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ところで『アナと雪の女王』と同時上映されている短編『ミッキーのミニー救出大作戦』のミッキーマウスの声はディズニー社の生みの親であるウォルト・ディズニーの声をアーカイブから抽出して使用している。
そのウォルトが登場する初のドラマ映画で、実写とアニメを融合させた名作『メリー・ポピンズ』(64)製作の舞台裏を描いた『ウォルト・ディズニーの約束』も公開中だ。
物語の中心に描かれるのは、原作の映画化を熱望するウォルト(トム・ハンクス)と映画化をかたくなに拒む原作者パメラ・L・トラバース(エマ・トンプソン)の対立と彼らの間に入って困惑するスタッフの姿だ。
そして、原題の「Saving Mr.Banks=バンクス氏を救え」が示すように、実はメリー・ポピンズが救済したのは子どもたちではなく彼らの父親で銀行に勤めるバンクス氏だった、それはパメラの父親(コリン・ファレル)に対する無念の思いの反映であり、ウォルトもまた父親に対して屈折した思いを抱いていたという隠された事実を、回想を交えながら明らかにしていく。
つまり『アナと雪の女王』が姉妹の物語ならば、こちらは父と子の物語なのだ。映画の製作を通してトラウマから解放され、変化していくウォルトとパメラの関係が見どころとなる。
監督は『オールド・ルーキー』(02)『しあわせの隠れ場所』(09)など“実話映画”を得意とするジョン・リー・ハンコック。ハンクス、トンプソンの名演技に加えて、脚本家役のブラッドリー・ウィットフォード、運転手役のポール・ジアマッティもなかなかいい味を出している。
また、シャーマン兄弟が作詞・作曲した「チム・チム・チェリー」「お砂糖ひとさじで」「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」「2ペンスを鳩に」「凧をあげよう」などの名曲が生み出される過程も描かれる。特に「凧をあげよう」に関するエピソードは感動的。本作を見れば本家の『メリー・ポピンズ』が見たくなること請け合いだ。
今春はアニメと実写の両面からあらためてディズニー映画の魅力を知る絶好の機会となる。(田中雄二)