エンターテインメント・ウェブマガジン
高橋よしひろの名作漫画「銀牙 -流れ星 銀-」が舞台化される。原作は、最強の熊犬の息子として生まれた秋田犬の銀が、人間ですら歯がたたない凶暴な人食い熊の赤カブトを倒すために、日本全国から仲間を集め、戦いを挑む動物漫画。舞台化の一報が流れると、2.5次元の人気俳優たちが犬を演じるという、これまでにない試みが大きな話題を呼んだ。本作で主人公の銀を演じる佐奈宏紀と、リーダー的存在のグレートデンのベンを演じる郷本直也に作品に懸ける思いを聞いた。
佐奈 友達の俳優たちと「2.5次元になりそうな原作はどれか?」っていう話を結構するんですが、「銀牙」は出たことがなかったから、オファーを頂いて、まさかと。でも、原作を読んでいたので、すぐにイメージが湧きました。
郷本 舞台化することは想像したこともなかったので、話を聞いたときに3回ぐらい聞き直しました(笑)。これまでにも「キャッツ」だったり「ライオンキング」だったり、動物を主人公とした作品はありましたが、擬人化すらされていない犬を演じるというのはかなり新しい試みだなと。ただ、原作も知っていたので、面白くなる要素がたくさんあるとは感じたので、驚きはしましたけど楽しみにもなりました。
佐奈 子どもの頃はただただバトル漫画として楽しかった印象がありました。強いやつがどんどん出てきて、こんなかっこいい犬が出てきた、っていうような。でも、今、改めて読むと、実は深いストーリー性があったことに気付きました。人生を通して楽しめる作品です。読むたびに驚かされるんですよ。それだけ一つ一つのせりふに深みがあって、絵でも描かれていない感情が込められているのを感じます。それを舞台化するということなので、やりがいがあると思います。
郷本 確かに、大人になって読むと物語の深さを感じるよね。俺は、漫画の中で衝撃的だったのは、犬がしゃべって、犬たちに感情移入できるように描かれているのに、ふとしたところで、例えば、おしっこをするシーンとか、ちゃんと犬のしぐさが描かれているってこと。感情移入しているから、読んでいるうちにだんだん、犬であることを忘れていくんですが、そういうシーンが突然出てきて、「あ、そうか」って、1回現実に戻される(笑)。あくまでもこれは犬の話なんですよね。それがある意味、衝撃的で、印象に残っています。
佐奈 銀は悲しい子という印象です。銀が生まれたシーンは本当に小さな犬として描かれているので、子どもの頃は「かわいい」という印象だったんですが、今、改めて読むと、すごく悲しいシーンだなと感じます。銀の誕生を、周りの人間たちはみんな喜んでいるんですが、それはかわいいからじゃなくて、猟犬として優れた犬の証しである「虎毛」だからなんです。熊と戦わなければいけない、いつ死んでもおかしくない犬という運命を、生まれながらにして背負ってしまっているんです。それがすごく悲しい。だから、そこをちゃんと表現してあげたいと思ってます。
郷本 自分が銀をやるって聞いて、納得する部分はあったの?
佐奈 僕自身は、自分に自信を持てないところもあるんですが、周りの方にも「佐奈は絶対いい役者になる」と言っていただくことがあって、そういう周りの方の思いや期待を背負ってここまで頑張れてこれた感じなんです。そういう部分では、ある意味マッチしているのかなって思います。銀は、そういう周りの期待もひっくるめて、付いてこいって言えるかっこいいやつなので、銀を演じることで、僕も銀に負けないように成長していけたらいいなって思います。