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NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。「源氏物語」の作者・紫式部/まひろ(吉高由里子)の生涯を描く物語を彩る重要人物の1人が、「枕草子」の作者・ききょう/清少納言だ。中盤に差し掛かった物語は、敬愛した中宮・藤原定子(高畑充希)が亡くなり、ききょうにとっても一つの転機を迎えた。演じるファーストサマーウイカが、定子とのシーンを中心に、役への思いや撮影の舞台裏を語ってくれた。
出演が決まってから、清少納言に関する本をいくつも読みましたが、知れば知るほど、自分に近い考え方をする人だと感じるようになりました。SNSで皆さんから「生まれ変わり」と言っていただくこともありますが、自分でも「そうかも」と思うくらいです。おかげで、最初は大役ということでプレッシャーもありましたが、今ではものすごく親近感を持って接しています。
まひろの言うように「影の部分も書いた方が面白い」ということもわかります。ただこの作品では、ききょうは定子さまを励ますために「枕草子」を書き始めたという解釈になっているので、影の部分を書くことは、その主旨から外れます。さらに、私は定子さまをききょうにとっての“推し”と捉えていますが、現代のアイドルが「お手洗いになんていかない」というように、“推し”の見たくない裏側は不要なんです。何より、定子さまが悲しい思いをしながらも、どれほど歯をくいしばって生きてきたか、本人が夫の一条天皇(塩野瑛久)や兄弟にすら見せなかったものを、自分が書き残して世に広める必要はない。そんなことは野暮だと。そう考えたと解釈しました。
第二十五回の時、SNSで「個人的に作った同人誌が大手出版社に目ぇつけられたみたいだ」という感想を見つけたのですが、まさにそんな気持ちで。2人だけの宝物に…と思っていたのに、余計なことはしないでほしい、という気持ちだったんです。
定子さまの死後、家が没落してしまったら、命懸けで家を守ろうとした彼女の人生が、なんの意味もなくなってしまいます。「遺していく子どもたちだけは」と定子さまから託された最後の使命を、兄弟たちには任せておけない、自分が命を懸けて果たすべきだと考えたのでしょう。それには、一条天皇の心を定子さまにつなぎ留めておけばいい。これがその鎖になれば、という思いから、伊周に「広めてください」と頼んだに違いありません。史実でも、清少納言は定子さまの死後も「枕草子」を書き続けていますが、そこから定子さまの素晴らしさを書き残すことに使命が変わったんだろうなと。それが千年後も残っているなんて、格好いいですよね。
事前に定子さまのお墓を訪ね、関連する本もいろいろ読みましたが、25歳で世を去ったとは思えないほど立派で、素晴らしい生き方をされた方だったんだなと。
充希さんはたたずんでいるだけでもう定子さま以外の何者でもないという説得力がありました。充希さんのまなざしが素晴らしく、一対一で見つめ合ってお芝居させていただくときは、何度も自然と涙がこぼれてきましたし、初対面の場面ではみやびな風が吹いてくるようで…。でも、あの定子さまを前にしたら、誰でもそうなると思います。そのシーンを収めた「定子さまVR」を作って、皆さんにもその雰囲気を体感してほしいくらいです(笑)。
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