「寡黙でぶっきらぼうだけど、ちょっと口を開くとユーモアがある男です」古谷一行(谷田部茂)【「ひよっこ」インタビュー】

2017年5月9日 / 08:15

 高度成長期の日本を舞台に、茨城から集団就職で上京した有村架純演じるヒロイン谷田部みね子が成長していく姿を描いたNHKの連続テレビ小説「ひよっこ」で、みね子の祖父・谷田部茂を好演している古谷一行。実に47年ぶり 2回目の朝ドラ出演となる古谷が、その胸中や共演者とのエピソードを語った。

 

谷田部茂役の古谷一行

谷田部茂役の古谷一行

-朝ドラ出演は1970年の「虹」以来ですが、オファーを受けた時のお気持ちは?

 楽しもうと思いました。年齢を重ねて、役者としての気持ちや演技がどういうふうに変化しているかも楽しみです。長い年月を改めて感じます。

-周囲からはどのような反応がありますか。

 さすが朝ドラですね。学生時代の友人から「風景が素晴らしい」「麦わら帽子が良く似合う」「あんなかわいい子(有村)と仕事ができていいね」「これから朝、元気をもらいたい」というメールをたくさんもらいました。

-実際にドラマをご覧になった感想は?

 ロケーションが素晴らしい。自然の風景がこの作品を支えていると改めて思いました。それから、キャラクター付けがいいですね。茨城の各家庭の登場人物には決めつけがなくて役者たちに任されている感じですが、乙女寮メンバーのキャラクターはしっかり決まっていて、それぞれが全く違う個性の中でせりふを言うから会話がすごく面白い!

-「たまにしゃべると毒舌だけど、一番家族を理解している」という茂役を演じる上で気を付けていることは。

 寡黙でぶっきらぼうですが、たまに口を開くとユーモアがある男です。お父ちゃんが出稼ぎで家にいないから「大黒柱にならなきゃ」「弱みを見せちゃいけない」という(気丈な)ところをベースに芝居をしています。

-茂は「若いころはかなりモテたらしい」という設定ですが。

 とはいってもそういうシーンがあるわけじゃない。僕がドラマ「金曜日の妻たちへ」(1983)や「失楽園」(97)とかで色っぽい役をしていたから、脚本の岡田(惠和)さんが(役紹介のところにしゃれで)つけ足しただけだと思っていますし、意識していないですよ(笑)。

-若手キャストは方言に苦労している様子ですが。

 方言はいいですよ。東京から近い茨城ですが、標準語とかなり違うから、しっかりやれば作品に厚みが出るし、その土地に息づいている人間らしくなる。僕は、茨城弁の先生に褒められていますが、羽田(美智子)ちゃんは茨城出身なのに一番注意されているかな。(ドラマの舞台の)北と(羽田の出身の)南とでは違うみたいだからかわいそうですね。

-主演の有村さんとは初共演ですが、どのような印象を持たれましたか。

 映画『リトル・マエストラ』(12)を見て、「いいな」と思っていた。現場では座長として(派手に)振る舞っていないし、「こういうシーンだから、こういう狙いでやってやろう」という感じがなく、すごくナチュラルに“みね子”を出してくるからリアリティーがあってすごくいいですよ。以前、「膨大なせりふだから大変だな」と声を掛けたら、「じいちゃんの方が少ないせりふで表現しなきゃいけないから大変だと思います」と優しいことを言ってくれました。

-息子の実役の沢村一樹さんはどうでしょうか。

 今回、初めてお会いしましたが、まぁ背が高くて近寄ってほしくないね(笑)。それから優しくて爽やかな青年。片方(古谷)が金田一耕助、片方(沢村)が浅見光彦。今回は謎解きがあるわけではないので、二人の探偵が仲良くやっています。

-他に気になるキャストはいますか。

 (小祝宗男役の)峯田(和伸)くんはおかしい。彼の出演作を何本か見ているし、息子(ミュージシャンの降谷建志)ともライブで一緒にやっていたようですが、とてもユニークだから「あの人、誰?」と話題になるんじゃないかな。現場では、そのシーンの撮影が終わる前から次のシーンのせりふをブツブツ練習するから「やめろよ!」となるけどね。それぐらい一生懸命やっていますよ。

