「寅子が裁判官としてキャリアを切り開いていくことに」連続テレビ小説「虎に翼」制作統括・尾崎裕和氏が語る舞台裏と今後の展望【インタビュー】

2024年6月1日 / 08:15

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「虎に翼」。女性初の弁護士となり、法律の道を歩んできた主人公・佐田寅子(伊藤沙莉)の物語は、第9週で一つの転機を迎えた。戦争で仕事も夫も失った寅子は、これから日本国憲法が施行された戦後の時代を歩んでいくことになる。新たな展開を迎えるに当たり、制作統括の尾崎裕和氏に、制作の舞台裏や今後の見どころを聞いた。

(C)NHK

-ここまでの視聴者の反響を、どのように受け止めていますか。

 このドラマのテーマとなる部分に対して、しっかりとした反応をいただけていることがうれしいです。昔も今も変わらない、女性が社会で生きていく上でのつらさや苦労、その中にある喜びを、自分のこととして受け止めてくださっている様子もうかがえ、非常にありがたく思っています。

-第9週(第44、45回)、寅子が亡き夫・優三(仲野太賀)と過ごした思い出の河原で、焼き鳥の包み紙の新聞に掲載された「すべて国民は、法の下に平等であって…」という日本国憲法を読むシーンには心打たれました。あのシーンは第1回冒頭にもありましたが、その意図をお聞かせください。

 戦争が終わり、日本国憲法が公布された当時、「私の人生はここから変わる」と思われた方が多数いたそうです。寅子のモデルになった三淵嘉子さんもその1人で、「涙が出た。あれが人生のターニングポイントで、裁判官になる道が開けた」と語っていらっしゃいます。つまり、寅子にとって最も重要なターニングポイントということで、第1回の冒頭で象徴的に描くことにしました。ただ、第1回では日本国憲法が公布されたという事実だけでしたが、前後の経緯が明かされた第9週では、さまざまなことが混然一体となった上での寅子の涙だったことが分かります。同じ映像でも、全く違った見え方になったのではないでしょうか。

-寅子の口癖になっている「はて?」という言葉も話題ですが、どのようにして生まれたのでしょうか。

 「はて?」は、脚本家の吉田恵里香さんが書かれた台本に初稿の段階で既に存在していたものです。吉田さんとしては、ドラマの中でのキーワードのように使えたら、ということで考えたものが、どんどん膨らんでいきました。とても難易度の高いせりふだと思いますが、伊藤さんが状況に応じてさまざまな「はて?」を使い分け、見ている側にも「確かに疑問だな」と違和感なく思わせてくださっています。おかげで、とても効果的なせりふになっているのではないでしょうか。

-尾野真千子さんの「語り」が、単なる状況説明だけでなく、寅子の心情を語るモノローグ的な役割まで担っているのも、「虎に翼」ならではです。

 あの「語り」も、吉田さんが書かれた台本に最初からありました。私も初めて読んだときは驚きましたが、シリアスなシーンも、寅子の気持ちを客観的に語ることで、ちょっと笑えるような効果が生まれ、今ではこのドラマの持ち味の一つになっています。吉田さんも、そんなふうにドラマの中でのバランスを取ることを考えて書かれているようです。尾野さんは当初、やや不安もあったようですが、われわれとしては最初の収録時点から素晴らしい語りだったので、安心してお任せすることができました。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

Travis Japan七五三掛龍也&吉澤閑也「期待を裏切らない自分たちでいたい」 ミュージカル「ダブリンの鐘つきカビ人間」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年6月29日

 Travis Japanの七五三掛龍也と吉澤閑也がW主演するミュージカル『ダブリンの鐘つきカビ人間』が、7月3日から上演される。ケルト民話を思わせるファンタジックな世界の中で繰り広げられる笑いと恐怖と感動の物語。これまで繰り返し上演されて … 続きを読む

「光る君へ」第二十五回「決意」まひろを物語の中心に立たせる道長との絆【大河ドラマコラム】

ドラマ2024年6月29日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。6月23日に放送された第二十五回「決意」では、越前から都に戻った主人公・まひろ(吉高由里子)が藤原宣孝(佐々木蔵之介)の妻になることを決意する過程や、政務をおろそかにする一条天皇(塩野瑛久)に頭 … 続きを読む

ウエンツ瑛士「お芝居の力をまざまざと見せつけられている」 現代社会に問いかける物語「オーランド」で届ける演劇の魅力【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年6月28日

 ウエンツ瑛士が出演するPARCO PRODUCE 2024「オーランド」が6月29日から上演される。本作は、20世紀モダニズム文学の重鎮として有名な女流作家、ヴァージニア・ウルフの代表作『オーランド』を舞台化した作品で、青年貴族から女性へ … 続きを読む

全国の刑務所や少年院でも上映! ドキュメンタリー映画『おまえの親になったるで』 草刈健太郎さん「元犯罪者の更生は“誰かがやらなあかん”」【インタビュー】

映画2024年6月28日

 元受刑者の更生を支え続ける大阪の建設会社の社長・草刈健太郎さんの壮絶な10年の記録を描いたテレビ大阪ドキュメンタリー映画『おまえの親になったるで』が28日から東京と京都で順次公開される。11年前、関西の中小企業が集まり、元受刑者に住まいや … 続きを読む

【週末映画コラム】若手監督たちの試金石『GEMNIBUS vol.1』/熊について考えるという意味ではタイムリーな『プロミスト・ランド』

映画2024年6月28日

『GEMNIBUS vol.1』(6月28日公開)  東宝が手がける才能支援プロジェクト「GEMSTONE Creative Label」初の劇場公開作品として、新進気鋭の監督たちが競作する短編オムニバス映画「GEMNIBUS」の第1弾。 … 続きを読む

Willfriends

page top