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NHKで好評放送中の大河ドラマ「麒麟がくる」。11月15日放送の第三十二回「反撃の二百挺(ちょう)」は、その勇ましいタイトルから、前回、朝倉・浅井連合軍に敗れた織田信長(染谷将太)が、反撃に転じる“姉川の戦い”が軸になると予想していた。もちろん、その過程も描かれ、主人公・明智光秀(長谷川博己)が有能ぶりを発揮したが、その一方で物語自体はほろ苦い印象を残した。
今回、光秀が信長のために行ったことは二つ。一つは、織田軍の権威と士気を高めるため、足利義昭(滝藤賢一)の参陣を要請したこと。そしてもう一つが、木下藤吉郎(佐々木蔵之介)と共に、鉄砲二百丁を調達したことである。
光秀から戦の報告を受けた義昭は、「子どもの頃、高い木に登って降りられなくなった」という昔話で意気投合しながらも、次回の参陣要請に対しては表情をこわばらせ、回答せずに去っていき、微妙にすれ違う。だが、最終的には戦嫌いの義昭が、甲冑(かっちゅう)を身につけて信長の陣に現れる。この成功は、これまで義昭と信頼関係を築いてきた光秀ならではと言えるだろう。
また、鉄砲の調達では、堺の豪商・今井宗久(陣内孝則)、大和の豪族・筒井順慶(駿河太郎)を相手に、見事な交渉を繰り広げた。「既に鉄砲を売ってしまったので無理。売った相手(順慶)の名は明かせない」と断る宗久に、信長の名を出して「敵に味方するつもりか」と脅しをかける藤吉郎。
これを見て「宗久殿はさようなお方ではない。信長さまのご上洛を、陰で支えてくだされたお一人ぞ。それ故、私も頼りに思うて、こうして参ったのだ」と持ち上げて、茶会から糸口をつかむあたり、人望があり、交渉上手という光秀のキャラクターがうまく表現されていた。その結果、先に宗久の鉄砲を押さえていた順慶から二百丁を譲ってもらうことに成功する。
いずれも、光秀の思惑通りに事は運んだ。ところが、戦の行方は思った通りには進まなかった。朝倉・浅井軍との姉川の戦いには勝利したものの、その後は四国からの三好軍の襲撃と、それに協力する一向宗本願寺門徒の抵抗に遭い、織田軍は苦戦。光秀自身は任務を果たしながらも、大局は思いとは異なる方向へ進み、結果的に信長に対する義昭の信頼は損なわれる。
側近の摂津晴門(片岡鶴太郎)も、義昭に「甲斐の武田、越後の上杉らを上洛せしめ、都の安寧を図らねばなりませぬ。もはや信長ごときは無用かと」と進言。自身の能力や思いとは関係なく、さまざまな思惑が光秀の運命を翻弄(ほんろう)していくさまが描かれていた。
そう考えると、「反撃の二百挺」というタイトルからは、「二百丁は調達したものの…」という、光秀にとって皮肉なニュアンスも漂ってくる。今まで信長と義昭の間を取り持ってきた光秀は、この状況でどう立ち回るのか。