【映画コラム】松本清張の影響を感じさせられる『祈りの幕が下りる時』と『嘘を愛する女』

2018年1月27日 / 16:02

 一方、公開中の『嘘を愛する女』にも、清張の影響が垣間見えるところがある。

(C)2018「嘘を愛する女」製作委員会

 同居していたパートナーの素性が全て嘘だった…という、この映画は、キャリアウーマンの川原由加利(長澤まさみ)が、突然意識不明となったパートナーの小出桔平(高橋一生)の“正体”を探るべく、雇った探偵(吉田綱太郎)と共に瀬戸内を訪れる様子を描いている。

 監督・脚本の中江和仁は、新聞に掲載された「夫は誰だった」という記事から着想を得たと語っているが、“別人”としての夫の痕跡と、正体を探るために、妻が見知らぬ地を訪れる、という設定から、清張原作の『ゼロの焦点』を思い出した人も少なくないのでは、と思う。

 松本清張は、高度経済成期の前後に、犯罪の動機を、貧困や、弱者が抱く恨みやねたみに求め、犯人は、知られてはならない過去を隠すために罪を犯す、といった形の推理小説を多数書いてベストセラー作家となった。

 バブルの時代には、「清張はもう古い」といわれたが、それはうわべだけのことで、実は人間が持つ影の部分は何も変わってはいないのではないか。時を同じくして作られた2本の新作映画を見ながら、そんなことを感じさせられた。(田中雄二)

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