【インタビュー】PARCO劇場オープニング・シリーズ「獣道一直線!!!」古田新太「くだらないアイデアはまだまだあるってことを発信できたら、それでいい」

2020年10月2日 / 08:00

 生瀬勝久、池田成志、古田新太が「今、一番やりたい芝居を、自分たちの企画で上演したい」という思いで結成された“ねずみの三銃士”による、「PARCO劇場オープニング・シリーズ“ねずみの三銃士”第4回企画公演『獣道一直線!!!』」が10月6日から開幕する。これまで同様、“ねずみの三銃士”発案のネタをベースに、宮藤官九郎が新作として書きおろし、河原雅彦の演出で上演する本シリーズ。今回は、面識のない独身男性3人が次々と殺害された事件を、ブラックな笑いを交えながら描く。本作の基ネタとなったアイデアを出したという古田に、本作への思いや見どころを聞いた。

古田新太(撮影:阿部章仁)

-“ねずみの三銃士”としては、6年ぶりの新作です。久しぶりにこのメンバーで集まっていかがですか。

 やっぱり面白いです。稽古もストレスがなくできています。(山本)美月ちゃんは、舞台の経験があまりないので、河原くんが丁寧に演出をつけているところですが、ほかの人間に関しては、ほぼ野放しなんで(笑)。

-本作のアイデアは古田さんが出されたそうですね。どんな発想から生まれたのですか。

 そもそも、三銃士ではおいらが最初のアイデアを出すことが多いんです。「埼玉の保険金殺人やろうぜ」とか、「北九州の監禁事件をやろうぜ」とか。今まで凄惨(せいさん)な事件の話ばかりやっているから、今回、生瀬さんと成志さんは、いい話をやりたかったみたいですけど、おいらは「木嶋佳苗とか筧千佐子とかの事件をやらない?」って。周りから見たら、特別に美しいわけではない女性に、なぜほれてしまうんだろう、と疑問に思う事件だと思います。でも、きっとほれた人たちには、別人のように見えているんじゃないかと思って、それを舞台では女優が途中で入れ替わるという形でやりたかったんです。今回、(池谷)のぶえちゃんが出てくれることになったので、同じ年ぐらいの女優さんを探して、と思っていたんですが、宮藤くんから「いっそ、めちゃくちゃ若くてきれいな女優さんにした方が面白くないですか」ってアイデアが挙がって、それで美月ちゃんにお願いしました。

-殺人事件や人間の狂気といったものにはもともと興味があったんですか。

 はい。『マーダー・ケースブック』を全部持っているぐらいですから(笑)。事件もののノンフィクションの本は必ず買っちゃうんです。自粛期間中は、仕事がないから、昼から飲んで、夕方から夜までは、ずっとニュースを見ていました。そのぐらい、事件には興味があるんです。でも、テレビのニュース番組だと、犯人が捕まると、それ以降の報道はほとんどされないんです。おいらは、その後の犯罪者がどうなったのか、彼らの心理は? 捕まって本当に後悔しているのか、そういうのが知りたい。おいらにとっては、そういう事件はものすごく不可解な出来事だから。どういう心理状態でそうなったんだろうっていうのに興味があるからやりたいんです。おいらのところの劇団(劇団☆新感線)は、チャンバラ劇団で、勧善懲悪の痛快劇をお客さんに見てもらって、「面白い」「格好良かった」って言ってもらいたいから、チャンバラをやっているんですけど、おいらとしては、本来、人を殺すというのはもっと大変なことだろうな、と考えているから、三銃士では人を殺す大変さというものもお伝えしたいな、と。

