「こういう大河ドラマが見たかった。自分たちが暮らす時代に近づいてきた第2部は、とても生々しく感じます」リリー・フランキー(緒方竹虎)【「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」インタビュー】

2019年7月28日 / 20:50

 ロサンゼルスオリンピックに向け、日本水泳の強化に取り組む田畑政治(阿部サダヲ)は1931(昭和6)年、完成したばかりの神宮プールで日米対抗戦を実施し、大成功を収める。相変わらず本業である新聞記者の仕事そっちのけだが、そんな田畑を温かく見守るのが、上司の緒方竹虎。後に政界に進出し、副総理にまで上り詰める大人物だ。オリンピックに情熱を注ぐ田畑のかたわらで、緒方自身はジャーナリストとして五・一五事件や二・二六事件といった激動の昭和史に直面することとなる。演じるリリー・フランキーに、撮影の舞台裏を聞いた。

緒方竹虎役のリリー・フランキー

-緒方の役作りはどのように?

 最初にいろいろな資料を頂いて読んでみました。そうしたら、最終的には政治家になって、かなりの地位に就く立派な人だったそうで。だから、本来であれば、もっとドンと構えているべきなのかもしれませんが、何しろ一緒にいるのが田畑。あまり重々しくしていると、なにかかみ合わない(笑)。だから、威厳みたいなものは忘れて、ちょっと軽いボケも入るような人にしなければいけないのかな…と。とりあえず、後々どうなっていくのかは、今は忘れるようにしています(笑)。

-当時の新聞社や新聞記者に対しては、どんなイメージを持っていますか。

 今、大手新聞社の社員だったら超エリートですが、当時の新聞記者は「嫁に出してはいけない」と言われていたぐらいで、新しいメディアで一山当てようという山師のような人間の集まり。だから、一つのニュースを手に入れるため、今では考えられないようなことも、たくさんやっていたに違いありません。当然、いろいろな付き合いもあっただろうし、当時はコンプライアンスの意識も、今よりずっと低かったわけですから。

-そんな記者たちを束ねる緒方ですが、田畑のどんなところが気に入っているのでしょうか。

 どちらかというと、緒方は入社試験で田畑を落とそうとした方なんですが…。ただ、現代を基準に考えると不適合な人間に見えるかもしれませんが、山師の集まりだった当時の新聞社の中には、そんな人も多かったのではないかと。そういう意味では、緒方はハチャメチャな田畑に、新しい時代を作ってくれそうな“生きのよさ”みたいなものを感じていたのではないでしょうか。

-そんな田畑を演じる阿部さんの印象は?

 珍しい動物を見ているような感覚ですね(笑)。存在感はかわいらしいのに、ものすごいエネルギーがあって、ワンカット、ワンカットがとても印象的。ものすごく楽しいです。

-新聞社のほか、緒方は頻繁にバー「ローズ」に出入りしますね。

 バーの場面は毎回、飲み屋らしいユーモアがあって大好きです。新聞社よりもずっと気楽なので、僕も緊張せずにやっています。(ママのマリーを演じる)薬師丸(ひろ子)さんが田畑の生命線を伸ばそうとして、包丁を手にする場面(第26回)なんかは、「それまでは何だったんだ」というぐらいのコメディー調。僕のお芝居も、その前とは全く変わってしまっているし…(笑)。「これからこのパターンでいくのかな…?」と思ったので、あの場面はものすごく印象に残っています。

-バーの場面、撮影時の現場の雰囲気は?

 すごくいいです。薬師丸さんはとてもすてきな方で、あんなに健やかな方はいません。そんな薬師丸さんに、最初のシーンで阿部さんが「やい、ババア!」みたいなことを言っていたので、「さすがにこれは…」と思って、「よくそんなひどいことが言えますね」と苦言を呈したんです。そうしたら、「だって、台本に書いてあるんだもん!」と(笑)。

-一方で、新聞社の場面はいかがでしょうか。

 バーとは対照的ですね。新聞社のシーンは、非常にオッサンたちがやかましい(笑)。いつもみんなで言っていますが、撮影が終わると、喉がものすごく痛くて…(笑)。ものすごい大声でしゃべるので、知らないうちに、みんな声が大きくなってしまうんです。

 
  • 1
  • 2

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】俳優同士の演技合戦が見ものの3作『爆弾』『盤上の向日葵』『てっぺんの向こうにあなたがいる』

映画2025年11月1日

『爆弾』(10月31日公開)  酔った勢いで自販機を壊し店員にも暴行を働き、警察に連行された正体不明の中年男(佐藤二朗)。自らを「スズキタゴサク」と名乗る彼は、霊感が働くとうそぶいて都内に仕掛けられた爆弾の存在を予告する。  やがてその言葉 … 続きを読む

福本莉⼦「図書館で勉強を教え合うシーンが好き」 なにわ男⼦・⾼橋恭平「僕もあざとかわいいことをしてみたかった」 WOWOW連ドラ「ストロボ・エッジ」【インタビュー】

ドラマ2025年10月31日

 福本莉⼦と⾼橋恭平(なにわ男⼦)がW主演するドラマW-30「ストロボ・エッジ  Season1」が31日午後11時から、WOWOWで放送・配信がスタートする。本作は、咲坂伊緒氏の⼤ヒット⻘春恋愛漫画を初の連続ドラマ化。主人公の2人を軸に、 … 続きを読む

吉沢亮「英語のせりふに苦戦中です(笑)」主人公夫婦と関係を深める英語教師・錦織友一役で出演 連続テレビ小説「ばけばけ」【インタビュー】

ドラマ2025年10月31日

 NHKで好評放送中の連続テレビ小説「ばけばけ」。明治初期、松江の没落士族の娘・小泉セツと著書『怪談』で知られるラフカディオ・ハーン(=小泉八雲)夫妻をモデルに、怪談を愛する夫婦、松野トキ(髙石あかり)とレフカダ・ヘブン(トミー・バストウ) … 続きを読む

阿部サダヲ&松たか子、「本気でののしり合って、バトルをしないといけない」離婚調停中の夫婦役で再び共演 大パルコ人⑤オカタイロックオペラ「雨の傍聴席、おんなは裸足・・・」【インタビュー】

舞台・ミュージカル2025年10月31日

 宮藤官九郎が作・演出を手掛ける「大パルコ人」シリーズの第5弾となるオカタイロックオペラ「雨の傍聴席、おんなは裸足・・・」が11月6日から上演される。本作は、「親バカ」をテーマに、離婚を決意しているミュージカル俳優と演歌歌手の夫婦が、親権を … 続きを読む

高杉真宙「見どころは、何よりも坂口健太郎さんと渡辺謙さんの演技だと思います」『盤上の向日葵』【インタビュー】

映画2025年10月30日

 『孤狼の血』で知られる柚月裕子の同名小説を映画化。昭和から平成へと続く激動の時代を背景に、謎に包まれた天才棋士・上条桂介(坂口健太郎)の光と闇を描いたヒューマンミステリー『盤上の向日葵』(配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント/松 … 続きを読む

Willfriends

page top