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江戸時代末期の福井藩を舞台に、数年ごとに大流行して多くの人命を奪う疫病から人々を救うために奔走した実在の町医者・笠原良策の姿を描いた『雪の花 -ともに在りて-』が1月24日から全国公開される。本作の小泉堯史監督と主人公の笠原良策を演じた松坂桃李に話を聞いた。
小泉 吉村昭さんの原作にひかれ、映画にしたいと思いました。僕の今までの映画がそうなのですが、人物にひかれることが多いんです。その人に出会ってみたいという思いが強くありますね。小説から具象的にスクリーンに立ち上げてみたいというか、映画を作ることによって、その人物をもっとよく知ることができるのではと。そういう魅力ある人でなければ撮る気がしないですね。愛情が持てる人であれば、スタッフと一緒になって、その人物のことをもっと深く知っていくことができますから。
小泉 コロナのことはプロデューサー的に、「これは」というのはあったと思います。僕は撮影が終わっても公開までなかなか次に進めないんです。でも、コロナで3年も4年も空いたので、プロデューサーも心配して、いくつか企画を提示してくれましたが、それはどうも合わなくて。それで、「吉村さんの『雪の花』だったらどうですか」という話をしたら、ぜひそれをと。コロナを意識していないわけではありませんが、歴史と伝統を大切に、医者として病に対峙(たいじ)し、いかに生きるか。その生き方を問う作品ではありますね。
松坂 今の時代だからこそ、監督もこの映画を作ろうと考えたのかなと思いました。すごく今と通じるものを感じましたし、疫病がまん延してきた時に隔離する様子もコロナと重なりました。やっていることが今も昔も変わらなくて、すごく身近に感じました。だからこの話は、今だからこそちゃんと残す意義があると思いました。
小泉 脚本を書き始めると、人物が自分の中で動き出しますよね。そうすると「この人物を誰にお願いすればいいか」と想像し始めます。今回は書きながら松坂さんの姿が浮かんできました。
松坂 疫病が広まったことによって、漢方医だった良策さんが改めて一から蘭方を学び直すというのは、すごく大変なことだったと思います。それは、漢方医としてのプライドもある中で、新しいものを取り入れて、多くの人たちの命を救いたいと思ったからです。無名の町医者ということで、風当たりがすごく強かったにもかかわらず、献身的な妻・千穂(芳根京子)の支えや、役所(広司)さんが演じる日野鼎哉(ていさい)先生をはじめ、多くの人たちの手を借りながら、自分の足を使って、多くの人たちの命を助けるという偉業を成し遂げた。良策さんの医者としての志の強さみたいなものをすごく感じました。
松坂 監督から「本番までに本読みやリハーサルを重ねてきたので、あとはもう素直に演じてもらえればいい」という言葉を頂いたので、それを頼りに演じさせていただきました。本番までにやれるだけのことはやったということです。あとは相手のせりふをきちんと聞いて、その場に立った時に目に入ってくる情報や、相手の表情などもちゃんと受け入れられるようにリラックスした状態で臨むことで、ようやく素直に演じることができるのかなと思いました。
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