-殺人事件を題材にした作品を作り、それを演じることで、事件に対する不可解な思いは少しは解消されるんですか。

 いや、それはない。だから、ギャグにしちゃうんです。当事者にとっては、そういった事件は本当に大変なことですが、はたから見たら、人の物を盗んだり、人をあやめることは、愚かしくて滑稽なことでもある。それをみんなでゲラゲラ笑って見ている状態というのは、面白いことでもあるし、同時に恐ろしいことでもあると思います。コメディー作品に仕上げているから、もちろん、おいらたちは笑わせにかかるんですけど、裏では「みんな、笑っているけど、これ実際に起こった事件だからね」って思いがある。それをフィクションと呼ぶのか、悪趣味と呼ぶのかは分からないですが。生瀬さんと成志さんは、悪趣味だって言っています(笑)。でも、別に、どのようにこの芝居を見てもらってもいいんです。問題提起をしようなんて気持ちはさらさらないですから。

-ところで、今年は新型コロナウイルスの影響で数々の舞台が中止になりました。本作は古田さんにとっても久しぶりにお客さんの前でお芝居をするという機会になりますね。

 はい。1回配信で芝居はしましたけど、お客さんに入ってもらうのは久しぶりです。やっぱり、おいらのような芝居をやっていると配信はきつい(笑)。笑わせにいっているのに、そこに誰もいないから笑いがないんです。泣ける芝居はいいんですよ。でも、おいらたちは基本的にふざけているから、誰もいないところでふざけることがどれほどむなしいか(笑)。でも、今回は、半分とはいえお客さんがいますし、今は、劇場の、演劇の灯を消さないようにしないといけないという思いもあります。「まだやろうとしてますぜ」って。今回は、くだらないアイデアはまだまだあるってことを発信できたら、それでいいかなと思っています。めったに行かない地方にも行くので、劇場でのお芝居を楽しんでもらえたらいいです。でも、今は、飲みに行くのもはばかられるからね…。稽古終わりにも、誰も飲みに付き合ってくれない(苦笑)。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【週末映画コラム】『六人の嘘つきな大学生』/『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』(11月22日公開)

映画2024年11月22日

『六人の嘘つきな大学生』(11月22日公開)  大手エンターテインメント企業「スピラリンクス」の新卒採用の最終選考に残った6人の就活生への課題は「6人でチームを作り、1カ月後のグループディスカッションに臨むこと」だった。  全員での内定獲得 … 続きを読む

生駒里奈が語る俳優業への思い 「自分ではない瞬間が多ければ多いほど自分の人生が楽しい」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2024年11月20日

 ドラマ・映画・舞台と数多くの作品で活躍する生駒里奈が、ストーリー性のある演劇的な世界観をダンスとJ-POPで作り上げるダンスエンターテインメント集団「梅棒」の最新作、梅棒 19th GIFT「クリス、いってきマス!!!」に出演する。生駒に … 続きを読む

史上最年少!司法試験に合格 架空の設定ではないリアルな高校2年生がドラマ「モンスター」のプロデューサーと対談 ドラマ現場見学も

ドラマ2024年11月17日

 毎週月曜夜10時からカンテレ・フジテレビ系で放送している、ドラマ「モンスター」。趣里演じる主人公・神波亮子は、“高校3年生で司法試験に合格した”人物で、膨大な知識と弁護士として類いまれなる資質を持つ“モンスター弁護士”という設定。しかし今 … 続きを読む

八村倫太郎「俊さんに助けられました」、栁俊太郎「初主演とは思えない気遣いに感謝」 大ヒットWEBコミック原作のサスペンスホラーで初共演『他人は地獄だ』【インタビュー】

映画2024年11月15日

 韓国発の大ヒットWEBコミックを日本で映画化したサスペンスホラー『他人は地獄だ』が、11月15日から公開された。  地方から上京した青年ユウが暮らし始めたシェアハウス「方舟」。そこで出会ったのは、言葉遣いは丁寧だが、得体のしれない青年キリ … 続きを読む

「光る君へ」第四十三回「輝きののちに」若い世代と向き合うまひろと道長【大河ドラマコラム】

ドラマ2024年11月15日

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「光る君へ」。11月10日に放送された第四十三回「輝きののちに」では、三条天皇(木村達成)の譲位問題を軸に、さまざまな人間模様が繰り広げられた。  病を患い、視力と聴力が衰えた三条天皇に、「お目も見えず、お耳 … 続きを読む

Willfriends

page top