【インタビュー】映画『MOTHER マザー』奥平大兼 「まるで別人のような長澤まさみさんに引っ張られて、僕も周平に成り切ることができました」

2020年7月1日 / 06:38

 17歳の少年が祖父母を殺害した実在の事件をヒントに製作された衝撃のヒューマンドラマ『MOTHER マザー』が7月3日から全国公開となる。長澤まさみ扮(ふん)する自堕落なシングルマザー秋子のゆがんだ愛情で育てられた息子・周平を演じたのが、本作でデビューを飾る16歳の奥平大兼。演技初挑戦ながら、オーディションで大役をつかんだ期待の新星が、撮影の舞台裏を語ってくれた。

本作でデビューを飾った奥平大兼

-オーディションに合格したときの気持ちは?

 驚きしかありませんでした。なぜ自分が受かったのか分からなかったので、うれしさよりも、「どうして?」という気持ちの方が大きかったです。

-その時点で、長澤まさみさんが母親役ということはご存じでしたか。

 知りませんでした。後から他の出演者の方の名前を聞き、「こんなすごい人たちとやるの?」と、プレッシャーを感じました。長澤さんとは、衣装合わせのときに初めて会いましたが、めちゃめちゃ緊張して、目も合わせられませんでした。学校でも、女の子の友だちは1人だけで、女性と話すことに慣れていないのに、いきなり長澤さんが相手ということで、ものすごくハードルが高かったです(笑)。

-とはいえ、劇中では完全に親子の距離感が出来上がっていますね。

 最初は、長澤さんに近づくことすら怖かったんです。役的にも怖かったですし、長澤さんに“触れる”ということ自体が恐れ多くて…。でも、長澤さんが「大丈夫だよ」とおっしゃってくれたので、僕も「それなら…」と、気持ちを切り替えることができました。失礼のないように…ということだけは気を付けて、それ以外はできるだけ普通にするようにして。そうやって空き時間に話をしたりしながら、距離を詰めていけたかなと思います。

-演技初挑戦ということで、撮影前に大森立嗣監督とワークショップをやられたそうですね。

 4回ぐらいやりました。最初の2回は、荒巻(全紀/周平が働く造園会社社長・松浦役)さんと僕との、普通の会話を監督が台本にして、会話をしているときは自然だけど、それを台本にしたらどうなるか…という感じで。そうしたら、やっぱり自然な感じにならなかったので、できるだけ自然にできるように…ということをやっていきました。残りの2回は、『MOTHER マザー』の台本を中心に練習しました。

-その手応えは?

 全くありませんでした。演技の経験はなくても、「最低限こういうことをするんだろうな」ということは分かっていたつもりですが、実際にやってみると、全くできなくて。「こんなこともできないんだ」と、かえってネガティブになってしまいました(苦笑)。だから、撮影に入るのは不安でした。

-実際に撮影に入ってみて、どんなことを感じましたか。

 でも、監督が「自分が思ったことをやればいい」とおっしゃってくださったんです。そういう意味では、「自分がやったことが正解」だったので、慣れてくると「自分が思ったことを出せばいいんだな」と考えられるようになり、次第に楽しくなって、「次はどうなるんだろう? 早くやりたい!」という前向きな気持ちに変わっていきました。

-周平という役は、ご自身の中でどんなふうに作り上げていきましたか。

 台本を読んで、自分なりに「このシーンはこういう動きで」と考えていましたが、経験がない分、それが正しいのかどうか、分からなかったんです。だから、本番に入ってその場で感じたことをぶつけるしかないと思っていました。

-追い詰められた周平が事件を起こすシーンは、演じる上でも難しかったと思います。どんな気持ちで演じましたか。

 あそこは台本を読んでいても怖かったです。自分に置き換えて想像したら…。ただ、台本を読んでいる段階では、本当の感覚は分からなかったので、本番でその時の気持ちに任せようと思っていました。撮影のときは、前のシーンで長澤さん(が演じる母・秋子)からものすごい圧をかけられていたので、そのシーンでは「もう、やるしかないんだな…」と心の中でずっと考えていました。

-映像からも、周平の葛藤が手に取るように伝わってきました。

 撮影は、ものすごく大変でした。カット割りの関係で何度か繰り返したんですけど、毎回、息切れしてしまって…。1回終わるたびに水を飲んで、一息ついてから「じゃあ、次行きましょう」という感じで…。本当のことのような気持ちで演じていたので、頭が痛くなったほどです。

-作品はハードな内容ですが、現場の雰囲気はいかがでしたか。

 ものすごく明るかったです。こういう映画なので、静かな感じかな…と思っていたら、長澤さんや阿部(サダヲ/秋子の内縁の夫・遼役)さんも、冗談を言い合ったりして。想像と全く違いました。

 
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