【インタビュー】「はぶらし/女友だち」 内田有紀「女性とのお芝居は相手の人生が透けて見えるのが楽しい」池脇千鶴「単なる悪人にならないよう役作りに気を付けた」

2016年1月1日 / 06:07

 NHK-BSのプレミアムよるドラマ「はぶらし/女友だち」で、37歳独身の売れっ子脚本家・鈴音を演じる内田有紀と、鈴音の同級生でシングルマザーの水絵を演じる池脇千鶴。本作は20年ぶりに再会した同級生によって“今の幸せ”が侵食されていく恐怖を描く。二人がドラマの魅力と女友達の難しさについて語る。

池脇千鶴(左)と内田有紀

池脇千鶴(左)と内田有紀

 

-撮影の様子はいかがでしたか。

内田 スケジュールがタイトだったので、3日間空いただけでも、(池脇と)随分会っていない感じがしました。それぐらい濃密な撮影だったから、会えないと寂しくなりました。

池脇 内田さんとは何年も前に舞台でご一緒したのですが、絡みはなかったので、ちゃんとお芝居するのはほとんど初めて。私たちはもちろん、スタッフもヘトヘトになる過酷な撮影でしたが、内田さんがずっとリーダーシップを取りながら、「息、抜いていこうね」と言っていただいたので助かりました。

-演じていてつらかったことは?

内田 撮影が終わって気付いたのは“ストレスを感じていたんだな”ということ。基本的に鈴音の役は、自分から行動するというより、水絵の行動を受け入れてリアクションするという、受け身のお芝居が続いていたので…。受け身の生活をしている人って、こんなにもストレスがたまるんだと驚きました。

脇 私が演技で気を付けていたことは、お芝居をあまりにもやり過ぎないこと。水絵を単なる悪人にしないこと。“しめしめ”とか、“ほくそ笑む”とか、“今、罠をかけたぞ”といった分かりやすいお芝居にはしたくなかった。あくまでも自然に、こういう人って本当にいるよね…という感じにしたかった。そんな中、監督からちょっとやり過ぎた演技を要求されることもあって、私は結構葛藤はありました(笑)。

内田 私と池脇さんがこのドラマをやるに当たって目指したのは、演技の上で決してうそをつかないことでした。物語を面白くするために、お芝居で小さなうそを積み重ねるのはしたくないね。こういう人が本当にそこにいるんだと、皆さんに感じていただけるお芝居をしていこうと話しました。

-後半では、金子ノブアキさん演じる灘をめぐっての三角関係も見られますが、二人にとって彼の存在とはどういうものだったのでしょう。

内田 灘さんは、鈴音にとっては“癒やしの人”ですね。鈴音は(尾美としのり演じるドラマプロデューサーの)柳井さんと不倫関係にあって、自分の身の丈に合わない恋愛を続けていた。脚本の仕事がうまくいっているのも柳井さんのおかげであったり、恋愛と仕事が一緒に進行するような状況に実は疲れていたと思うんです。だから水絵が言った「合わないよ、柳井さんとは…」という言葉は的を射ているんです。これは鈴音に憧れを持っている水絵ならではの直観だと思います。

池脇 そうなんです。今回、お芝居をするに当たって、水絵のいろんな部分を把握するために、最初に“水絵という人は…”と思い付いたことを紙に書き出しました。第一に、息子の耕太が何よりも大事。でも、鈴音のこともすごく大事。水絵が灘さんのことを好きになるのは、鈴音に憧れすぎているが故の行動なんです。水絵は確かに灘さんに引かれている。でも、本当は「鈴音には、柳井さんより灘さんの方が合っているよ」と伝えたい。それが、また水絵の場合は過激な行動に出て、とんでもない結果になるのですが(笑)。

-実際に書きだした水絵のキャラクターとは?

