「直虎の周りに新しいタイプの男が現れた感じをしっかりと出したい」柳楽優弥(龍雲丸)前編【「おんな城主 直虎」インタビュー】

2017年5月28日 / 20:45

 第16回の初登場以来、幾度となく直虎(柴咲コウ)を助けてきた“旅の男”。その正体は、盗賊団の頭(かしら)、龍雲丸であった。今後、直虎と深くかかわっていくことになるこの男を演じるのは、2016年キネマ旬報ベスト・テン主演男優賞を受賞するなど、今勢いに乗っている柳楽優弥。満を持しての初出演となった大河ドラマに懸ける意気込みを聞いた。

 

龍雲丸役の柳楽優弥

龍雲丸役の柳楽優弥

-第16回で初登場した時のふんどし姿はインパクトがありました。

 ふんどしでの登場は初めてだったので緊張しましたが、すごく爽快でした(笑)。撮影に入って1週間ぐらいで、緊張の塊みたいな時期でしたが、初登場シーンは気合を入れたいと思っていたので、バッチリ入りました。ただ、西島(秀俊)さんが(『八重の桜』(13)で)ふんどし姿になった時はニュースになったんですが、僕の時はならなかったので悔しいですね。もうちょっと腹筋を鍛えておけばよかったです(笑)。

-大河ドラマ初出演の感想は?

 撮影に入って4カ月ぐらいですが、お互いの信頼関係が他の作品と比べて圧倒的に深いものになるんだなと実感しています。1年という期間はやっぱりすごい。ものすごくエネルギーを使うので、大河の主役をやったら当分お休みしていい気がします(笑)。

-現場で演じてみた印象はいかがでしょう。

 前半の空気感がある中に、派手なビジュアルの龍雲丸が途中から加わるということで、非常に緊張しました。盗賊団の頭ということもあり、他のキャストのことも考えて、僕がしっかりシーンを作っておかないといけないということもあったので。とはいえ、これまで人が亡くなることが多かった物語に、生命力あふれる龍雲丸と盗賊団が登場するので、常にエネルギッシュな存在でありたいと思っています。

-今まで大河ドラマにどんな印象をお持ちでしたか。

 おじいちゃんが大好きでよく見ていたので、僕はその横顔をずっと見ていました。感情移入して、泣いたり、怒ったりして、涙まで流していたので、びっくりしたことを覚えています。俳優になってからは、先輩がたくさん出ていたので、いろいろな人から話を聞いているうちに、大河のイメージがどんどん大きくなって、僕も出てみたいと思うようになりました。『許されざる者』(13)という映画で知り合った乗馬クラブの方からは、「大河の主役ができるから」と薦められて馬を買いました。

-すごい意気込みですね。その馬は今どのように?

 そんなに高い馬ではありませんけど(笑)。『許されざる者』の時の僕の役名の“五郎”という名前を付けて、群馬にいます。撮影がある間は無理ですが、行ける時には月に1回ぐらい泊りがけで乗りに行っています。姿勢が良くなる上に気合も入るし、いいことづくめなので、馬に乗るのは好きです。今のところ龍雲丸が馬に乗る場面はありませんが、いずれ機会ができた時のために、しっかりと練習しておきたいです。

-龍雲丸はどのような人物でしょうか。

 明るくてひょうきんな性格で、盗賊団の頭として自由に生きているように見えますが、実は過去に縛られている部分もあります。そういった過去にまつわる影の部分は、話が進むにつれて少しずつ明らかになっていきます。衣装も風貌も型破りで、武家社会の中で生きてきた直虎にとっては、今まで会ったことのないような男です。

-龍雲丸は直虎をどのように見ているのでしょうか。

 第一印象は「きれいな人とばったり出会った」という感じです。そのまま不思議な関係が続いた後、殿だったことが分かり、盗賊団を率いて現れたところで「力を借りたい」と言われ、「認められたのかな」と感じて一気に距離が近づきました。これからさらに、恋心のようなものも芽生えつつ、関係が深まっていくことになります。

-龍雲丸はドラマオリジナルの人物ですが、やりがいはありますか。

 勢いのあるキャラクターに加えて、衣装も型破りなので、非常にやりがいがあります。とはいえ、実在の人物と違ってより所となるものがないので、ものすごく想像力を膨らませなければなりません。実在の人物が多い大河ドラマでオリジナルの人物を演じる怖さも多少ありますが、そこは思い切り開き直ってやっています。

-役作りはどのように?

