。

-これまでさまざまなジャンルの作品を作ってこられましたが、監督作を決める基準はどこにあるのでしょうか。

 あまり意識はしていないと思います。潜在的なものでしょうか。例えば、この映画の編集をしているときに、『ペンタゴン・ペーパーズ』の台本を読みました。そして「これは現代にも通じる話じゃないか。まさに今の大統領が同じことをしている」と思い、語るべき義務を感じました。それが歴史的な物語を映画にするときの気持ちです。できれば、社会的な現実とSFの世界を行ったり来たりするのが理想です。ある意味、両極端ですね(笑)。
 歴史を扱う映画について言えば、その出来事の映像としてのイメージを作り出すことが好きです。私が学生だった頃、歴史を学ぶには、暗記したり、読んで覚えるしかありませんでした。でも、聞いたものよりも、見たものの方がインパクトは強いと思います。例えば、『アミスタッド』(97)、『プライベート・ライアン』(98)、『リンカーン』(12)、『ブリッジ・オブ・スパイ』(15)などは、公開後に、学校の教材として生徒たちが見ています。彼らも歴史を映像として見れば決して忘れないんですね。

-この映画の主人公もそうですが、ファンボーイ(オタク)は、どこかで大人にならなければならない時を迎えます。大人になるには自分の好きなものを捨てなければならないと思いますか。

 私もまだ大人になっていませんが、映画監督をしているので何とかなっています(笑)。この映画のような場合は、カメラの後ろからではなく観客の一員として撮っています。でも『ペンタゴン・ペーパーズ』のような映画を撮るときは、カメラの後ろで撮っています。歴史物のときは歴史の解釈者として、ちゃんと事実を確認しながらリサーチをします。でもこの映画の場合は、想像の世界ですから、歴史的な事実などは一切関係なく、とても開放感を覚えながら作っています。『ペンタゴン・ペーパーズ』は大人として作らなければならない映画ですが、今回は、子どもの心のままで作りました。だから無理に捨てる必要はないと思いますよ。

(取材・文・写真/田中雄二)

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