「本作の最大の魅力は、加害者の親にも共感できるところ」 『さまよう刃』で娘を殺された父親を演じたチョン・ジェヨン

2014年9月2日 / 16:26

 最愛の娘を殺した少年に自ら裁きを下そうとする父親。彼の復讐(ふくしゅう)は正義か、それとも悪か…。東野圭吾の同名小説が原作で、日本でも2009年に寺尾聰主演で映画化された『さまよう刃』の韓国リメーク版が、9月6日から日本公開される。本作で主人公サンヒョンを熱演したチョン・ジェヨンに、作品に込めた思いを聞いた。

 

(C)2014 CJ E&M CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED

―本作への出演を決めた理由は?

  最初にシナリオを読んだとき、特別なものを感じました。これまでの復讐を描いた映画とは違うな、と。現在の韓国社会をリアルに反映していると思いましたし、被害者と加害者の立場がはっきりしていないところにも魅力を感じて、出演を決めました。

―原作小説や日本で映画化された作品はご覧になりましたか。

 実は、先入観を持ってはいけないと思い、原作小説はあえて読んでいません。完全に新しい作品として、全く新しい人物を作り上げていく上での妨げになるのではないかと思ったので。日本で作られた映画も、一応どういう雰囲気なのかを見てみたいと思い、さらっと見ただけで、作品の雰囲気を把握するぐらいにしておきました。もちろんこれが正しい方法なのかどうかは分かりませんが、僕はそうしました。監督からも原作や映画を見るようには言われず、むしろ全く違う、似たような状況の父親を描いた作品を薦められたのでそれを見ました。

 ―その別の作品とは?

 幾つかありましたが、最も印象に残っているのはダルデンヌ兄弟監督の『息子のまなざし』(02)です。

―撮影現場の雰囲気はいかがでしたか。

  この作品は、今まで自分が演じてきた中でも本当に一番重い作品だと思います。そのせいか、撮影現場も重い雰囲気でした(苦笑)。僕は普段はよく冗談を言うタイプですが、今回の現場ではほとんど冗談を言っていないし、それだけキャラクターに入り込む努力をしていました。大変な作品だったなと思います。

―新米刑事役で共演されたソ・ジュニョンさんが「チョン・ジェヨンさんは獣のように感覚的に演じる方」だと話していましたが、これについてはどう思いますか。

  彼がそういうふうに表現したのは、飲み会での僕を見て思ったことなんじゃないでしょうか(笑)。

―では、ご自身ではどういうふうに思っていますか。

 そうですね…。最近受けた質問の中で一番難しいです(苦笑)。俳優は自分がどんな演技をする俳優なのかはよく分かりません。それは自分が判断するのではなく、あくまでも作品を見てくださる観客や、その演技を客観的に見てくれる監督が判断することだと思います。僕はただ、作品にふさわしい演技を一生懸命するのみです。

―本作が韓国で公開されたとき、最も印象的だった反応は?

  一番は妻の反応でした(笑)。僕は自分のところにシナリオが来ると、いつも妻にも読ませているんですが、最初にシナリオを読んだとき、やはり子どもに関する内容なので、妻はどうしても母親の立場から、この内容をあまり好ましく思わなかったようです。それでとても心配していたんですが、映画を見た後は、「素晴らしかったわ」と言ってくれました。また、普段はなかなか言ってくれないけど、今回は「あなたの演技もすごく良かった」と言ってくれたんです。シナリオを読んだときと映画を見た後の反応が全く違ったので、とても面白かったです。

―本作の大きなポイントの一つは、親の子に対する愛だったと思います。それは主人公のみならず加害者の親たちにおいても同じでしたが、実際に2人の息子さんを持つ父親として、加害者の親の立場は理解できましたか。

 もちろんです。それこそがある意味、この作品が持つ最も大きな魅力だと思います。僕は娘を失った被害者の親を演じましたが、加害者である男の子たちの親に対しても共感してしまうところがありました。本当はそう思ってはいけないのですが、心の中で納得してしまうというか…。息子をなんとかかばおうとするクリーニング店の父親を見ていて、自分も同じような行動を取ってしまうのではないかと思いました。でも駄目ですよね。僕はそうしません。正々堂々と審判を受けなくては駄目ですね。

 

(C)2014 CJ E&M CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED

●公開情報
『さまよう刃』
9月6日(土)角川シネマ新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかでロードショー
配給:CJ Entertainment Japan


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】夏にちなんだ異色ホラーを紹介『オブセッション 災愛』『ユースフル・ゴースト』『だぁれかさんとアソぼ?』

映画2026年7月24日

 今夏は、ただ怖がらせるだけではなく、恋愛や社会風刺、青春ドラマなど異なるジャンルを巧みに掛け合わせた“異色ホラー”が目を引く。恐怖の中に笑いがあり、切なさがあり、現代社会への視線もある。そんな一筋縄ではいかない作品がそろった。  1本目は … 続きを読む

関口メンディー「舞台での経験を積んでいきたい」 初主演舞台タクフェス第14弾 「北の島から」で家族愛を描き出す【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年7月24日

 宅間孝行が主宰するエンターテインメントプロジェクト「タクフェス」の最新作、第14弾「北の島から」が11月20日から上演される。主演を務めるのは、本作が舞台初主演となる関口メンディー。日本最北の島・礼文島を舞台に、家族の絆を描き出す本作で、 … 続きを読む

【K-POPもKドラマも深読みしたら韓国が見えた】#「オディソパンマリヤ」、なぜKドラマのケンカは「タメ口」から始まるのか

ドラマ2026年7月23日

 K-POPや韓国ドラマは、エンターテインメントであると同時に、韓国社会を映す鏡でもある。何気ない言葉やしぐさ、習慣の背景をたどると、その国ならではの価値観や歴史、人との関わり方が見えてくる。この連載では、韓国カルチャーを入り口に、知ってい … 続きを読む

星乃あんな「この映画で「ザ・Jホラー」の魅力を思う存分に感じてほしいと思います」『だぁれかさんとアソぼ?』【インタビュー】

映画2026年7月23日

 若者たちの間でひそかにはやる絶対にやってはいけない遊び。それは、学校の誰もいない階段の13段目でカセットテープに日付と名前を吹き込むと、名前を吹き込まれた人は死ぬというものだった…。「呪怨」シリーズの清水崇監督が、アイドルグループ「FRU … 続きを読む

望海風斗&坂本昌行が初共演で挑む、新たな「ファニー・ガール」 「元気とパワーと自信をもらえる作品」に【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年7月22日

 望海風斗と坂本昌行が出演するミュージカル「ファニー・ガール」が、9月8日から日生劇場で上演される。本作は、ニューヨークのブロードウェーレビュー、ジーグフェルド・フォリーズの大看板だったファニー・ブライスの伝記ミュージカルとして1964年に … 続きを読む

page top