【インタビュー】『無限の住人』杉咲花「木村拓哉さんからは、いろいろなことを学ばせていただきました」

2017年4月28日 / 17:34

 木村拓哉が不死身の体を持つ隻眼の剣士・万次に扮(ふん)して、強敵たちと死闘を繰り広げる“ぶった斬り”アクションエンターテインメント『無限の住人』が、4月29日から公開される。沙村広明氏の人気コミックを映画化した本作で、万次と共に両親の敵討ちに挑むヒロイン浅野凜を演じたのが、2016年に「とと姉ちゃん」、『湯を沸かすほどの熱い愛』で大きな飛躍を遂げた杉咲花。今最も注目を集める若手女優の一人に、「学ぶことが多かった」と振り返る本作の舞台裏を聞いた。

 

ヒロイン浅野凜を演じた杉咲花

ヒロイン浅野凜を演じた杉咲花

-出演が決まった時のお気持ちは?

 新しいことに挑戦できるうれしさと希望が湧いてきて、とても楽しみでした。三池(崇史監督)組に参加できるということにもワクワクしました。プレッシャーもありましたが、それを意識してもいい方向にはいかないので、あまり考えないようにしました。

-数々のヒット作を送り出してきた三池監督の現場に参加した感想は?

 最初は、「すごくピリピリした現場なのかな?」と想像していたのですが、行ってみたらとても楽しかったです。スタッフの皆さんがずっと三池監督と組まれてきた方ばかりで、空気も出来上がっていたので、入った瞬間からとても居心地が良くて。まだスタッフの方の名前も全く分からない状態でも、必要以上に緊張せずにいられました。プロフェッショナルな方たちが集まっていて、すごく刺激的な現場でした。

-三池監督からは、演技に関してどんなお話がありましたか。

 初めてお会いした時、一番に言われたのが「原作をリスペクトしたい」ということです。監督は、原作を全部タブレットに入れて、撮影中も常にそれを見ていました。ただ、それを見ながら演技の指示をするということはなく、思うようにやらせていただけました。

-原作を読んで、最も印象に残ったのはどんなところでしょう。

 凜と万次の関係性ですね。恋人でもなく、家族でもないけれど、それよりもっと深いところでつながり合っている。損得なしに人を愛せる関係性にすごく引かれました。

-万次役の木村拓哉さんとの共演はいかがでしたか。

 木村さんは、ご本人が映っていない時でも、私の目線の先に万次さんがいる場面では、必ず一緒にお芝居をしてくださいました。真冬の京都の山の中という非常に寒い場所での撮影だったので、誰にでもできることではありません。木村さんには、本当に助けていただきました。

-撮影中は木村さんとどんなお話をされましたか。

 休憩中は、作品と全く関係ない話で楽しませてくれました。皆に緊張感が生まれてきた時にも、三池監督や木村さんがふっと現場が和むことを言ってくださって、居心地のいい環境を作ってくださいました。演技について話すことはほとんどありませんでしたが、凜と万次のように話さなくても通じ合えている感覚があって、撮影中も大丈夫だという安心感がありました。

(C)沙村広明/講談社 (C)2017映画「無限の住人」製作委員会

(C)沙村広明/講談社 (C)2017映画「無限の住人」製作委員会

-今まで杉咲さんが出演してきた映画と違って、凜は殺された両親の復讐(ふくしゅう)に燃える少女という非日常的な人物です。お芝居をする上で、苦労した点などはありますか。

 敵討ちに関わってくる凜の過去については、映画の中ではあまり描かれていないので、どうやって自分の中で気持ちを保つかということが一番心配でした。でも、そこは原作を読んで、できる限り考えて、あとは万次さんを信じて現場で出てきた生の感情でやるしかないと思って演じました。いかに集中力を切らさずにいられるかという、自分との戦いもありました。

-凜のほかに、万次の妹・町の二役を演じていますね。

 そうなんです。凜を演じている時は、糸がピンと張ったような張り詰めた状態でしたが、町の時はふっと息抜きできる感覚があって楽しかったです。

-アクションに挑戦された感想はいかがでしょう。

 撮影前に1~2カ月ぐらい稽古しましたが、練習の時の木刀と本番で使う刀は重さも違うので、やっぱり大変でした。お互いに本気でやりながらも、けがをしないようにしなくてはいけませんし。凜は短刀を一斉に投げる“殺陣黄金蟲”という技も使うのですが、それは体を思い切り後ろに反らせて声を出しながらやるので、体勢がきつかったです(笑)。

