【コラム 2016年注目の俳優たち】 第24回 哀川翔&岡本健一ほか 多彩な顔ぶれがそろった大坂五人衆 「真田丸」

2016年10月25日 / 15:06
大坂五人衆の(左から)毛利勝永(岡本健一)、後藤又兵衛(哀川翔)、真田幸村(堺雅人)、長宗我部盛親(阿南健治)、明石全登(小林顕作)

大坂五人衆の(左から)毛利勝永(岡本健一)、後藤又兵衛(哀川翔)、真田幸村(堺雅人)、長宗我部盛親(阿南健治)、明石全登(小林顕作)

 着々と大坂の陣へ向けて進む「真田丸」。第42回「味方」では、大阪城にあふれる牢人たちを率いる五人の大将“五人衆”、すなわち真田幸村、後藤又兵衛、毛利勝永、長宗我部盛親、明石全登が集結。次第に決戦の雰囲気が高まってきた。

 だがその顔ぶれは、小日向文世、山本耕史、小林隆、近藤芳正ら、三谷幸喜作品の常連俳優を多くそろえ、統一感のあった秀吉時代とは随分と趣が異なる。

 五人衆を演じる俳優たちは、盛親役の阿南健治は三谷も参加した劇団「東京サンシャインボーイズ」の出身だが、他はバラバラだ。又兵衛役には、やくざものからアクション、バイオレンスなど数多くの作品に出演する哀川翔。勝永役は、多数の舞台で活躍するジャニーズ事務所所属の岡本健一。全登役には、自ら劇団を主宰し、Eテレの番組で“オフロスキー”として幼い子どもたちにも人気の小林顕作。

 多彩な俳優たちの顔ぶれからも、寄せ集めの牢人らしさが伝わってくる。

 テレビドラマや映画において俳優をキャスティングする場合、その俳優が役に合うかどうかだけでなく、他の俳優と共演した時にどう見えるかというバランスも重要だ。これが良くないと、俳優がいい芝居をしても、演技が悪いと見られたり、場合によっては作品が台なしになったりすることもある。

 例えば、製作時期が近く、全く同じ時代、同じ人物たちを描いた二つの大河ドラマ「義経」(05)と「平清盛」(12)を比べてみると分かりやすい。平清盛役の渡哲也を頂点に、息子の重盛役に勝村政信、宗盛役に鶴見辰吾を配した「義経」と、清盛に松山ケンイチ、重盛に窪田正孝、宗盛に石黒英雄を配した「平清盛」。この2作品で清盛役をそのままに、息子たちを入れ替えた場合、どれほど違和感が生じるかは、考えるまでもないだろう。

 「真田丸」はこの点がよく考えられている。五人衆も、違和感が生じない範囲で異なる個性を持つ五人を起用しているあたりが絶妙だ。仮にこの中で又兵衛を、「軍師官兵衛」(14)で演じた塚本高史に置き換えてみると、だいぶ雰囲気は変わってくる。

 なお、「真田丸」公式サイトの特集「さなイチ」に掲載されている家冨未央プロデューサーのインタビューでは、キャスティングの裏話が語られている。作り手の考えの一端を知ることができるので、ぜひ一読をお勧めしたい。

 第42回「味方」では、五人衆それぞれのキャラクターも明確になった。幸村の前で部屋の大きさを巡ってけんかを始める又兵衛と勝永。元大名だが、いかつい風貌に似合わず気の小さい盛親。部屋で祈りを捧げて又兵衛から煙たがられるキリシタンの全登。

 今のところまとまりのない五人衆が、大坂の陣に向けてどのように絆を結び、それを経験豊富な俳優たちがどのように演じるのか。『NHK大河ドラマ・ストーリー 真田丸 完結編』(NHK出版)掲載のインタビューで哀川が「互いに意見を戦わせながら信頼関係を築いていくさまは、芝居をしていても面白い」と語っているように、五人衆の競演は合戦の行方と併せて終盤の見どころとなりそうだ。

 (ライター:井上健一):映画を中心に、雑誌やムック、WEBなどでインタビュー、解説記事などを執筆。共著『現代映画用語事典』(キネマ旬報社)


page top