「瀬名の強さや優しさが、皆さんに伝わるように演じていきたい」菜々緒(瀬名=築山殿)【「おんな城主 直虎」インタビュー】

2017年3月19日 / 20:45

 次郎法師(後の井伊直虎=柴咲コウ)の友であり、後に井伊家の主君となる松平元康(後の徳川家康=阿部サダヲ)の正妻。それが瀬名である。井伊家から今川家への人質となった佐名(花總まり)の娘という宿命を背負いつつ、直虎に劣らぬ波乱の生涯を送ることになる。後に築山殿と呼ばれ、“悪女”とも評される人物を、1人の人間として生き生きと演じる菜々緒が、役に込めた思いを語った。

 

瀬名役の菜々緒

瀬名役の菜々緒

-出演が決まった時のお気持ちはいかがでしたか。

 お話を頂いた時は、すごくうれしかったです。ただ、初めての大河ドラマなので、緊張とプレッシャーも大きかったです。撮影に入る前には台本を読み込んで、歴史も自分なりに勉強して準備したものの、とにかく緊張が解けませんでした。所作や衣装が現代劇とは全く異なる上に、初登場のシーンで舞を踊るなど、初挑戦のことも多かったので、練習を重ねて撮影に臨みました。

-瀬名という女性については、どのような印象をお持ちでしょうか。

 いつの時代も女性は強い生き物ですが、瀬名は本当にしっかりしていて、強い女性ですよね。私はしっかり、はっきりしている女性が好きなので、演じていてすごく楽しいです。その一方で、自分の故郷や母との約束を大事にしているあたりからは、優しさや思いやりを持った女性であることがうかがえます。そういった人柄が、細かく皆さんに伝わるように演じていきたいです。

-瀬名は“悪女”、“嫉妬深い”という評価が定着していますが、今回は菜々緒さんならではの瀬名が見られそうですね。

 瀬名に関しては、そもそも残っている資料が少ない上に、人柄や生きざまについては諸説あるそうです。言われているような悪女として描かれるのであれば、それは私が得意としている役柄ですし、そうではなく、悲劇的な運命をたどる女性になるのであれば、私にとっても新境地になるだろうと思っています。どちらになるのか、とても興味がありますし、私自身もどう演じていけるのか、楽しみにしています。

-瀬名と夫の元康の関係については、どのように捉えていますか。

 年上の女房ということもありますが、圧倒的に元康より瀬名の方が上の立ち位置にいます。桶狭間の戦いに出陣する時に力強く「ご出世を!」と声を掛けた場面も、激励というより、絶対にそうならなくてはいけない、といった感じでしたし。昔も今も鬼嫁というものは存在するのだなと(笑)。その一方で、自分に余裕がない時でも、毅然と振る舞って背中を押すようなことを言う場面もあったりするので、母としても妻としても、瀬名は器が大きくて強い女性です。

-元康役の阿部サダヲさんとの共演はいかがでしょう。

 阿部さんとの共演は、和やかで面白いシーンが多いので、毎回楽しく撮影をさせていただいています。瀬名と元康の掛け合いはコミカルに描かれていることもあって、SNSなどで発信させていただくと、2人の仲むつまじい様子に癒やされるというコメントをよく頂きます。緊迫したドラマの中で、視聴者の皆さんにホッとしていただける箸休めのような存在になったらいいですね。

-瀬名と元康の間には、子どもも生まれます。菜々緒さんは普段、悪女や自立した女性を演じることが多いですが、母親を演じた感想は?

 母親役は初めてなので、すごく新鮮です。今とは違って、私の年齢よりもずっと若い時に母親になり、子だくさんという時代だったので、赤ん坊を抱いている場面などを演じさせていただくと、不思議な気持ちになります。

-息子の竹千代を演じる子役との共演はいかがでしょうか。

 なるべくお話をするようにしていますが、なにしろ育った時代が違うので、見ているテレビの話をされても全然分かりません。勉強不足です(笑)。印象的だったのは、元康が桶狭間に出陣する前に、竹千代が「ご武運を」と言う場面です。撮影の時は、竹千代役の子がなかなかせりふを言えなくて、他の子に交代しようか、という話も出ました。でもその途端、その子が「僕やる」と奮い立って、その後1、2回で演じ切ったんです。それを見た時、こんな小さな子でもプライドがあるんだ、と感心しました。

