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その一方、過去のインタビューなどでは「笑いが起きないとその間に耐えられなくて不安になっちゃう」と明かすなど“繊細な一面”ものぞかせる大泉。
当然のことだが、「人を笑わせるのが好き」という言葉の根底には、「周りの人を笑顔にしたい」「幸せにしたい」という思いがある。つまり、人を思いやる優しさのなせる技なのだ。舞台あいさつなどで、観客の反応を誰よりも気にしているのは、大泉本人なのかもしれない。
さて、先述のように、毎回、大泉からお目玉を食らう松田だが、『探偵はBARにいる3』のジャパンプレミアでは、大泉の意外な一面を明かした。
松田は撮影を振り返る中で、「今回は大泉さんの気合が本当にすごかった。気合がすご過ぎて、僕もそれに応えなきゃとプレッシャーを感じて、今までのシリーズのなかで一番やりづらかった」と語ったのだ。
これに対して大泉は「共演者からやりづらかったと言われたのは初めてですよ」とわめき散らして“応戦”した。筆者は、これは大泉の「誰よりも強い責任感」「ひそかに抱えるプレッシャー」が垣間見えたエピソードだったように思う。
そんな大泉の最新作『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』が公開中だ。大泉は筋ジストロフィーを患い、わがまま放題に生きながらも、介助ボランティアなど、周囲の人々の人生に影響を与えた、実在の鹿野靖明氏を熱演している。
公開に先駆けた講演会では、「よく『娘さんをどのように育てていますか?』と聞かれますが、『人に迷惑を掛けるな』ということぐらいしか…。でも(本作の撮影を通じて)人に迷惑を掛けることをそこまで恐れる必要はないのかな…と思うようになったんです」と撮影を通じての“価値観の変化”について言及した。
続けて「自分一人でできないことがあれば助けを求める。逆に求められたときに助けてあげられる人でありたい。もっと人の迷惑を許してあげられる世の中になっていけばいいのかなって…」などと語った。
この映画の役作りのため「10キロの減量」にも挑んだ大泉。ロケ地は大泉の地元・北海道だったため、共演者の高畑充希や三浦春馬を「おいしい店に連れて行く」こともしばしばあったが、そんなときも大泉は体重維持のために食後のランニングを欠かさなかったという。
「おちゃらけ」が得意でありながら、役者としてのストイックな一面も持ち合わせる大泉。その両面があるからこそ「俳優・大泉洋」は多くの人から支持される。また、イベントで、どれだけふざけて盛り上げようが、締めのあいさつは“真剣なコメント”で締めるのが大泉流。そんなところにも、大泉の人たらしたる理由があるのかもしれない。(山中京子)