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今回注目するのは、テレビ東京で金曜深夜に放送されているドラマ24「アオイホノオ」。深夜ドラマというと、マイナーなイメージを持つ人も多いかもしれませんが、ツイッターでの人気は高く、大河ドラマ「軍師官兵衛」と並んでトップクラスです。
私の付き合いのあるテレビ関係者の間でも評価が高く、「今期のナンバーワンドラマは『アオイホノオ』で間違いない」という声がちらほら聞こえてきます。
「アオイホノオ」は、島本和彦氏による自伝的コミックが原作のドラマ。漫画家デビューを目指して苦悩する大阪芸大時代を題材にした青春コメディーです。
特徴的なのは、後に「新世紀エヴァンゲリオン」の監督となる庵野秀明氏や、庵野氏らと共にアニメ制作会社ガイナックスを立ち上げる山賀博之氏などが実名で登場していること。つまり、日本アニメ史の1ページとしても楽しめるわけです。
この物語の主人公・焔(ホノオ)モユルは、ライバルに負けたことを認めたくないがために、自信過剰な自己正当化を繰り返すダメ人間。そんなモユルの自己正当化にツッコミを入れながら見るのが、このドラマの基本的な楽しみ方のようです。
第3話で、期限1週間の映像制作課題に、無謀にもひとりで手描きアニメーションを制作することを決意するモユル。「決定打が頭に浮かぶまでは描かない」と一向に描き始めないモユルに、
「かかねぇのかよ!」
「これ、あかんパターンや」
「だめだ、ダメ人間の発想だ! おれもよくやる」
そして後半、提出に間に合わないことに気付くも、「一流になる男は、納得しないものは出さん」とむしろ勝ち誇るモユルに、
「どこまで身勝手な自己正当化w」
「ホノオくんかっこいい事言ってるようで一番カッコ悪い!」
「これで勝った気になれるのがすげえw」
と、多数のツッコミが入りました。
ストーリー展開自体はお約束といえばお約束なのですが、しばしば繰り出されるこの自己正当化が予想を超えているので、毎回飽きずにツッコミを入れて楽しむことができるというわけです。
この自信過剰なダメ人間・モユルを演じるのは、柳楽優弥さん。柳楽さんといえば、個人的には映画『誰も知らない』出演時のクールな印象が強いのですが、本作では、原作同様の暑苦しいキャラクターに変貌を遂げています。
自己正当化する際の勝ち誇った笑みや、ショックを受けたときに見せる大胆な変顔に、
「柳楽くんはまりすぎwww」
「柳楽くんの顔芸は流石世界レベルだ・・・」
と、もっぱらの高評価。
毎回突き抜けた演技を見せてくれる、新境地の柳楽さん。要チェックです。
1980年代初めを舞台にしたドラマということで、当時の時代背景描写が気になる視聴者も多いようです。
第3話ではポカリスエットが新発売商品として登場しましたが、
「新発売のポカリスエット!」
「缶のポカリスエット昔あったな!懐かしい」
「プルタブが缶から切り離すタイプだ」
など、多くの視聴者が反応していました。
ちなみに、番組放送中、ガイナックスの創立者・岡田斗司夫氏が、当時の時代背景や人間関係などをツイートで解説しています。第3話の放送時間中だけで、なんと31通ものツイートが投稿されていました(ハッシュタグ「#アオイホノオ」でツイートを検索すると、見ることができます)。岡田氏のディープな解説を読みながらドラマを見ると、新たな発見があるかもしれませんよ。
文◎伊與田孝志
【伊與田孝志プロフィール】神奈川県出身。ツイッターなどのソーシャルメディアとテレビの連携を探るウェブサービスプランナー/ディレクター。今は「水球ヤンキース」(フジテレビ系)と「おやじの背中」(TBS系)が気になっています。