【インタビュー】『おいしい家族』松本穂香・板尾創路・ふくだももこ監督 「どんな形でも、つながっていれば家族。『あなたはあなたでいい』と伝えたい」

2019年9月19日 / 13:13

 仕事も結婚生活もうまくいかず、都会の生活に疲れた橙花(とうか)は、母の三回忌をきっかけに、離島にある実家へと帰る。ところが、そこで彼女を待っていたのは、亡き母の服を着て「母さんになろうと思う」と告げる父・青治(せいじ)の姿。しかも実家には、弟夫婦の他、父と結婚したいという中年男・和生(浜野謙太)とその娘・ダリア(モトーラ世理奈)も同居しており…。9月20日全国ロードショーとなる『おいしい家族』は、久しぶりに帰った故郷で思わぬ事態に直面した主人公・橙花の姿を通じて、新しい家族のあり方を見つめた温かな物語だ。橙花を演じた松本穂香、その父・青治役の板尾創路、ふくだももこ監督に撮影の舞台裏、作品に込めた思いを聞いた。

(左から)ふくだももこ監督、松本穂香、板尾創路

―ふくだ監督がこの映画を作ろうと思った理由は?

ふくだ 私は、人と人とが関係を作っていく上では、血のつながりや国籍、性別などは一切関係ないと考えています。そういう新しい関係性を、家族という形で表現したいと思いました。

―松本さんを主演に起用した理由は?

ふくだ 「ひよっこ」(17)を見て、「(松本が演じた)青天目澄子ちゃんって、おもしろい女の子だな。この子が橙花をやってくれたら、きっと映画が豊かになる」と思って。プロデューサーも賛成してくれたので、すぐにオファーしました。

松本 お話を頂いて、とてもうれしかったです。台本を読んでみたら、すごく面白くてすてきなお話で…。久々に帰った実家で、置いてきぼりにされたような寂しさを感じる橙花の気持ちも、すごく伝わってきました。

ー板尾さんは、「お母さんになりたいお父さん」というユニークな役ですが、オファーを受けたとき、どんなふうに受け止めましたか。

板尾 特に違和感もなく、「そういう人もいるかな…」ぐらいの感じでした。女装も、コントでさんざんやってきましたし。僕は許容範囲が広いので(笑)。

ふくだ 最初に板尾さんと「この人はどんなたたずまいか」という話をしたとき、「役を作り込まず、いつも通りでいいよね」とおっしゃってくれたんです。その一言で、全部分かってくれているな…と。そういう認識が最初から共通していたので、私の方からは「そのままでいいです」とだけお伝えしました。

松本 しゃべり方も変えていないし、何かが大きく変わったわけではないのに、本当にお父さんであり、お母さんでもあるな…と。それはみんなが感じていたと思います。ただ、お母さんの服を着ていたので、久しぶりに帰った実家で「お父さんがお母さんの服を着ている…!」と戸惑う橙花の気持ちは理解できました。

板尾 松本さんとお仕事をするのは初めてでしたが、僕も松本さんぐらいの娘がいてもおかしくない年齢です。しかも、2人とも関西人なので、関西人特有の空気を感じる部分もある。そんなこともあって、お互いにちょうどいい距離感でいられました。

ふくだ 橙花が周りと少し距離のある役だったので、穂香ちゃんもみんなと距離を取ってくれたのがよかったです。

松本 自然とそうなった感じでした。あまり意識していなかったんですけど。撮影自体は、周りが面白い方たちばかりだったので、楽しく過ごすことができました。

ー『おいしい家族』というタイトルの通り、食事シーンが何度も登場しますね。

板尾 食事は、家族を表現する上で大事な場面です。でも、実は演じるのはすごく難しい。普段はご飯を食べながら何げなく話をしていますが、お芝居になるとギクシャクしてしまいがち。「話がしにくい」という理由で、実際には食べない作品も少なくありません。そんな中で今回、僕は役柄的にお母さんなので、みんなの様子を見ながら、「この人、これ食べてないな」と思ったら差し出す、みたいなことを考えながら演じていました。食べながら話をする中で、感情が動いていく様子を見せられたらと。