 最初に「寅さんみたいな人」という説明を受けたので、役を理解するために寅さんの映画を見まくりました。とても面白かったです(笑)。明るくて温かい人柄の一方で、シリアスな一面もある寅さんみたいな幅のあるキャラクターにできたら…と思っています。

-直虎の周りには今まで、小野政次(高橋一生)や井伊直親(三浦春馬)という男性がいました。演じる上で、この2人との違いは意識していますか。

 政次や直親は武家の人間なので、所作や動きに限界があります。それに対して、龍雲丸は所作指導の先生から「自由にしていい」と言われています。最初は、見た目が派手な上に動きまで自由だと、物語の邪魔になるのではないかと心配していました。だけど、違和感なく仕上がった映像を見て、余計なことは考えずに思い切り自由な状況を楽しもうという気になりました。今まで直虎の周りには、武家の男たちばかりだったので、新しいタイプの男が現れたという感じはしっかりと出していきたいです。

-同じ事務所の先輩でもある柴咲コウさんの印象は?

 今までも何度か共演しましたが、僕は柴咲さんのファンで今の事務所に入ったぐらいなので、これだけ長期間ご一緒できるのは光栄です。普段、俳優同士で作品について話し合う機会はあまりありませんが、みんなで食事した時にそんな話もできました。その時、この作品を良くしたいという気持ちが伝わって来て、テンションが上がりました。大河の主役は大変そうですが、そこで戦っている先輩の姿はカッコいいですね。

-ドラマに新たな風を吹かせたいという意気込みはありますか。

 もちろんです。ふんどし姿で初登場したのも、そうしろということですよね(笑)。意識し過ぎてはいませんが、龍雲丸や盗賊団が加わることで、新たな風を吹かせられるといいですね。

(取材・文/井上健一)


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

安田顕「水上くんの目に“本物”を感じた」水上恒司「安田さんのお芝居に強い影響を受けた」 世界が注目するサスペンスで初共演&ダブル主演「連続ドラマW 怪物」【インタビュー】

ドラマ2025年7月5日

 韓国の百想芸術大賞で作品賞、脚本賞、男性最優秀演技賞の3冠を達成した極上のサスペンス「怪物」。WOWOWが世界で初めてそのリメイクに挑んだ「連続ドラマW 怪物」(全10話)が、7月6日(日)午後10時から放送・配信スタート(第1話・第2話 … 続きを読む

TBS日曜劇場「19番目のカルテ」が7月13日スタート 新米医師・滝野みずき役の小芝風花が作品への思いを語った

ドラマ2025年7月5日

 7月13日(日)にスタートする、松本潤主演の日曜劇場「19番目のカルテ」(TBS 毎週日曜夜9時~9時54分)。原作は富士屋カツヒト氏による連載漫画「19番目のカルテ 徳重晃の問診」 (ゼノンコミックス/コアミックス)。脚本は、「コウノド … 続きを読む

南沙良「人間関係に悩む人たちに寄り添えたら」井樫彩監督「南さんは陽彩役にぴったり」期待の新鋭2人が挑んだ鮮烈な青春映画『愛されなくても別に』【インタビュー】

映画2025年7月4日

 第42 回吉川英治文学新人賞を受賞した武田綾乃の小説を原作にした鮮烈な青春映画『愛されなくても別に』が、7月4日公開となる。浪費家の母(河井青葉)に代わってアルバイトで生活を支えながら、奨学金で大学に通う主人公・宮田陽彩が、過酷な境遇を受 … 続きを読む

紅ゆずる、歌舞伎町の女王役に意欲「女王としてのたたずまいや圧倒的な存在感を作っていけたら」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年7月4日

 2019年に宝塚歌劇団を退団して以降、今も多方面で活躍を続ける紅ゆずる。7月13日から開幕する、ふぉ~ゆ~ meets 梅棒「Only 1,NOT No.1」では初めて全編ノン・バーバル(せりふなし)の作品に挑戦する。  物語の舞台は歌舞 … 続きを読む

【Kカルチャーの視点】異領域を融合する舞台芸術、演出家イ・インボの挑戦

舞台・ミュージカル2025年7月3日

 グローバルな広がりを見せるKカルチャー。日韓国交正常化60周年を記念し、6月28日に大阪市内で上演された「職人の時間 光と風」は、数ある韓国公演の中でも異彩を放っていた。文化をただ“見せる”のではなく、伝統×現代、職人×芸人、工芸×舞台芸 … 続きを読む

Willfriends

page top