【コラム】栄冠はどの作品に? 『ドライブ・マイ・カー』はどうなる? 授賞式直前! 第94回アカデミー賞主要6部門の行方を占う

2022年3月27日 / 08:00

 日本時間3月28日、世界が注目する映画の祭典、第94回アカデミー賞が米ロサンゼルスのハリウッドで開催される。コロナ禍の影響を受け、日程や開催方式が大幅に変更された昨年から状況は改善。会場も恒例のドルビー・シアターとなっており、華やかさが戻ってきそうだ。日本映画『ドライブ・マイ・カー』が4部門にノミネートされた話題性もあり、例年以上に注目している人も多いに違いない。そこでここでは、主要6部門の行方を予想してみたい。

(C)2021「ドライブ・マイ・カー」製作委員会

 まず、今年のノミネート状況を簡単に説明しておきたい。作品賞を含む最多12部門で候補となったのが、ベネディクト・カンバーバッチ主演の西部劇『パワー・オブ・ザ・ドッグ』。続いて、10部門候補のSF大作『DUNE/デューン 砂の惑星』、7部門候補の『ウエスト・サイド・ストーリー』と『ベルファスト』、6部門候補の『ドリームプラン』、4部門候補の『ドント・ルック・アップ』、『ドライブ・マイ・カー』、『ナイトメア・アリー』などがしのぎを削る。配信を含めて日本公開中や公開済みの作品が多く、見ていれば、より授賞式を楽しめるに違いない。それでは、各部門の予想に移りたい。

【助演男優賞&助演女優賞】

 助演男優賞は『パワー・オブ・ザ・ドッグ』からジェシー・プレモンスとコディ・スミット・マクフィーの2人に加え、キアラン・ハインズ(『ベルファスト』)、J・K・シモンズ(『愛すべき夫妻の秘密』)らの名優が候補に挙がる中、最有力は『コーダ あいのうた』のトロイ・コッツァー。自身も聴覚に障害を持つ俳優で、主人公の耳の聞こえない父親役を人間味たっぷりに演じている。

 一方、助演女優賞は、8度目の候補となる大ベテラン、ジュディ・デンチ(『ベルファスト』)を除く4人が初ノミネートというフレッシュな顔ぶれがそろった。いずれも甲乙つけがたい名演を見せているが、本命は『ウエスト・サイド・ストーリー』のアリアナ・デボーズだろう。ゴールデン・グローブ賞、全米俳優組合賞、英国アカデミー賞などの前哨戦を制しており、絶対的優位は動かない。

【監督賞】

 『ドライブ・マイ・カー』の濱口竜介が名を連ねる注目の監督賞には、8度目の候補となる巨匠スティーブン・スピルバーグ(『ウエスト・サイド・ストーリー』)、個人で通算7部門ノミネートの記録を作った才人ケネス・ブラナー(『ベルファスト』)、アカデミー賞の常連ポール・トーマス・アンダーソン(『リコリス・ピザ』(7/1公開))など、そうそうたる面々が集結。

 実力伯仲だが、本命は全米監督組合賞、英国アカデミー賞などを制した『パワー・オブ・ザ・ドッグ』のベテラン、ジェーン・カンピオン。脚本賞に輝いた1993年の『ピアノ・レッスン』以来二つ目のオスカーを狙うが、もし受賞すれば、昨年のクロエ・ジャオ(『ノマドランド』)に続き、2年連続で女性監督が栄冠を手にすることになる。

【主演男優賞】

 オスカー受賞経験者のデンゼル・ワシントン(『マクベス』)、ハビエル・バルデム(『愛すべき夫妻の秘密』)のほか、ノミネート経験のあるカンバーバッチ、(『パワー・オブ・ザ・ドッグ』)、アンドリュー・ガーフィールド(『tick, tick… BOOM!:チック、チック…ブーン!』)ら実力者がそろった主演男優賞。

 中でも本命は、テニスの世界チャンピオン、ビーナス&セリーナのウィリアムズ姉妹を育て上げた型破りな父親を熱演した『ドリームプラン』のウィル・スミス。前哨戦でもリードしている上、「実在の人物」というアカデミー賞好みの条件もクリア。『ALI アリ』(01)、『幸せのちから』(06)以来、久々の候補で「三度目の正直」となる初受賞を目指す。

【主演女優賞】

 演技4部門で最も予想が難しいのが、主演女優賞だ。候補5人の出演作が、一つも作品賞にノミネートされない珍しいケースとなった。とはいえ候補者には、オリビア・コールマン(『ロスト・ドーター』)、ペネロペ・クルス(『PARALLEL MOTHERS(原題)』)、ニコール・キッドマン(『愛すべき夫妻の秘密』)らのオスカー受賞経験者に加え、『スペンサー ダイアナの決意』(2022年秋公開予定)で元英国皇太子妃ダイアナを熱演したクリステン・スチュワートといったスターがそろう華やかさ。

 その中で本命を1人に絞るなら、アカデミー賞との一致率も高い全米俳優組合賞を制した『タミー・フェイの瞳』のジェシカ・チャステインだ。宗教に目覚めた大学生が人気テレビ伝道師へと変貌していく30年以上の人生を、圧倒的な存在感で演じ切っている。

 われわれが見慣れたチャステインの顔を生かした若い頃から、名を成すにつれて別人のように変貌していくメークアップの効果も絶大で、メークアップ&ヘアスタイリング賞とのダブル受賞が濃厚と見る。

 
  • 1
  • 2

Willfriends

page top