『ファイナルファンタジーX』が歌舞伎に 尾上菊之助「お互いの文化を発展させつつ、日本を元気にできたら」【インタビュー】

2022年11月14日 / 08:00

 「風の谷のナウシカ」「NINAGAWA 十二夜」ほか、自身の企画、構想などから新しい歌舞伎の舞台を作り出してきた尾上菊之助。その菊之助が、さらなる高みに挑戦すべく、不朽の名作ゲーム『ファイナルファンタジーX』を歌舞伎化し、2023年3月4日から上演する。ゲームの世界観はそのままに、旅の始まりから終わりまでを壮大なストーリーで描くため、上演時間は前編・後編通しでおよそ8時間。涙なしには見られない感動の物語が展開する。菊之助に本作への思いや見どころを聞いた。

尾上菊之助 (写真:山口真由子/ヘアメーク:高草木剛(VANITÉS)/スタイリスト:カワサキタカフミ)

-『ファイナルファンタジーX』を歌舞伎化するに至った経緯を教えてください。

 2020年に新型コロナで緊急事態宣言が出たことで、歌舞伎公演は約5カ月間中止になりました。先行きが見えない中、ステイホームをしていたわけですが、そのとき、その生活を明るくしてくれたのがゲームでした。実は私は、子どもの頃からゲームが好きで、よくプレーをしていたんです。ですが、菊之助を襲名した頃から忙しくてなかなかできなくて…。コロナ禍になったことで、久しぶりにやってみようかなと思い立ち、それならば以前にプレーをして面白かったものをと考えて『ファイナルファンタジーX』をプレーしました。そうして改めてプレーをしたら、このゲームが持つメッセージ性は、このコロナ禍できっと強い共感を呼ぶ、これを新作歌舞伎でできるならばきっと素晴らしい作品になると考えるようになりました。それから、仲間たちと話し合い、(ゲームを販売する)スクウェア・エニックスさんに許諾を頂き、長編歌舞伎として上演する運びとなりました。少しでも歌舞伎とゲームの新しい懸け橋を作り、お互いの文化を発展させつつ、日本を元気にできたらという思いを込めた作品です。

-菊之助さんがゲームを通して感じた『ファイナルファンタジーX』の魅力とは?

 それまでのゲームは、主人公目線でプレーをしていたこともあり、主人公に自分を投影することがほとんどでした。ですが、「ファイナルファンタジーX」はゲーム内に登場するそれぞれのキャラクターに感情移入してプレーをした初めてのゲームだったように思います。出てくるキャラクターたちが素晴らしいんですよ。それから、(物語の主人公の)ティーダと彼が出会う少女ユウナの運命が逆転していくというストーリーにも引かれました。歌舞伎ではそうした逆転劇のシナリオはないんです。そうした意味でも歌舞伎化するのに素晴らしいテーマだと思いました。

-『FFX』は水の表現が多いゲームだという印象がありますが、演出面ではどんなことを考えていますか。

 確かに水の表現は多いと思います。今、制作チームと話し合っているところですが、「マカラーニャの森」ですとか、「ブリッツボール」をどう演出するか構想を練っています。今回は、なるべく本物の水を使わずに水を表現する方法がないのかを考えています。歌舞伎というと、本水での立ち回り(本物の水を使った表現)や宙乗り(ワイヤロープを使って役者をつり上げる表現)といったスペクタクルが注目されますが、構造的に不可能なものもあるので、また違った表現でお見せできればと思います。

-今回は、これまで歌舞伎に慣れ親しんでない人たちも来場すると思いますが、そうした観客に向けての工夫などは考えていますか。

 歌舞伎の古典作品は古い言葉を使っているので、分かりづらいという先入観をもっていらっしゃる方も多いと思います。今回は、そういったことも踏まえて、なるべく聞きとりやすい言葉で、見やすくする工夫を考えています。歌舞伎を知らない方でも、ストーリーに入り込んでいただければ、きっと心動かされると思いますので、そうした『ファイナルファンタジーX』の持つ魅力と、歌舞伎の様式美や身体表現を合わせることによって、お互いの文化を尊重しつつ、見やすい作品、入門編となるようなものを作り上げていこうと思っています。また、今回は物語の最初から最後までを上演するので、前編・後編を続けてご覧いただくと、とても長い時間お付き合いいただくことになります。

 
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