エンターテインメント・ウェブマガジン
これらの作品で初々しさや小悪魔的といった人間味あふれる魅力を披露する一方、全く異なるポテンシャルを発揮したのが、黒沢清監督の『散歩する侵略者』(17)だ。
人間から“概念”を奪うエイリアンによる水面下の侵略を描いたこの作品で、恒松が演じたのは少女の姿を借りたエイリアン。“概念”を持たないが故に非人間的な振る舞いを見せるエイリアンは、本作に3人登場するが、恒松はそのうち最も凶暴なキャラクターに扮(ふん)した。
血まみれのセーラー服で車道を悠然と闊歩(かっぽ)するオープニングから既に、不気味な雰囲気が漂う。無邪気な笑みを浮かべながらちゅうちょなく人間の命を奪う姿には、初々しさという言葉からは程遠いすご味があふれている。
加えて本作ではアクションにも挑戦し、身体能力の高さを証明。バレエの経験を生かしたスピード感のある立ち回りは、凶暴なキャラクターをより強く印象付ける。
この他、合唱部員の高校生をはつらつと演じた『くちびるに歌を』(14)、髪を金色に染めて屈折した内面を持つ超能力者を演じた『サクラダリセット 前篇/後篇』(17)など、作品ごとに多彩な魅力を発揮している。
7歳頃から芸能活動を始めた恒松は、今年20歳を迎える若手ながら既に芸歴は10年を越える。今年は映画 『咲-Saki- 阿知賀編 episode of side-A』が公開され、今後も『虹色デイズ』(7月6日公開)、『3D彼女 リアルガール』(秋公開予定)の公開が予定されている。
高校生役を脱皮した「もみ消して冬」のように、徐々に大人の魅力を発揮し始めた恒松が、大輪の花を咲かせる時期もそう遠くないはずだ。(井上健一)