「人々が助け合うこの時代の熱さを伝えたい」竜星涼(綿引正義)【「ひよっこ」インタビュー】

2017年5月29日 / 08:15

 高度成長期の日本を舞台に、茨城から集団就職で上京した有村架純演じるヒロイン谷田部みね子の成長物語を描いたNHKの連続テレビ小説「ひよっこ」で、失踪したみね子の父親捜しを手伝う警察官・綿引正義役を演じている竜星涼。朝ドラ初出演の喜びの胸中と役者としての今後の抱負を語った。

 

綿引正義役の竜星涼

綿引正義役の竜星涼

-朝ドラ初出演ですが、オーディションに合格した時の気持ちは?

 山形の亡くなったおばあちゃんが唯一見ていた番組が朝ドラだったので、出られると聞いた時はすごくうれしかったです。もう少し早ければ、生きているうちに見せられたのですが、天国から見守ってくれていると思います。

-オーディションは今回が3回目。朝ドラ出演へのこだわりを感じます。

 やはり、田舎に住んでいる方や、早寝早起きのおじいちゃん、おばあちゃんたち、誰もが見ているようなドラマに一度は出たいという気持ちはありました。

-念願がかなっての朝ドラで演じる役は“警察官”ですが。

 最近は警察官役(ドラマ「小さな巨人」、映画『22年目の告白-私が殺人犯です-』など)が多いので、時代や部署によっていろいろと違うことが分かります。警察の知識は誰よりもあるんじゃないかな(笑)。

-今回はどういう役づくりをしましたか。

 警察の指導で綿引の立場や警察官としての所作を習いましたし、普通の現代劇とは違い、時代劇のニュアンスがあるので、吉永小百合さんが若いころに出ていた作品のように、ゆっくり目のテンポではっきりとしゃべるように意識しています。それから、綿引がただの“いい人”で終わるのではなく、人々が助け合うこの時代の熱さを伝え、「今の時代にこんな人いる?」「自分はそこまで他人を思いやれるか?」と考えてもらえたらうれしいな…と思いながら演じています。

-ご自身とリンクするところはありますか。

 自分で言うのもなんですけど、素直で真っ直ぐで、ちょっとした熱さを内に秘めているところですかね(笑)。でも、こういう役柄が結構多いんです。それは自分の中のそういう部分を感じてくれているからなのかな…。

-では、みね子に対して親身になる綿引の気持ちも理解できますか。

 男はああいう無鉄砲な感じの子はほっとけないんじゃないかな。何かに一生懸命に頑張っている子は応援したくなるし、いいな…と思います。

-山形出身だそうですが、茨城弁は難しいですか。

 茨城弁は(山形弁と違って)あまり抑揚がないので、ついなまり過ぎるところを抑えたり、逆に抑え過ぎてしまったり、ニュアンスが難しいです。ただ、僕はほぼ東京育ちなので自分発信で山形弁は出ません。母親は家で僕と二人で会話するときは大分なまっているし、耳は覚えているので、相手の方言に乗っかることはできますけど。

-キャストには脚本の岡田惠和さんのファンが多いですね。

 僕も岡田さんの作品は好きだから、朝ドラでやれることは幸せです。でも、とにかくせりふが長くて、ほとんど一連で撮られるので本当に大変です。急遽、撮影が入って台本を見たら(綿引が)すごくしゃべっていて「ヤバイ、どうしよう…」みたいな。そんなうれしさと焦りといろんなものが交差しています(笑)。

-印象的なシーンはありますか。

 乙女寮のメンバーや雄大と海で遊ぶシーンは、皆の前で歌ったし、ようやく(職務を離れて)楽しくワイワイできました。実はその前に撮った喫茶店のシーンで、アドリブで歌ったみね子が「綿引さんも」と誘ったんですが、そこでカットの声を掛けた監督がそのことを随分悔やんでいたそうで、海で歌うことになりました。僕自身、歌がうまいわけではないのですが、より下手な方が面白いと思って声を裏返らせて歌いました。

