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『リライト』(6月13日公開)
(C)2025「リライト」製作委員会
高校3年の夏、美雪(池田エライザ)の学校に保彦(阿達慶)という少年が転校してくる。自分は未来人で、ある小説に憧れて300年後からタイムリープしてきたという保彦と秘密を共有することになった美雪は彼に恋をする。
そして、美雪は保彦からもらった薬を使い、10年後の自分に会うためタイムリープをする。未来の美雪は過去の自分に著書だという本を見せる。
過去に戻った美雪は、この夏の保彦と自分の物語を書いて時間のループを完成させることを約束し、未来へ帰る保彦を見送る。
10年後、ようやく本の出版が決まった美雪は、過去からタイムリープしてくるはずの自分を待つが、なぜか一向に現れない。謎を探る中で同窓会に参加した彼女は、同級生から驚きの真実を知らされる。
松居大悟監督とタイムリープものを得意とする脚本家の上田誠が初タッグを組み、法条遥の同名小説を原作にオール尾道ロケで映画化したSF青春ミステリー。物語のキーパーソンとなる美雪のクラスメート友恵を橋本愛が演じる。
冒頭の美雪と保彦の甘い交流を見ていると、よくある時を超えた純愛ラブストーリーかと思わされるのだが、中盤から、未来人・保彦の謎の行動も含めて予想外の展開を見せる。
ネタバレになるので多くは語れないが、映画のキャッチコピーを借りれば「『私だけの物語』のはずだったのに…。史上最悪のパラドックスが生じる』となる。
そんな一筋縄ではいかず、ひねりが効いた脚本(原作)と演出に驚かされるとともに、あっぱれと拍手を送りたいような気持になった。
また、尾道ロケ、高校生、転校生、未来人、ラベンダー、実験室、図書室、尾美としのりと石田ひかりが脇を固めるなど、同じく尾道を舞台にした『時をかける少女』(83)や『ふたり』(91)をはじめとする大林宣彦監督作品へのオマージュがちりばめられているのも楽しい。
この映画を見たら『時をかける少女』が見たくなり、『時をかける少女』を見たらまたこの映画が見たくなるようなループにはまること請け合いだ。
(田中雄二)