前田旺志郎「世の中に関心を持つ大切さに気付いた」窪塚愛流「止まっていた時間が動き出した」初共演の2人が福島原発事故を題材にした映画で感じたこと『こんな事があった』【インタビュー】

2025年9月16日 / 10:00

 東日本大震災から10年後の福島を舞台に、原発事故で引き裂かれた家族と青春を奪われた若者たちの姿を描いた『こんな事があった』が9月13日から全国順次公開中だ。監督・脚本は、『追悼のざわめき』(88)などで日本のみならず世界の映画ファンから支持される松井良彦。震災から1年後に訪れた福島の惨状を目の当たりにし、映画制作を決意。何度も福島に足を運び、取材とリサーチを重ねた末、オリジナルストーリーを書き上げた。そんな松井監督が思いを託した主人公・広瀬アキラとその友人・山本真一を演じるのは、若手実力派俳優の前田旺志郎と窪塚愛流。これが初共演となる2人が、撮影の舞台裏を語ってくれた。

窪塚愛流(左)、前田旺志郎(C)エンタメOVO

-まず始めに、出演が決まった時のお気持ちをお聞かせください。

窪塚 お話をいただき、僕は自分の過去を振り返りました。というのも、僕は元々横須賀に住んでいたのですが、福島の原発事故をきっかけに大阪に引っ越すことになり、小学2年生から18歳まで10年間、大阪で暮らしたんです。だから、旺志郎くんが演じたアキラと同じように、地元に帰りたいけど、帰れない、という経験をして。でも、そのつらさを親にも言えないし、どこにもぶつけることができない。そういう悲しい思い出として、自分の中で時間が止まっていたんです。だから今回、大事なことに携わらせていただく責任はすごく感じていました。

前田 僕は愛流と違って、福島の原発事故や東日本大震災について、そこまで強い関心を持っていなかったというのが正直なところです。震災当時は11歳で、住んでいた大阪は少し揺れた程度だったので、テレビのニュースを見ても「大変なことになっている」と感じたくらいで。だからこそ、このお話をいただき、関心を持つこと、忘れないことの大切さに気付かされました。

-実際に起きた原発事故を題材にした映画に出演するにあたっては、ある種の覚悟も必要だったのではありませんか。

前田 当事者でない僕が、原発事故に遭われた皆さんの痛みや苦しみ、怒りや切なさといった感情を、どう表現すればいいのか悩みました。「広瀬アキラを演じたから、僕は原発事故に遭われた方の気持ちが分かります」とは、口が裂けても言えないわけですから。だから、自分なりにやれることをやるしかないと思っていました。

窪塚 僕も携わらせていただく以上、「出演する」というだけでは済まないと思っていました。といっても、原発事故を経験された方たちを、僕らが直接救えるわけではありません。だったら、精いっぱい真一を演じるしかないと、覚悟を決めました。

-それぞれの役を演じるにあたって、どんな準備をしましたか。

前田 NHKの番組やYouTubeで当時の映像を繰り返し見たり、現地を訪れてさまざまな場所を見学し、住民の方からお話を伺ったりしましたが、改めてそういうものに触れるのはつらかったです。ただ、アキラのバックボーンとなる家族のエピソードは、劇中ではほとんど描かれないので、そういうところからできる限り想像を膨らませ、役作りをしました。

窪塚 福島で撮影するからこそ、感じるものはすごくありました。ロケ地も、震災当時から時間が止まったような雰囲気があったので、そういうものをきちんと受け止めようと。その一つ一つを無駄にせず自分の中に蓄積することが、お芝居にも生かせるはずだと。

(C)松井良彦/ Yoshihiko Matsui

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】8月の公開映画から

映画2026年9月4日

「ミニオンズ&モンスターズ」(8月7日公開)★★★ 映画のパロディーが満載  最強最悪のボスを求めて旅を続けるミニオンズがたどり着いたのは、1920年代のハリウッド。西部劇の撮影に乱入したことから映画スタジオに入り込み、人気スターと … 続きを読む

山口馬木也 柴田勝家の最期は「不思議な体験でした」【大河ドラマ「豊臣兄弟!」インタビュー】

ドラマ2026年8月30日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「豊臣兄弟!」(総合 毎週日曜 夜8:00~ほか)。戦国時代、主人公・豊臣秀長(=小一郎/仲野太賀)が、兄・秀吉(池松壮亮)を支え、兄弟で天下統一を成し遂げるまでの軌跡を描く物語は快調に進行中だ。8月30日放 … 続きを読む

パク・ジョンミン「一人二役は想像以上に大変でした」韓国のヒットメーカーが「ガス人間」に続いて送り出すサスペンス・ミステリーで熱演『顔 -かお-』【インタビュー】

映画2026年8月28日

 日本でも話題を集めた『新感染 ファイナル・エクスプレス』(16)やエグゼクティブプロデューサー&脚本を務めたNetflix「ガス人間」も大ヒットした韓国のヒットメーカー、ヨン・サンホ。その最新監督作『顔 -かお-』が8月28日から全国公開 … 続きを読む

【映画コラム】「生き残る」とは何か『ラスト・サバイバー』『シェルター』が描く極限の人間ドラマ

映画2026年8月28日

『ラスト・サバイバー』(8月28日公開)  謎のパンデミックによって人類の大半が死滅し、生き残った者たちが奪い合い、殺し合う荒廃した世界。  パイロットのヒッグ(ジェイコブ・エロルディ)は、元軍人のバングリー(ジョシュ・ブローリン)と共同戦 … 続きを読む

安田章大「僕が演じられたのは、のんちゃんのおかげ」のん「安田さんとの出会いは衝撃でした」自閉スペクトラム症の兄とその妹役で初共演『平行と垂直』【インタビュー】

映画2026年8月28日

 自閉スペクトラム症(ASD)の大貴は、清掃の仕事に就き、周囲のサポートを受けながら自立した生活を送っている。一方、妹の希は、心理カウンセラーとして働きながら大貴を支えて暮らしていた。長い間、変わることなく続いてきた兄妹の日常は、希の結婚話 … 続きを読む

page top