池脇 「おどおどしているようで堂々としている」、「すごく図々しくて厚かましい」、「お願いごとをする時は、すごく恐縮して見せるのに、“ここに住んでます”と言わんばかりの存在感」といった感じでしょうか。

-内田さんは、来年、民放のドラマ(フジテレビの「ナオミとカナコ」)でも“女性同士”の物語に出演されますが、女同士がテーマの作品をどう捉えていますか。

内田 女同士でがっつりとお芝居するのは好きですね。女優さんと向き合ってお芝居すると、相手がどういう生き方をしてきたのかが透けて見えてくるので、それを感じるのがとても楽しい。“あ~、この人はこういう感じで生きてきたんだな”と…。プライベートなおしゃべりをすれば、もちろんお互いを知ることはできるのですが、お芝居を通して相手が見えてくる感じがゾクゾクして好きです(笑)。今回は、とにかく池脇さんとお芝居できることがとても楽しかったです。

-逆にご自身も相手の女優さんから見られている?

内田 きっと見えていると思いますよ(笑)。だから今の自分が持っている“すべてを見せる”覚悟でいつも演じています。

-本作は“女友達との距離感”がテーマでもあります。お二人は誰かと仲良くなりたいなと思った時、どのように距離感を縮めていきますか。

内田 私、距離感の縮め方が分からないんですよ(笑)。たぶん、池脇さんも同じだと…。

池脇 そうそう、分からないんですよ(笑)。月に何回連絡を取れば友達なのかとか…。自然でいいのに急に緊張しちゃう。好きで仲良くなりたい、でも仲良くする方法が分からない、という感じです(笑)。

内田 だから、昔から仲が良い子とはずっと仲良がいいというのが、私たちの共通点なんです。

ドラマはBSプレミアムで1月5日、午後11時15分から毎週火曜日に放送。


特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

【映画コラム】「2025年映画ベストテン」

映画2025年12月28日

 今回は、筆者の独断と偏見による「2025年公開映画ベストテン」を発表し、今年を締めくくりたいと思う。 【外国映画】  2025年公開の外国映画を振り返った時に、今年の米アカデミー賞での受賞作は最近の映画界の傾向を象徴するようで興味深いもの … 続きを読む

【Kカルチャーの視点】家族の情緒が国境を越える、俳優ムン・ソリが語る「おつかれさま」ヒットの理由

ドラマ2025年12月26日

 今年のヒットドラマ、Netflixシリーズ「おつかれさま」。子どもから親へと成長していく女性の人生とその家族を描き、幅広い世代から支持され大きな話題を呼んだ。IU(アイユー)との二人一役で主人公エスンを演じたムン・ソリに、ドラマの振り返り … 続きを読む

田中麗奈「こじらせ男の滑稽で切ない愛の行方を皆さんに見届けていただきたいと思います」『星と月は天の穴』【インタビュー】

映画2025年12月24日

 脚本家としても著名な荒井晴彦監督が、『花腐し』(23)に続いて綾野剛を主演に迎え、作家・吉行淳之介の同名小説を映画化した『星と月は天の穴』が12月19日から全国公開された。過去の恋愛経験から女性を愛することを恐れながらも愛されたい願望をこ … 続きを読む

天海祐希、田中哲司、小日向文世、でんでん、塚地武雅「12年の集大成を見届けてください!」大ヒットシリーズ、ついに完結! 劇場版「緊急取調室 THE FINAL」【インタビュー】

映画2025年12月23日

 2014年1月にスタートしたテレビ朝日系列の大ヒットドラマ「緊急取調室」。たたき上げの取調官・真壁有希子が、可視化設備の整った特別取調室で取り調べを行う専門チーム「緊急事案対応取調班(通称:キントリ)」のメンバーとともに、数々の凶悪犯と一 … 続きを読む

【映画コラム】時空を超えた愛の行方は『楓』『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』『星と月は天の穴』

映画2025年12月20日

『楓』(12月19日公開)  須永恵と恋人の木下亜子は、共通の趣味である天文の本や望遠鏡に囲まれながら幸せな日々を送っていた。しかし実は本当の恵は1カ月前にニュージーランドで事故死しており、現在亜子と一緒にいるのは、恵のふりをした双子の兄・ … 続きを読む

Willfriends

page top