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また、北アイルランド紛争といえば、南北アイルランド統一を旗印に武装闘争を繰り広げた(現在は終結)組織“IRA”が有名だ。一時は『クライング・ゲーム』(92)や『デビル』(97)など、数々の映画に登場したので、名前ぐらいは知っている人も多いだろう。
この“IRA”が起こした実在の爆弾テロ事件を題材にした『父の祈りを』(93)に主演したのが、『リンカーン』(12)などで3度のアカデミー賞主演男優賞に輝く名優ダニエル・デイ・ルイス。
74年にIRAがロンドン郊外のパブを爆破し、IRAと無関係な4人の若者が犯人として逮捕される。「ギルフォード・フォー事件」と呼ばれるこの冤罪(えんざい)事件で投獄された主人公と息子の無実を信じる父親の絆を力強いタッチで描いた本作は、デイ・ルイスの熱演(アカデミー賞候補)もあり、ベルリン国際映画祭金熊賞を受賞した。
さらに、『X-MEN』シリーズのエリック・レーンシャー(マグニートー)役で知られるマイケル・ファスベンダーが実話に基づき、80年代に獄中でハンガーストライキを決行したIRA闘士を演じたのが、『HUNGER/ハンガー』(08)。
その鬼気迫る演技は圧倒的だ。アカデミー賞作品賞受賞作『それでも夜は明ける』(13)のスティーブ・マックイーン監督の長編デビュー作としても知られる。
以上のように、いずれも世界の映画祭や映画賞で高評価を得た力作ばかり。もちろん、『ベルファスト』自体は、北アイルランド紛争を知らなくても十分楽しめるが、その背景を理解すると、より深く映画が味わえるに違いない。
(井上健一)