-瀬名と次郎法師の友情も、物語の重要なポイントになります。瀬名は次郎法師のどんな部分に友情を感じているのでしょう。

 次郎法師は家や家族のために、自分を犠牲にして出家していますが、瀬名も同じように家のために元康と結婚させられています。そういった部分で、瀬名は次郎法師に対して自分と近いものを感じているのではないでしょうか。

-桶狭間の戦いの後、元康が今川を裏切ったことで、瀬名は今川に殺されそうになりました。その時の心境をどのように捉えていますか。

 私がもし、この時の瀬名と同じような立場に置かれたとしたら、やっぱり諦めてしまうと思うんです。そんな状況でわざわざ次郎法師が命乞いに来てくれたことには、とても心を動かされました。だから、お芝居をしようと考えなくても入り込めたシーンでした。

-第11回では、今川を手に入れるという母・佐名との約束と、助力を求める次郎法師との友情の間で葛藤する場面が印象的でした。

 あそこは、すごく難しかったです。今川を手に入れるということは、幼いころからの自分の夢だったし、亡き母との最後の約束を果たしたいという強い気持ちもあって、門を開けないという選択をしたと思うのですが…。あとは、子どものことですよね。そのあたりで、母として、娘として、女としてやるべきことをやらないといけないと考えたのではないでしょうか。とても重要なシーンでした。

-瀬名に関して、今後の見どころは?

 瀬名と元康はしばらく離れ離れになってしまいますが、少し先になると久しぶりに再会する場面があります。そこで2人は長い会話をするのですが、元康も“三河のぼんやり”ではなく、成長した姿を見せてくれます。それでもやっぱり、立ち位置としては瀬名の方が上で、弱音を吐く元康に喝を入れたり、くすっと笑えるような部分もあったりします。そこは2人のいい関係性がギュッと詰まったシーンになっていると思うので、ぜひ見てほしいです。私自身も楽しみにしています。

(取材・文/井上健一)


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【Kカルチャーの視点】異領域を融合する舞台芸術、演出家イ・インボの挑戦

舞台・ミュージカル2025年7月3日

 グローバルな広がりを見せるKカルチャー。日韓国交正常化60周年を記念し、6月28日に大阪市内で上演された「職人の時間 光と風」は、数ある韓国公演の中でも異彩を放っていた。文化をただ“見せる”のではなく、伝統×現代、職人×芸人、工芸×舞台芸 … 続きを読む

毎熊克哉「桐島が最後に何で名乗ったのかも観客の皆さんが自由に想像してくれるんじゃないかと思いました」『「桐島です」』【インタビュー】 

映画2025年7月3日

 1970年代に起こった連続企業爆破事件の指名手配犯で、約半世紀におよぶ逃亡生活の末に病死した桐島聡の人生を、高橋伴明監督が映画化した『「桐島です」』が、7月4日から全国公開される。本作で主人公の桐島聡を演じた毎熊克哉に話を聞いた。 -桐島 … 続きを読む

磯村勇斗&堀田真由、ともにデビュー10年を迎え「挑戦の年になる」 ドラマ「僕達はまだその星の校則を知らない」【インタビュー】

ドラマ2025年7月2日

 磯村勇斗主演、堀田真由、稲垣吾郎が出演するカンテレ・フジテレビ系“月10ドラマ”「僕達はまだその星の校則を知らない」が7月14日から放送スタートする。本作は、独特の感性を持つがゆえに何事にも臆病で不器用な主人公・白鳥健治(磯村勇斗)が、少 … 続きを読む

蓮佛美沙子&溝端淳平「カップルや夫婦が“愛の形”を見直すきっかけになれたら」 グアムで撮影した新ドラマ「私があなたといる理由」【インタビュー】

ドラマ2025年7月1日

 ドラマ「私があなたといる理由~グアムを訪れた3組の男女の1週間~」が、7月1日からテレ東系で放送がスタートする。本作は、グアムを訪れた世代が違う男女3組のとある1週間を描いた物語。30代の夫婦(蓮佛美沙子、溝端淳平)、20代の大学生カップ … 続きを読む

風間俊介「横浜流星くんと談笑する機会が増えてきたことがうれしい」蔦重と和解した鶴屋喜右衛門役への思い【大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」インタビュー】

ドラマ2025年6月29日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」。“江戸のメディア王”と呼ばれた“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く物語は、快調に進行中。6月29日放送の第25回「灰の雨降る日本橋」では、浅間山の噴火によっ … 続きを読む

Willfriends

page top