-最近はアクションに挑戦する女優さんが多いですよね。

 こういう殺陣はやればやるほど上達してやりがいがありますし、見て楽しくてスリルもありますよね。私も体を動かすことが好きなので、機会があればぜひまたやってみたいです。

-撮影が終わって、どんなことを感じましたか。

 とても勉強することの多い現場だったので、この作品を経験して、自分の中で仕事に対する意識も変わりました。特に、木村さんからはいろいろなことを学ばせていただきました。相手を敬うという意識をすごく持っている方で、それは目上の人に対してだけでなく、私に対しても同じでした。人から尊敬され、現場でもたくさんのスタッフに愛されて、お仕事されている。その姿を見て、私も製作に関わる人間として、これからも、皆さんと向き合って作品を作り上げて行きたいという思いが強くなりました。

-この作品の一番の見どころはどこでしょう。

 どのシーンも、スタッフの皆さんや木村さんに助けていただいて、何とか乗り越えられました。最初から最後まで、見落とせないぐらいいろんなものが詰まっています。そんな中でも、一番の見どころはやっぱり、300人の敵と戦うクライマックスです。2週間ぐらいかけて撮影したのですが、本当に殺し合いが目の前で起きているような感覚で、いつ死んでもおかしくないと思うぐらい怖くて、命懸けで演じていました。完成した映画にも、その切迫感や臨場感がまるごと映像からにじみ出ています。皆さんにも楽しんでいただきたいです。

(取材・文/井上健一)

(C)沙村広明/講談社 (C)2017映画「無限の住人」製作委員会

(C)沙村広明/講談社 (C)2017映画「無限の住人」製作委員会


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

安田顕「水上くんの目に“本物”を感じた」水上恒司「安田さんのお芝居に強い影響を受けた」 世界が注目するサスペンスで初共演&ダブル主演「連続ドラマW 怪物」【インタビュー】

ドラマ2025年7月5日

 韓国の百想芸術大賞で作品賞、脚本賞、男性最優秀演技賞の3冠を達成した極上のサスペンス「怪物」。WOWOWが世界で初めてそのリメイクに挑んだ「連続ドラマW 怪物」(全10話)が、7月6日(日)午後10時から放送・配信スタート(第1話・第2話 … 続きを読む

TBS日曜劇場「19番目のカルテ」が7月13日スタート 新米医師・滝野みずき役の小芝風花が作品への思いを語った

ドラマ2025年7月5日

 7月13日(日)にスタートする、松本潤主演の日曜劇場「19番目のカルテ」(TBS 毎週日曜夜9時~9時54分)。原作は富士屋カツヒト氏による連載漫画「19番目のカルテ 徳重晃の問診」 (ゼノンコミックス/コアミックス)。脚本は、「コウノド … 続きを読む

南沙良「人間関係に悩む人たちに寄り添えたら」井樫彩監督「南さんは陽彩役にぴったり」期待の新鋭2人が挑んだ鮮烈な青春映画『愛されなくても別に』【インタビュー】

映画2025年7月4日

 第42 回吉川英治文学新人賞を受賞した武田綾乃の小説を原作にした鮮烈な青春映画『愛されなくても別に』が、7月4日公開となる。浪費家の母(河井青葉)に代わってアルバイトで生活を支えながら、奨学金で大学に通う主人公・宮田陽彩が、過酷な境遇を受 … 続きを読む

紅ゆずる、歌舞伎町の女王役に意欲「女王としてのたたずまいや圧倒的な存在感を作っていけたら」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年7月4日

 2019年に宝塚歌劇団を退団して以降、今も多方面で活躍を続ける紅ゆずる。7月13日から開幕する、ふぉ~ゆ~ meets 梅棒「Only 1,NOT No.1」では初めて全編ノン・バーバル(せりふなし)の作品に挑戦する。  物語の舞台は歌舞 … 続きを読む

【Kカルチャーの視点】異領域を融合する舞台芸術、演出家イ・インボの挑戦

舞台・ミュージカル2025年7月3日

 グローバルな広がりを見せるKカルチャー。日韓国交正常化60周年を記念し、6月28日に大阪市内で上演された「職人の時間 光と風」は、数ある韓国公演の中でも異彩を放っていた。文化をただ“見せる”のではなく、伝統×現代、職人×芸人、工芸×舞台芸 … 続きを読む

Willfriends

page top