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さらに、第5回を振り返ると、こんな出来事もあった。もとどりから観音像を取り出した頼朝は、続けて、「こんなことなら、ご本尊を持ってくるべきであった。誰か取ってきてくれ!」と周囲の坂東武者たちに命じる。これに応じたのが、義時の兄・宗時(片岡愛之助)。だが宗時は、本尊を取りに戻る途中で襲われ、命を落とす。
第26回で政子から観音像を受け取った義時は、口にこそしなかったが、「坂東武者の世を作る。そして、そのてっぺんに北条が立つ」と最後の別れ際に語っていた宗時のことも思い出した違いない。
長年仕えてきた頼朝という複雑な人物への思い、亡き兄への思い、鎌倉を背負っていくことになった姉・政子の思い。そんないくつもの思いと共に観音像を受け取った義時の決意の瞬間を、小栗は一言も発することなく、観音像を握りしめる芝居と視線の動きだけで見事に表現してみせた。
さまざまな思いを受け継ぎ、鎌倉に残ることを決意した義時が、御家人たちの思惑が入り乱れる幕府の中でどう立ち回っていくのか。次回から幕を開ける新展開が楽しみだ。
(井上健一)