【芸能コラム】女優に合わせて色を変える変幻自在な俳優・柄本佑 『素敵なダイナマイトスキャンダル』

2018年3月20日 / 17:29

 母親のダイナマイト心中という壮絶な少年時代を経てエロ雑誌の編集者となり、1980年代に一時代を築いた末井昭の自伝的エッセイを映画化した『素敵なダイナマイトスキャンダル』が全国公開中だ。

(C)2018「素敵なダイナマイトスキャンダル」製作委員会

 故郷・岡山の田舎を飛び出し、紆余(うよ)曲折の末、エロ雑誌の編集者として破天荒な日々を送る主人公・末井昭を演じるのは柄本佑。2003年公開の『美しい夏キリシマ』で主役に抜てきされてのデビュー以来、30代前半にして主演から助演まで幅広く活躍する演技派として活躍中だ。

 その特徴を一言で言うと“変幻自在”。クールな二枚目然とした人物から冴えない三枚目、時にはサイコパス的な役柄まで自在に演じ分ける。使い古された表現だが、“カメレオン俳優”という言葉がこれほど似合う俳優もなかなかいない。どんな色にも染まるという意味では、“無色透明”な俳優とも言える。『素敵なダイナマイトスキャンダル』で、そんな柄本にさまざまな色を付けているのが、共演する女優陣だ。

 まずは、上京した末井と同じ下宿の住人で、やがて妻となる牧子を演じているのが前田敦子。ごく普通の女性らしさを漂わせた前田の演技が、ささやかな幸せを夢見る末井の心情を象徴している。やがて、エロ雑誌の編集者となった末井の前に新入社員として現れ、愛人として関係を持つのが笛子。演じる三浦透子の危うさに満ちたたたずまいは、まさに警察ににらまれながらエロ雑誌を作り続ける末井の人生そのものだ。

 この他、共演場面こそないものの、尾野真千子演じるダイナマイト心中した母・富子の存在も、末井の人生に影響を及ぼしていることが暗示的に示される。

 
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