-物語が始まる1964年は、どのような生活を送っていましたか。

 二十歳で俳優を目指して劇団「俳優座」の養成所に入ったころ。3年間、朝9時から夕方5時まで、芝居、座学、演劇史、フェンシング、バレエなどをみっちり勉強して、すごく楽しい時期でした。その後、劇団に入った23~29歳のころは、自分の役者としての才能を信じ切れずに苦しんだりもしたけれど、30歳過ぎにはそれも乗り越えたかな。

-劇中のみね子たちと当時の自分の生活を比較して感じることはありますか。

 僕は生まれも育ちも東京で、六本木をベースに生活していたから、集団就職の印象はほとんどなく、ドラマを見ていても東京とのギャップが随分あるものだなと驚きました。集団就職で働いて、給料のほとんどを田舎に送る生活は大変だっただろうし、強くないとできないですよ。

-最後に本作の見どころを教えて下さい。

 田舎でのんびり暮らしていた普通の女の子のみね子が、東京でいろんな経験をして育っていく成長物語だから、視聴者はみね子に感情移入できるんじゃないかな。岡田さんは音楽にもこだわりがあるから、ふんだんに出てくる当時のヒットソングも聞きどころです。

(取材・文/錦怜那)


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

尾上眞秀「お母さんやおばあちゃんが喜んでくれました」寺島しのぶの長男が舘ひろしとの共演で映画初出演『港のひかり』【インタビュー】

映画2025年11月14日

 日本海沿岸の小さな漁師町を舞台に、元ヤクザの漁師・三浦と目の見えない少年・幸太という、年の離れた孤独な2人の絆を描くヒューマンドラマ『港のひかり』が、11月14日から全国公開中だ。  主演に舘ひろしを迎え、『正体』(24)の俊英・藤井道人 … 続きを読む

『物語りの遺伝子 “忍者”を広めた講談・玉田家の物語』(7)神々がすむ土地を語る

2025年11月14日

 YouTubeもNetflixもない時代、人々を夢中にさせた“物語り”の芸があった——。“たまたま”講談界に入った四代目・玉田玉秀斎(たまだ・ぎょくしゅうさい)が、知られざる一門の歴史物語をたどります。 ▼玉田永教と神道講釈  銭湯の湯け … 続きを読む

ハリウッド・リメイク決定!インド発ノンストップ・アクション!「日本の皆さんにも楽しんでいただけるはず」ニキル・ナゲシュ・バート監督『KILL 超覚醒』【インタビュー】

映画2025年11月13日

 40人の武装強盗団が、ニューデリー行きの特急寝台列車を襲撃! 刀を手に乗客から金品を奪う強盗団のリーダー、ファニ(ラガヴ・ジュヤル)は、大富豪タークルとその娘トゥリカ(ターニャ・マニクタラ)を人質に取り、身代金奪取をもくろむ。だがその列車 … 続きを読む

上白石萌歌「小さなお子さまから大人の方まで幅広く届いてほしいと思います」『トリツカレ男』【インタビュー】

映画2025年11月11日

 何かに夢中になると他のことが目に入らなくなってしまうジュゼッペ(声:佐野晶哉)は、街の人々から「トリツカレ男」と呼ばれている。ある日、ジュゼッペは、公園で風船売りをしているペチカに一目ぼれし、夢中になるが…。作家・いしいしんじの同名小説を … 続きを読む

八木莉可子「相反する二面性をどちらも大切にしたい」「終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-」【インタビュー】

ドラマ2025年11月10日

 草なぎ剛主演の月10ドラマ「終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-」(カンテレ・フジテレビ系/毎週月曜午後10時)。第3話で強烈なインパクトを残したゆずは(八木莉可子)の母(雛形あきこ)が、再びHeaven’s messenger … 続きを読む

Willfriends

page top