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2016年11月の劇場公開直後から幅広い支持を得て、いまだにロングラン上映が続くアニメーション映画『この世界の片隅に』。この夏も各地の劇場ではリバイバル上映が行なわれており、大きなスクリーンで鑑賞するまたとない機会となっている。
さらに先日は、新規映像を追加した新バージョン『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』の12月公開も発表され、こちらも待ち遠しいところ。公開から1年半以上の時間を経過しながらも、その人気は衰えるどころか、ますます勢いづいているようにも見える。
その一方で、同一原作の連ドラ版「この世界の片隅に」もTBS系で放送中(日曜午後9時)。主人公すず役に抜てきされた松本穂香をはじめ、松坂桃李、村上虹郎、尾野真千子、二階堂ふみといった俳優陣の好演により、家族愛にあふれた温かな物語となっている。
また、本作ではドラマオリジナルとして、現代パートを描いていることも話題だが、これは脚本の岡田惠和が手掛けたNHKの朝ドラ「おひさま」(11)と似た構造だ。現代と過去をつなぐ女性・節子役に大女優・香川京子が起用されたことも、「おひさま」で主人公の晩年を演じた若尾文子とイメージが重なる。
「おひさま」で戦中・戦後を生き抜いた女性の半生を描き切った岡田が、どのように物語を紡いでいくのか。8月5日に放送された第4話では、主人公・すずの義姉・径子の息子が登場するなど、原作にはない展開も見せ、独自の味わいを醸し出しつつある。今後の展開に注目していきたい。
アニメと実写という表現の違いや、作劇のスタンスに差はあれど、いずれの作品も原作に対するリスペクトが感じられるのは、原作の一ファンとしてもうれしいところ。その原作者であるこうの史代が『この世界の片隅に』より以前に手掛けたコミックを映像化したドラマが、8月6日(月)午後7時半からNHK総合で放送される。それが、「夕凪の街 桜の国2018」だ。
原作『夕凪の街 桜の国』は2004年に発表され、第8回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞するなど、高い評価を得た作品。昭和30年の広島を舞台に、原爆で被爆した過去を持つ女性・平野皆実の生きざまを描く『夕凪の街』と、現代を生きる皆実のめい・石川七波が家族のルーツを見詰め直す『桜の国』で構成されている。