-有村さんとは同い年で、ドラマ「11人もいる!」(2011)以来の共演ですね。

 架純ちゃんの活躍はいい刺激になっていたし、現場で会った時に「久しぶり!」とポンと肩をたたいてくれた時はうれしかったです。(芸能界から)いなくなる人もいる中、変わらずに一生懸命やっている同世代同士、頑張って作品を良くしていこうと思いました。

-近年の朝ドラには“イケメン枠”があり、それを担う俳優の人気に火が付く傾向がありますが。

 「いい人」「格好いい」と思われるのは台本のおかげなので、そういう風に評価してもらえるなら、それは全て岡田さんの力です。

-朝ドラ出演がご自身にもたらす変化とは何でしょうか。

 見てもらえる場が増えたことは役者として大きい進展ですが、出演できたからといって変わったことはないです。どの現場でも「もっと準備できたかもしれない」「違うアプローチがあったんじゃないか」と反省しますけど、終わった後は「これが精いっぱいだった」と思って次に進むしかない。そうやって、一歩一歩でもちゃんと前に進めているんじゃないかなと思います。

-役者として着実にステップアップしている竜星さんの今後の目標は。

 いろいろな方と仕事をする中で、知識や技術は増えているので、それらを発揮できる場所があるうちはやるしかない。評価される仕事なので、どう評価されるかが今の自分の課題です。でも、警察官以外の役をそろそろやりたいかな…なんて(笑)。

(取材・文/錦怜那)


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

井之脇海「ものすごい達成感がありました」蔦重に見守られながら迎えた新之助の最期【大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」インタビュー】

ドラマ2025年9月4日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、快調に進行中。8月31日放送の第33回「打壊演太女功徳(うちこわしえんためのくどく … 続きを読む

坂東龍汰「この映画は絶対に映画館で見てほしいです。特にドラゴンライドのシーンは圧巻です」『ヒックとドラゴン』【インタビュー】

映画2025年9月4日

 ドリームワークス・アニメーションの代表作を実写映画化したドラゴンライド・アドベンチャー『ヒックとドラゴン』が9月5日から全国公開される。バイキングとドラゴンが争いを続けてきた島を舞台に、心優しいバイキングの少年ヒックと傷ついたドラゴンの交 … 続きを読む

小池栄子、45歳を目前に控えて見据える未来「小池栄子が出ているから見てみようかなと思ってもらえる存在でいたい」 劇団☆新感線「爆烈忠臣蔵〜桜吹雪 THUNDERSTRUCK」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年9月3日

 映画『八日目の蟬』で第35回日本アカデミー賞優秀助演女優賞、第85回キネマ旬報ベスト・テン助演女優賞などを獲得、2016年には舞台「グッドバイ」で読売演劇大賞最優秀女優賞に輝くなど、高い演技力で見るものを魅了する小池栄子。9月19日から開 … 続きを読む

間宮祥太朗「周囲に合わせようとせず、自分のペースを保つことを考えていた」“自分らしさ”の大切さを描くアニメ映画に声の出演『不思議の国でアリスと -Dive in Wonderland-』【インタビュー】

映画2025年9月2日

 ルイス・キャロルの名作『不思議の国のアリス』を日本で初めてアニメーション映画化した『不思議の国でアリスと -Dive in Wonderland-』が8月29日から全国公開中だ。  「自分らしさ」を出せず、就職活動に悩む大学生・安曇野りせ … 続きを読む

【映画コラム】夏の日の少年たちが頑張る映画『ベスト・キッド:レジェンズ』『蔵のある街』『海辺へ行く道』

映画2025年9月1日

『ベスト・キッド:レジェンズ』(8月29日公開)  北京でミスター・ハン(ジャッキー・チェン)からカンフーの指導を受けていた高校生のリー(ベン・ウォン)は、暴漢に兄を殺され母と共にニューヨークに移住する。  だがリーは、周囲やクラスメイトと … 続きを読む

Willfriends

page top