【映画コラム】“時”を扱った三者三様の映画『夏への扉-キミのいる未来へ-』『Arc アーク』『1秒先の彼女』

2021年6月24日 / 07:00

記憶と時間にまつわる新機軸のラブコメディー『1秒先の彼女』

(C)MandarinVision Co, Ltd

 郵便局で働くシャオチー(リー・ペイユー)は、何をするにも人よりワンテンポ早い。ある日、シャオチーは、バレンタインデーにデートの約束をするが、目覚めるとなぜか翌日で、バレンタインが消えていた…。その謎の鍵を、毎日郵便局にやってくる、常に人よりワンテンポ遅い、バスの運転手のグアタイ(リウ・グァンティン)が握っていた。

 映画技法の、同じシーンの別撮りや、テーク(撮り直し)を利用して、シャオチーの消えたバレンタインをめぐる物語と、グアタイのアナザーストーリーを展開させるという、記憶と時間にまつわるちょっとシュールな新機軸のラブコメディー。ファニーフェースのペイユーが不思議な魅力を発散する。

 また、台湾では、年に2回バレンタインデーがあり、2月14日よりも、旧暦の7月7日の「七夕情人節(チャイニーズバレンタインデー)」の方が重要なイベントなのだという。だからこの映画の舞台は、バレンタインと言いながら、冬ではなく夏なのだ。そこも面白い。

 監督は“台湾ニューシネマの異端児”と言われたチェン・ユーシュン。欧米のこの手の映画のように洗練されてはいないが、粗削りなところがかえって新鮮に映る。そのうち、ハリウッドや日本でリメークされるかもしれないと思った。(田中雄二)

 

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