ふくだ 食べながらしゃべる、飲みながらしゃべる、何か手を動かしながら…の「“ながら”でやってください」ということだけは皆さんにお願いしました。せりふがあるから手を引っ込める…みたいに食卓が動かなくなるのだけは嫌だったので。せりふのタイミングがずれてもいいから、そこだけは意識してくださいと。板尾さんが「肉、まだあるぞ」と促したりするのはアドリブですが、撮影していて、ものすごく楽しかったです。

松本 そういう意味では、私が一番楽をしていたと思います(笑)。橙花は一応、その場にはいるんだけど、反発しているから、食事には全く手をつけない。しかも、そうやって一生懸命アピールしているのに、誰も気付いてくれないという…(笑)。

ー松本さんと板尾さんは、ふくだ監督の思いが込められたこの映画に登場する家族を見て、どんなことを感じましたか。

松本 家族というのは、どんな形でもいいんだな…と。ちゃんとつながってさえいれば、たとえ血がつながっていなくても、どんなことでも言い合えて、家族でいられる。逆に、血がつながっていても、こういうふうにつながっていられない家族もいるでしょうし。大切なのは、もっと自由に、自分らしく生きること。そんなことを考えさせられました。

板尾 家系や伝統を重視した今までの日本的な家族とは違って、押しつけがましくないのがいいですよね。干渉し過ぎず、お互いを尊重し合って、本人が思うように生きればいいという。だけど、ちゃんとつながっている。そういうカラッとした感じがすごくよかったです。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

山口馬木也 柴田勝家の最期は「不思議な体験でした」【大河ドラマ「豊臣兄弟!」インタビュー】

ドラマ2026年8月30日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「豊臣兄弟!」(総合 毎週日曜 夜8:00~ほか)。戦国時代、主人公・豊臣秀長(=小一郎/仲野太賀)が、兄・秀吉(池松壮亮)を支え、兄弟で天下統一を成し遂げるまでの軌跡を描く物語は快調に進行中だ。8月30日放 … 続きを読む

パク・ジョンミン「一人二役は想像以上に大変でした」韓国のヒットメーカーが「ガス人間」に続いて送り出すサスペンス・ミステリーで熱演『顔 -かお-』【インタビュー】

映画2026年8月28日

 日本でも話題を集めた『新感染 ファイナル・エクスプレス』(16)やエグゼクティブプロデューサー&脚本を務めたNetflix「ガス人間」も大ヒットした韓国のヒットメーカー、ヨン・サンホ。その最新監督作『顔 -かお-』が8月28日から全国公開 … 続きを読む

【映画コラム】「生き残る」とは何か『ラスト・サバイバー』『シェルター』が描く極限の人間ドラマ

映画2026年8月28日

『ラスト・サバイバー』(8月28日公開)  謎のパンデミックによって人類の大半が死滅し、生き残った者たちが奪い合い、殺し合う荒廃した世界。  パイロットのヒッグ(ジェイコブ・エロルディ)は、元軍人のバングリー(ジョシュ・ブローリン)と共同戦 … 続きを読む

安田章大「僕が演じられたのは、のんちゃんのおかげ」のん「安田さんとの出会いは衝撃でした」自閉スペクトラム症の兄とその妹役で初共演『平行と垂直』【インタビュー】

映画2026年8月28日

 自閉スペクトラム症(ASD)の大貴は、清掃の仕事に就き、周囲のサポートを受けながら自立した生活を送っている。一方、妹の希は、心理カウンセラーとして働きながら大貴を支えて暮らしていた。長い間、変わることなく続いてきた兄妹の日常は、希の結婚話 … 続きを読む

井桁弘恵、幼少期のバレエの経験が今の「度胸」に 「バレエの魅力をもっと伝えたい」「SWAN -Ballet cross Reading-」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2026年8月28日

 ドラマ「そこから先は地獄」(日本テレビ)で主演を務め、映画『教場 Requiem』など数々の映画やドラマに出演、「おしゃれクリップ」(日本テレビ)ではMCも務める井桁弘恵。9月4日から上演される「SWAN -Ballet cross Re … 続きを読む

page top